Laëtitia レチシア

f0136579_02033987.jpg

バイト先で十一時半近くになると近所のパン屋さんへバゲットを調達しに行く。
レジにいるのがレチシア。

その界隈ではかなりの人気店らしくレジの前に十人ほどの列ができていることはめずらしくない。

パンを予約する人も多くて、
「明日のこの時間に塩抜きのバゲットを二本お願いね」
「この日に孫たちが来るのよ。ピザを注文しておきたいんだけど」
などと客に注文され、それをノートに書きつけたりしている。

わたしはその列の間をぬうようにして進み、レチシアにひと言かけてから半地下の工場をのぞく。

向かいには大きな冷蔵庫、右手にはバゲットが何本入るのだろう?大きなオーブン。
左手にはお菓子作りの職人さんが小麦粉を計量している。

短い階段の下にはたいていバゲットが二十本ほど入るプラスティックの箱が一個か二個、スタンバイしている。
わたしは下に降りてご主人のステファンにあいさつ。

夫はパンを焼き妻はそのパンを売る。
このパターンのパン屋さんはけっこうある。

箱を持って店のほうへ上がり、そこからバゲット数本を取り出して大きな紙袋に入れてお礼を言うとすぐに退散する。
支払いは二週間に一度、まとめてすることになっている。

いつだったか、バイトの帰り道にお腹がすいてパイ生地の中にお砂糖で煮たりんごが入っている菓子パン
(chausson aux pommes ショッソン・オ・ポム、直訳するとりんごのスリッパ!)を買いにレチシアの店に寄った。

きっちりと勘定して小銭を受け皿に載せると、レチシアがあわてて
「あら、これはもらえないわ。いつもパンを取りに下まで降りてくれるから」
と言ってお金を返してきた。

そんなこと言われてもわたしもただでもらうわけにもいかないから菓子パンをつかんでお店を脱出したら、
レチシアが走ってわたしを追いかけてきた。

逃げ続けるのも大人げないかと思いなおし、ありがたくごちそうになることにした。

正直にいうと、とってもうれしかったのだけど、
レチシアがレジにいるときにはもう、立ち寄れなくなってしまった。



















写真は数年前に焼いたガレットデロワ。
にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ

ショッソンオポムもたいていこんな三日月形。







[PR]
# by kyotachan | 2018-01-12 02:07 | お は な し | Comments(2)

pluie プリュイ/ 雨

f0136579_01502778.jpg

三女が生まれたとき、次女はまだ十六ヶ月で歩くことができなかった。
夫がダブルのベビーカーを買ってくれて、それを押してどこへでも行った。

後の椅子がベッドになる形だったからたいていは三女が後で次女が前。
思い返せばほんの三年間くらいのものだったのだろうがこのベビーカーは本当に重宝した。

当然のことだけれどベビーカーを押すときは傘がさせない。

わたしは雨にぬれるのが苦手だから防水加工のコートをしっかり着こんでフードもきちんとかぶる。
一度、次女と三女が幼稚園に通っているころ、大雨が降って、
わたしはコートの上にさらにポンチョ型のレインコートを羽織ってお迎えに行ったことがある。

幼稚園の先生たちになんとなく冷笑されたように感じた。
あらためておのれの姿を見てみると、いやほんとこれはやりすぎたかなと反省した。

雨にぬれるのが苦手だからしょうがない。

ひるがえってフランス人たちはおおむね、雨にぬれることに頓着しない人が多い。
かなりの雨でも傘を差していない人はごろごろ歩いている。

傘を買う余裕がなくて、という人ももちろんいるとは思うのだが、
傘をさすなんてばからしいと思っている人が多いような気がする。

ぬれたところで、それがなにか?
みなさん、そう思っていらっしゃるようようだ。

きれいにセットされた髪、きちんとお化粧した顔、
身なりも平均的な人よりもいいものをお召しになっている、
というマダムが雨にぬれて歩いている、という風景もめずらしくない。

フランスの幼稚園と小学校では傘が禁止されている。
小学校までは親の送り迎えが義務づけられているから、傘は門のところまで、ということになる。

課外授業の日に雨が降ると、児童たちは傘なしで出かけることになる。
子どもたちが小さいころ、この課外授業に付き添ったことが何度かある。

雨が降って、大人たちはみな当然のように傘をさすのだが、
子どもたちはみんな雨にぬれそぼりながら歩いた。

わたしは申し訳なくて胸が痛むほどだったのだが
子どもたちはみな、平気な顔をしていた。

こんな風にして雨にぬれることに慣れてしまうのかもね。

















にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ









[PR]
# by kyotachan | 2018-01-10 01:52 | 日 常 空 間 | Comments(2)

f0136579_01345266.jpg


「勝ち組」「負け組」ということばをはじめて聞いたとき、
ものすごーくいやな気がした。

わたしは負け組だろうなととっさに思った。








気がついた。
「勝ち」「負け」の相手は自分なんだなって。

自分に勝つか負けるか。
そう思ったら自分には勝とうと強気になった。

今年をいい一年にしようね、と友人に言われて、
今年じゃない、今日をいい一日にしようと思いなおした。

今日一日、わたしは自分に勝った?

















にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ









[PR]
# by kyotachan | 2018-01-09 01:51 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(4)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31