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未来にふく風 <27>

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バイセクシャル、と聞いてまず思ったことが、それずるくない?ということだった。

L レズなら女性同士。
G ゲイなら男性同士。
B は男性と女性両方。
T はカラダとココロの性の不一致。

と解釈しているのだけど、つまり風は男性に恋することもあれば女性に恋することもある、ということなのだ。
現在の恋人は女性。

わたしだって女性に、きゅーん!とした恋心を感じることはある。
なんとなくだけど恋に似た感情を抱くことはある、ような気がする。

実際に「ああこれは恋だ」と認識するにはいたらずとも。
これってもうすでにバイセクシャルなんじゃないの?

いや、違うか。
わたしはそれを苦しみと思ったことはない。

風は苦しんでいるのだ。それを。

そして今度は夫が苦しむ番だった。

夫は顔を両手でおおって泣いた。
自分の息子が、自分のひとり息子がバイセクシャルということをどうしても受け入れたくないのだ。

「なんでボクの息子がバイセクシャルなんかになっちゃったんだ。そんな不自然なものに」
「違うよ。なったんじゃないよ。風はバイセクシャルとして生まれたんだよ。自然なことなんだよ」
「キミは母親だから簡単に受け入れられるのさ。ボクとは違う」

ガールフレンドがチュニジア人、というのもどうしても気に入らないらしい。
フランスとアフリカの国々との間にはあまりにも深い歴史がありすぎてわたしには理解できないところがある。

夫がチュニジア人を気にいらない、ということを単に「差別」とは言い切れないところがあるのだ。
わたしはその歴史の中にいないせいで、かえって簡単に受け入れることができるのだと思う。

何度話しても議論の交わることはなく、どこまでいっても平行線のまま。
苦しむ夫の姿を見るのは悲しいがわたしにはどうしてやることもできない。

した二人を連れて風のお見舞いに行ったとき、風はそうすることを決めていたように
妹たちにも自分がバイセクシャルであると告白した。

その隣に立つ苦渋の表情の夫。

風は自分の苦しみを開放しはじめた。


















写真は2014年1月。昔ニース鉄道の駅だったところが図書館に改装された。リベラッション広場。
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Commented at 2019-04-15 07:57 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kyotachan at 2019-04-15 16:25
かぎさん、
かぎさんのコメントうれしいです。泣いちゃったー。
わたしもそれはひゃっぺん以上、自問しました。そして、やってないなあわたしは、と結論付けました。セックスに関しては長兄にふざけて嫌なことをされた小さな思い出もあるし、そこだけは気をつけていたので。かぎさんにそういってもらえてなんだか勇気百倍です。どうもありがとうございます。
交際する相手に関してもまったく同感。もうね、口をはさまない決意をしています。恋なんて反対されればされるほど燃え上がるのは経験づみですからね。あはは!でも困ったときにはいつでも助けてあげたい。お母さんってきっとそうなのでしょうか。夫を見ていると気の毒になる。
Commented at 2019-04-23 19:50
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kyotachan at 2019-04-24 15:16
かぎさん、
ほんとうはかぎつきじゃないコメントをほしいのだけど、話題がデリケートすぎるのでしょうか。みなさんかぎつき。
いやあ何度も読んでびっくりして感動して涙が出そう。<19>に書いたんですが、風の場合は自分の中にある違和感を治療したいと思う勇気があった、てことなんでしょうね。死に向かってくれなくてほんとうによかった。
大好きだった作家さんが自死したときに心不全と報道されたんです。それから心不全で亡くなる人がいるとまさか、とどきっとします。
子どもを亡くした親の気持ちを思うと胸が気が狂いそうになります。せめて本人さんはもう、苦しんではいないのだと思うしかありません。わーかぎさんとは会って色んなことを話してみたいです。コメントありがとうございました。
by kyotachan | 2019-04-13 15:25 | なげーやつ | Comments(4)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
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