ce que j'aime スクジェイム/ 好きなこと

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わたしは今年五十二になるのだけど、
この年になるとさすがに、
自分の好き・嫌いくらいははっきりとわかるようになる。

なにをいまさら
とお思いかしら。

わたしはほんとうにお恥ずかしいことなのだけれど
この年になるまで「自分がほんとうに好きなこと」がはっきりしていなかった。

いつも「今は好きじゃないけど、この先好きになるかもしれない」という気持ち、
「今は興味が持てないけど、いつかはきっと興味が持てるんだろうな」という気持ち。

そんな気持ちを宙ぶらりんに抱えていて、だから、
自分がほんとうに好きなことってずっとわからないままだったような気がする。

十代の頃、母親や友人から、「スカートをはきなよ。きょうたにはスカートのほうが似合うよ」
とよく言われた。

短足なわたしがしょっちゅうGパンでいる姿を見て気の毒がり、
ほんとうにわたしのためを思ってのアドバイスだったのだろう。

はいてはみるのだ。
はいてはみるしそれを鏡に映して悪くないとは思うのに
出かける段階になっていつものGパンに着替えてしまう。

そしてわたしは思う。
今はスカートって気分じゃない。
でもきっとそのうちスカートな気分になるはず。
スカートを嫌いなわけじゃないもの。

大学生になった春休み、わたしは母親に頼んで化粧品一式を買ってもらった。

実家の近所にあったSフィーナの専門店で、基礎化粧品一式と、口紅、頬紅、アイシャドー。
お店のおばさんに化粧の仕方を教えてもらい、こてこての化粧顔で帰宅した記憶がある。

東京の大学生になるのだし、化粧くらいはしなくては。

そういう気持ちはあったのだわたしにも。
ただ、肌がそれを許さなかった。

三日後、大荒れの肌を発見。

そこからは、Kネボウ、S生堂、Kセー。
大手のものはほとんど試して、決まった法則があるかのように三日めに肌が荒れた。

あれれ。
お化粧、あわないの?わたし?

たいした後悔もなくわたしは化粧というものから遠ざかった。

それでも帰省のときに母親が周りの大人たちに「きょうたはお化粧とか興味のなかごたっとですよね」
などと言うのを聞くたびに

「いやいや、それは違うから。興味はあるから。ただ今は肌荒れしちゃうからしたくないだけで」
と思っていた。

東京で就職した。

ジュリアナ東京、と聞いてどのくらいの人がわかるだろう。
記録をたどってみたらそれは1991年から1994年までのたった三年間しか存在しなかったらしい。

ディスコ。
いま現在、この単語が生きているかどうかさえ自信がない。

その当時、あまりにも有名だったジュリアナ東京というディスコにはついに、一度も足を運ばずに終わってしまった。
いま思えば、東京というあの小さな空間に、あの時代にせっかく居合わせたのだから、一度くらいは行ってみてもよかったなと思う。

お立ち台、と呼ばれる場所に派手なセンスを振り回す、ボディコンドレス着こんだ女性たち。
何度もテレビや雑誌で見たあの光景。
全く、ほんとうに全く、そこへ行きたいという気持ちはわかなかった。

楽しかったディスコの思い出はある。
博多で過ごした浪人生時代に女子寮を抜け出して行ったディスコだ。

確か入り口で二千円だかを払うと飲み放題、食べ放題だった。

十種類以上のカクテルが並んでいた。
わたしははしから順番に飲んでいって、そして途中で気持ちが悪くなった。

博多で専門学校へ通っていた友人宅のトイレではいた。

大学時代に行ったディスコの思い出はまったくない。
行ったのに覚えていないのか本当に行かなかったのかさえわからない。

就職してからも相変わらずで、仲のいい友人とはバーで待ち合わせ。
そのあと居酒屋かすし屋、たまにフレンチかイタリアン、が定番だった。

でもこころのどこかでは思っていたのだ。
いまはこのスタイルが好きだけどそのうちにわたしにもディスコの時代が来るかもしれない、と。

結婚して子どもができた。

同時期に子どもを生んだ大学時代の友人が、
「最近はスカートをはく機会が増えてきてそれがうれしい」
というようなことを言った。

ああ、そうなんだあ。スカートねえ。ふんふん。

説明のできない不可解さがそこにはあったのだけど、
それが何なのか、わたしにはまるでわかっていなかった。

ずっと後になって、ああ、そうかあと気がついた。

わたしのその友人は確かに大学時代からスカートをよくはいていた。
下北沢に実家があって、高校は六本木。

絵に描いたようなお嬢さまだった。
ひらひらっとしたスカートがよく似合うのだ。

わたしは大学時代からずっとTシャツあるいはトレーナー、下はGパンに足元はバスケット。
一年を通じてそれがユニフォームのようなものだった。

就職してからもそのスタイルは維持したまま。
制服のある会社だったのから、通勤時の服装は自由だった。
あるいは自由だ、と思い込んでいただけのことかもしれない。

いい先輩に恵まれて「制服があるんだからどんな格好で出勤してきてもいいよ」と言われた。

夏など、会社に入る前にビルの入り口で部長にばったり会って
「きょうたさん、ビーチにでも行くんですか」
と言われたことがある。

いま思えば部長さんは最大級の皮肉をわたしに投げかけていたのだ。
それを「え、やだあ。ビーチなんて行かないですよお」と笑って返していた。
……もうしわけないです。あまりにもおそすぎる気づきですが。

いま思い返すと、わたしのスタイルは十代の頃から一貫していて、
それはつまり、子育てにものすごく適した格好をしていたことになる。

十代のわたしに「あんた、五十になっても今と同じ格好しちょるよ」と教えたら
きっとどんびきしよるやろな。

わたしはけっきょく、顔に色々と塗るのは性にあわず、
スカートをひらひらさせることも何か面倒で、
大音響の音楽の鳴る場所がついには好きにはなれなかったらしい。

あーあ。っもー、なんだかなー。

わたしって自分の好きなこと、十代ですでに知ってしまっていたんだなあ、ということを五十を過ぎて気づいた。

いやいや待てよ、
今後、びっくりメークにスカートが定番アイテムのディスコ好きのマダムに変身するかもよ。>まだあがく?



















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Commented by hakata_pari_kyoto at 2018-01-07 19:44
遅くなりましたが、明けましておめでとうございます!
スカート。私もなかなか、手が伸びません。たまにワンピースなんて着ると、子供達に「何があると?」って顔されます。
しかし、最近は夫がたまのスカート姿に「いーやん!いーよそれ!」と褒めるので、10代から一緒にいたのにゴメンねーいつもパンツ姿で、と反省したりします(笑)

私もジュリアナはさすがにテレビでしかお目にかかりませんでしたが、福岡のディスコには先輩に連れられて、2.3度だけ出かけたことがありますよー。
きょうたさんとは、もしかしたら10代に天神か西新辺りで出くわしてたかもしれませんな。

わたし、きょうたさんのフランスの日常を毎回楽しみにしとっちゃん。今年もバリバリ楽しませてね♪
Commented by kyotachan at 2018-01-08 23:55
hakata さん、
あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくおねがいいたします。
スカート、ワンピース、もうその形だけでよそ行き感が出ますよね。ご主人が好きならこれからはどんどん着なくては!おふたりの生活になってもうすぐ一年???なんだかおふたりはラブラブな感じですねえ。わたしは夫とふたりの生活なんて考えられません!
うれしいおことば、ありがとうございます。今年はがんばってブログの更新にはげむつもりです。また寄ってくださいね~。
by kyotachan | 2018-01-05 05:28 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(2)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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