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未来にふく風 <15>



父親⇔ひとり息子 という蜜月関係はとてもうまくいっていた。

長男がはっきりと父親に対して反抗的になったのは十四か十五歳、くらいだ。

わたしはわたしの十四、十五の姿を見る思いでそれを見ていた。
わたしだって父親とは何年間も口を聞かなかった。

なぜと問われても、だって口ききたくないもーん、と言うしかなかった。
それにわたしにはそんなことを聞いてくる人はいなかった。幸いにも。

夫は違った。

夫はわたしに「なぜぶすっとしているの」としつこく尋ねてその答えを待ったように
風にも「なぜぼくとしゃべりたくないの」としつこく尋ねた。

うわーやめてよー。最悪。

夫の行動を見て何度も思った。

夫は風の部屋をノックして部屋に入ったかと思うと風に向かってどなりちらす、
ということを何度も何度も繰り返したのだ。

そしてわたしに向かって言い放った。
「キミは風がこんな風になってしまったのが心配じゃないの?
どうしてそんな風に自分の息子に対して無関心でいられるわけ?」

えええええーーーー!!!そうきたか!

いやあ、けして無関心ではないのだけどね。
わたしにはあなたのやっている方法がいいとは思わないだけで。
人ってさあ、そっとしておいてほしいときってあるもんなんだよ。

「わたしには今の風はわたしの十四歳のころを見ているみたいだから。わたしだって風の年齢には
親とはひと言も話したくなかったし事実、父親とは何年も口を聞かなかった」

そう言ってみても

「キミの話なんて興味はない。ボクはどうして風がボクと話したがないか知りたいだけなんだ!」

ああああ、そうですかそうですか、わたしには興味ゼロですか。
わたしはもう、どうにでもなれ、という心境に達するしかなかった。

夫は風のその年齢のとき、アメリカの学校に留学していたのだ。
父親はもとからいないし、母親は仕事にかかりきり。
家族はひとりもいないアメリカで寮生活をしていた。

親に反抗する、という時期がすっぱりと抜けている彼の人生観では
自分の息子がこんなにも変わり果ててしまったことがどうしても理解できないらしい。

「なんでもいいからことばを発してくれ」

こう父親にせまられた風がついに口を開いた。

「パパのこと嫌いだ」

……、て言うしかないよね。うん。
わたしだって父親のこと嫌いだったもん。

夫の落ち込みようは半端ではない。

キックボクシングのリングの上にまるはだかのまま試合に臨んで
ものすごくいいグローブをはめた最強の選手にこてんぱんにやられてしまったみたいだ。




















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# by kyotachan | 2019-03-21 16:33 | なげーやつ | Comments(1)

未来にふく風 <14>



我が家の子どもたちは女男女女の四人きょうだい。

もう何度も書いているけれど、夫は一生の間に自分の父親に一度も会うことがなかった。
ニースへ来て調べてみることを思いついて調べると2011年に亡くなっていた。

だから夫は、父親を知らない自分に息子ができたときには泣いてしまうくらいに感動していた。

子どもたちはみんな平等だよと口では言いながらどうしても風のことを手厚くしてしまう。
女子組三人はもうそれに慣れてしまって「風だから」で片付けられる。

子育てに関して夫といちばん意見の食い違うのはゲームに関してだ。
それはDSからはじまって今に至るまで、追突事故を起こしたまま放置してある。

ゲームに関する情報は次から次へと進歩し、あたらし好きの夫はそのたびにあたらしいゲームを与え続けた。
途中からは、わたしはもう疲れ果ててしまい、何も言わなくなってしまった。

わたしが子どもたちのことを思うのと同じように
夫だって子どもたちのことを思っているのには間違いないのだから。
そう思って妥協してきた。

フランスへ来たすぐの頃、公園で出会ったフランス人のママに
「わたしは妥協するのが嫌だったから子どもたちのパパと離婚した」
と言われたことがある。

何度も何度も「妥協するくらいなら離婚したほうがましでしょう?」
とそのママは繰り返した。

わたしの結婚生活は妥協することばかりだ。
自分の言い分など通らないことばかりだと思う。

そして夫もわたしと同じように感じているのだろう。
妥協のないカップルなど存在しないと思うのだが、どうなのだろう。

話がそれた。

DSのことを書いたよなあと探した記事にはわたしが覚えているよりもずっと
DSと戦っている自分が書かれていた。

そうかあ。わたし、このくらいには頑張っていたんだなと今の自分を恥じた。

ゲームはDSからはじまってどんどん複雑なものへと移り変わり、
DSなんてかわいいものだったなと思うほどにまでなった。

いつしかわたしはゲームに関しては何も口をはさまなくなってしまった。

末っ子がコレージュに入ると同時に六人家族が六人とも
携帯電話を持つようになり、それはつまり、ひとりひとりが四六時中、
ネットでつながっているという状態になったということでもある。

もう、なんかね、どうしようもないよねこれは。

ゲームやインターネットが子どもたちをよりしあわせにする道具でありますように。
わたしはもはやこう祈ることしかできない。

















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# by kyotachan | 2019-03-21 00:39 | なげーやつ | Comments(0)

未来にふく風 <13>




健一、という名前で登場する本名は圭一くん、に出会ったことはわたしの人生では大きな財産になっている。

彼と出会っていなかったらわたしのゲイの人たちにたいする偏見は強かっただろうなとも思う。

そしてブログ仲間の文太さんとの出会い(会ったことはないけど)。
夫(といってしまっていいのだろうか)がフランス人、という共通点もあって勝手に親しみを持ち続けている。

そして去年の夏にトレッツでマリさんという女性にあった。
わたしよりずいぶん若い日本人女性でパリでフォトグラファーをされているらしい。

彼女はトランスジェンダー。中身は男の子。
この方がもうこれ以上はシンプルにはなれないなというくらいシンプルな方で
「あの、えーと、前に会ったことありましたっけ」
とお互いに言ってしまうくらい、一瞬で意気投合してしまった。

LGBT、ということばが便利に横行していて、それはそんな人たちの存在が認められてきたこと
なーんて言い方をされているけど
でもほんとうにその人たちの存在が認められるなら
そんなことばでくくる必要だってない、のがほんとうなのだろうなとも思う。

わたしたちは車の中にいた。
風をコレージュに迎えに行った帰りだった。

後に妹たちが乗っていたのか、わたしたちふたりだけだったのか、覚えていない。

「わたしは風が好きになるのが女の子でも男の子でも一向にかまわないよ。
わたしにとって大事なのは風がしあわせでいることだからね」。

どうしてそんな話をしたのかわからない。
風はそれを聞いてただ笑っていた。

















話は急展開。ついてきているかな。あは。
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# by kyotachan | 2019-03-19 16:33 | なげーやつ | Comments(0)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族