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かわいいなあ。

ホールとキッチンの仕切りはバネ式のドア。

ホールから汚れ物を持って押して入ると
ドアはその反動で勝手に閉じるから
後ろに人の気配がある時にはドアを支えて待つ。

リノが先に入ってミチルがそれに続いていた。
リノは汚れ物を台に載せつつ、ミチルのために足でドアを支えてくれた。

その格好が足を大きくクロスさせてかつ上体をかがませる、というへんな格好だった。
リノはまったく意図せずにやったらしい。

ミチルはその姿を見て一瞬動きを止めて言う。
「(かわいいなあ)」

リノはそう言われてはじめて自分の姿に気づき
「(見た?ぼくがどんな格好しているか)」と笑う。

ふたりで働くことは楽しかった。

客のテーブルの水さしに水がなくなっていて、出してあげよう、とミチルが思う。
冷蔵庫に向かうとちょうどリノが水さしを出していることころだ。

「(それ、五番?)」

ミチルが聞くと、そうだよと返ってくる。
そんなことがよくあった。

客のテーブルから複数のボールを抱えて下げようとしていると
リノが横から来て「(ちょうだい)」と言って持っていってくれる。

サービス前にふたりでホールのそうじとテーブルセッティングをする。

ミチルが掃除機をかけると、リノはテーブルセッティングをしながら
掃除機のコードをミチルのために寄せてくれたり投げてくれたりする。

足拭きに掃除機をかけて放り投げておくと
リノが黙ってそれを定位置に敷いてくれている。

何でもないことだと言ってしまえば何でもないことだ。
ただミチルにはその何でもないことがうれしくて仕方がない。

やさしい人。
気のつく人。

リノはそういう人だった。











飽きてきたかなあ。ここはもうちょっといくわよ。
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だってさあ。書いてて楽しくてしょうがないからさあ!








by kyotachan | 2022-06-22 16:48 | joie ジョワ/ 歓喜 | Comments(0)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。