
ピクニックしよう、と提案してくれた次女を「出たがり派」とするなら
長男と三女は完全に「引きこもり派」。
連日友人たちとビーチに通う次女のこんがり焼けた肌に対して
このふたりの肌はまーっしろけっけ。
普段から食料品の買い物とか、ビーチとか、次女はほいぼいよろこんで付き合ってくれるのに、
長男と三女は、家の外にでることにはまったく興味なし。
この日もこの二人が一緒に来たのはただただ「レストランで食事」という条件つきだったから。
内心はだから「レストランはずしたらどうしよう」という不安があった。
夫とてそのへんは心得ているらしく、だから出かける前にきちんとチェックも怠らなかったのだろう。
六人がみんな大満足の昼食ができてほっとしたところ。
レストランを出るとひとりひとりが口々に「パパ、ありがとう~」とお礼。
わたしもこの時ばかりは夫をパパと呼んでお礼。
Merci papou ~ c'était trop bon ! パパちゃんありがとう~おいしかった~!

誰もいない駐車場でしばし腹ごなし。
何をやっても笑われてしまうオレ。
ママってこどもみたい~、と最近よく子どもたちに言われる。
……、いや、子どもみたい~じゃなくて、子どもなのよ。
いつかおとなになると信じて生きてきたけど
わたしは一生、子どものままだなと思いはじめた。
そう思いはじめると、なんだかそれはそれでいいような気がしてきた。
そうなんです。わたしは子どもです。子どもの母親を持つのはあなたたちの運命です。
この運命はあなたたちの不変の運命です。
と大真面目に応酬するとこどもたちは黙り込んでしまう。
いやほんとにすんません、こんな親で。

小高い丘があると登りたくなるでしょう?
はい、なりますなります、子どもなので。

出かける前、「山のほうは寒いから上着がいるよ」と何度も念を押したのに
誰も耳を貸さなかった。
けっこう、寒い。
次女に「ママ、上着貸して~」と言われたけど、もちろん即却下。

夫は観光事務所みたいなところで若いガイドさんとおしゃべりをしていた。
この辺のハイキングのベストシーズンは十月ですよ、と言われたらしい。

きょうだい仲はいいのだろうな。

「ヤッホー!」
何度呼びかけてもこだまは答えてくれず。
三女が呼んだら即、返ってきた!
そうか!オレの声が通らない声だからだ。

また来たい、山の一日。つづく。



