風のいたずら、というか行動力にはほとほと手を焼いた。
まだ歩くこともできないのに
公園へ行くとすべり台の階段を勝手にのぼっていってしまう。
長女は逆にこわがりなところがあるから
長女がすべり台をできるようになったのは三歳をすぎてからで
それは風がすべるようになったのとほぼ同時だった。
居間にあった観葉植物の鉢から土をつかんで部屋にまきちらした。
いちばんやっかいだったのは
便器の底にたまった水で顔を洗うこと。
最初にこれを発見したときには頭に血がのぼって思わず手をたたいた。
「風くん、いけません!」
このセリフは当時のわたしの常套句となっていた。
長女の通う幼稚園の先生に風が便器の水で顔を洗うんです、問題ありではないですか、と相談した。
先生は「まったく問題ありません。むしろとても健全に育っている証拠ですよ」と言われてびっくりした。
毎朝お水で顔を洗う両親やお姉ちゃんを見て、
たまたま自分の手の届くところに水があったから自分もやってみただけのことだと。
とはいっても毎朝ここで顔を洗ってもらってはこちらとしては気持ち悪くてしょうがない。
しばらくはトイレのドアに外から鍵をかけて使うたびに鍵で開け閉めしていた。
長女は当時住んでいた住宅街の中にあるモンテッソーリ・メソッドの幼稚園に通っていたのだが
ここの三人に先生方には何度も救われた。
風にはふたつ、つむじがある。
鬼の子か天才か、どちらかのサインであるらしい。
これを先生に言うと「風くんは天才のほうですよ!」と即答してくれた。
「そうでしょうか。わたしにはむしろ鬼の子に思えるのですが」
そう言うわたしに先生は力強く繰り返した。
「いいえ、風くんは天才です!」
写真は2014年4月シミエ。