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2010年 11月 09日 ( 1 )

fumiko 史子。<24>







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午後の三時にはじまった地球号寮のクリスマス会は
由美子さんから聞いていたように
入れ替わり立ち代わり人が出たり入ったりした。

そのたびに食べ物や飲み物が持ち込まれ、
そしてそれは気持ちのいいくらい、
はしからはけていった。

わたしたちは餃子を焼くのを手伝ったり
ホットワインの造り方を教わったり、
色んな学生たちとおしゃべりをしたりして、
思いのほか楽しくて充実した時間を過ごした。

気がつくと、
さっき昭彦さんが「楽しみにしている」といった
「ばくしょう・スピーチたいかい」が
すでにはじまっていた。

ビール瓶の入っていたケースを逆さにして
そこにスピーチする人が立っている。

話しているのは、
アジア系の男子学生だ。

「ぼくは、はじめて
しぶやのセンターがいへいきました。
フランス人のアランくんは、
ここへいけば、
おんなのことかんたんにともだちになれる
といいました」

みんながいっせいに笑った。

「アランくんは、ここをあるくだけで
おんなのこがはなしてくる、
とぼくにいいました」

わたしはさっきホットワインをついでくれた
アランの姿を探した。
彼もスピーチをするのだろう。
留学生が列を作っている中にいて
さっきと同じようにうれしそうに笑っている。

「ぼくはいっかい、センターがいをあるきました。
おんなのこはたくさんいましたが、
だれもぼくにはなしませんでした」

大笑い。

「ぼくはもういっかい、センターがいをあるきました。
また、だれもぼくにはなしませんでした。
そして、ぼくはわかりました。
ぼくのめはあおくない。
おんなのこはぼくにははなさない、って。
おわり」

大きな拍手がわいたが、
最後の一行は爆笑を誘うというより
むしろ悲しみを誘ってしまったようだった。

わたしは高校時代の友人を思い出した。
わたしが東京で大学生をしていたとき
田舎からその友人が遊びに来たのだ。
その時、彼女が同じようなことを言っていた。

「フミ、渋谷のセンター街って、
絶対にナンパされるんだって?」

わたしは渋谷のセンター街は
何度も歩いたことがあったけれど、
一度もナンパされたことはなかった。

「もちろんよ。
あそこを歩いてナンパされない人なんかいないよ」

わたしはこう答えた。

そしててふたりでセンター街を歩いた。
誰一人として声をかけてくる者はなかった。

「おかしいいなあ。
ひとりの時は必ずナンパされるんだけど」

わたしは友人にことさらすまなそうに言った。
わたしはなんて意地悪だったんだろう。

わたしはなぜかわけもなく、
今スピーチした留学生にあやまりたくなった。

いつの間にか昭彦さんと由美子さんが
わたしたちの横に来て座っていた。

「この学生たちのスピーチを聞くとね、
ああ、わたしたちは全く同じ人間なんだなあって
思うんですよ」

昭彦さんが言った。

「そりゃあまあ、色んなやつがね、いるもんです。
最近、ロシアからの留学生が増えましてね。
今年もひとり、女子学生が入ったんですが、
この子は国に帰しました」

「えっ?」

夫とふたりで声が出た。

「十八才だったんですけどね。
素行が、悪すぎまして。
ちょっと、ウチじゃあ預かれないと判断したんです。
この寮はじまって以来、はじめてのことです」

「素行が、ですか」

夫が聞いた。

「ロシア人留学生は
一般的にものすごく金持ちなんですよ」

「へえ!」

「おそらく、一年くらい、日本で遊んで、
という気持ちで来る留学生が多い」

「なるほど」

「今度帰ってもらった子も典型的にそのタイプで。
ウチは外泊なんかはあらかじめわかっていれば
問題なく許可するんですが、
その子は男を引っ張り込んだんです」

「部屋に?」

「ええ。まあそれを見つけたから、
それを理由にしましたけど、
それまでにも色々と、手を焼いてたんですよ。
十八といえばまだ、未成年なわけだから。
何かちょっと、あぶない感じが強すぎました」

「そうなんですか」

「なんというのかな。
今まで抑圧されていた分、
よけいに爆発してしまったような、
そんな印象を受けますね。
ロシアからくる留学生を見ていると」

わたしは、
素行の悪いロシア人を想像しようとしたが、
どうしてもうまくいかなかった。

きっと肌がすけるように白くて、
それこそセンター街を歩いたら
男がぞろぞろとついてくるのだろうな。

「ああ、そういえば、ウチで最初に預かった留学生は
中国人だったんですが、この子も、問題児でね、
別の寮を追い出された、てんでウチに連絡が入ったんです」

「そうだったんですか」

「寮に留学生を受け入れるなんて
全く考えていたなかったんですがねえ。
思いがけず、パイプができた感じでしたね。
その中国人の留学生がね、
ウチのことをかなり宣伝してくれたんですよ。
なにが幸いするか、わらかないものです」

昭彦さんは由美子さんと顔を見合わせて笑った。

「そうそう、それに、言いましたっけ?
ウチの寮に最初の年に入った学生は、
この寮の元の持ち主、
つまり由美子が直談判した社長のお孫さんなんです」

「へー!」

また夫とそろってしまった。

「なにか、ねえ?
由美子が、言ったでしょう?
息子にずっと念じていたって。
ほんとにね、息子が上であやつってる、
としか思えないことが、
色々と、起こるんですよ」

昭彦さんはまた由美子さんと顔を見合わせて、
そしてうなづくように笑いあった。























ぜんっぜん自慢じゃないですがわたしはセンター街を含むあらゆる場所でナンパされたことがありまっせん。>あ、聞いてない?
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それにしても史子さんってマジで意地悪ー!>キョータもかなわん、てか?

恐れ入ります。
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by kyotachan | 2010-11-09 03:23 | なげーやつ | Comments(4)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族