fin d'été ファンデテ/ 夏の終わり

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肉屋・お惣菜屋の隣に、












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パン屋さん。

これは……!なんか、おいしそうなものがありそう!

鼻はきく方で、おいしいお店には、引きつけられるほうだと自負しているところがある。

むかーしむかーし、わたしと夫がまだ恋人同士だったころ、
ふたりで鎌倉に遊びに行った。いわゆる、デート。

夕方、日も暮れたことだし、この辺りで何か食べてから帰ろうということになった。
ふたりでぶらぶらと歩いていたら、裏通り、というか、
もう、裏のそのまたほそーい通りに、ぽつりと、赤ちょうちんが見えた。

近づいてみると、小さな木の引き戸がついている。
うわ、ここはうまいものがあるな、と一瞬にして思った。

「ココにしよ」
わたしが言うと、夫、当時はボーイフレンドだった、が、
めちゃくちゃびっくりした。

「え、ええっ!コ、ココッ???」

その反応で、よく店構えを眺めてみたら、
確かに赤ちょうちんはなんだか今にもやぶれそうだし、
ついている戸も、なんだかやたらめったら小さいし、
江戸時代から建っている、と言われても納得できそうに古い家ではあった。

「あれ?ココ、いやだ?おいしいと思うんだけど」

ココがいやならどうしようかなあと思いつつそう言うと、

「え、ココが?おいしいの?なんで?知ってるお店?」ときた。
「いや知らないけどさあ、おいしいと思うよココは」。

わたしの自信に満ちた態度に夫、当時はボーイフレンドだった、が、
意をけしたように言った。

「いいよ。じゃあ、ココにしよう」。

あら。勇気、ふししぼったわねえ。
あんがいあっさり折れてくれた。

わたしは静かに引き戸を開けた。

土間だ!

土間の向こうには木のカウンター。その向こうには男性がふたり。
親子だったか、店主と店員さんだったか。

カウンターのいくつかはもう埋まってしまっている。

「ふたり、なんですが、いいですか?」

わたしはわざと連れはガイジンなことを宣言するべく、身を引いて夫、当時はボーイフレンド、の姿を店主にさらした。

実は断られるかもしれないという覚悟はしていた。
東京の居酒屋でもガイジンの夫、当時はボーイフレンドだった、を見て、断られる、という経験をしていたからだ。

「どうぞ~」

若い方の男性がすぐにわたしたちを招きいれてくれてわたしたちはカウンターに着いた。

かれこれ二十年以上も前の話で、何を飲んで、何を食べたのか、
すーっかり失念してしまっているのだが、ひとつだけ、覚えているのがある。
メニューは木の札に書いて、壁に立てかけてあった。その中のひとつに、

「みそ」

とある。ガイジンの夫、当時はボーイフレンド、にしてみたら、みそと言えばみそ汁に決まっている風だった。
わたしは「これはたぶん、小皿にみそがちょこんと盛ってあって、それをなめて日本酒をぐいっとやってくれってことだな」と思った。

メニューの数はそんなに多くはなかったから、わたしは端から順番に頼んでいこうと決めて、みそを、ふたり分、と注文した。

夫、当時はボーイフレンド、はあわてて、「え、みそ汁?ボクのも?そうなの?」と隣でほざいている。
「いいからいいから」とわたし。

そしてみそが、竹の棒の先にちょこんと乗せられて、出てきた。
その棒を「はい」、と手渡しされる。

鉄砲玉を食らったような顔をする夫。当時はボーイフレンド。

わたしはと言えば「おおっ!小皿じゃあなかったよ、竹の棒と来たよ!」
と、そのおしゃれなみその登場に小躍りさえしたいほど気持ちが高揚していた。

みそに限らず、どんな品も期待を裏切るほどの演出方法で色んなおいしいものが出てきた。

そして調子に乗ってしまって、壁にかかっていた、そんなに品数の多くないメニューを
わたしたちは、はしからはしまで全部注文したのではなかったかと思う。

今こうして思い返せば、あのお店はちょこっと飲む場所で、
つまみをひとつ、熱燗を一本、ささっと飲んで食べて去って行くためのお店だったのかもしれないと思えてくる。

それを思えばわたしたちは何とはしたない、下品な客だっただろう。

そんなわたしたちを、お店のふたりの男性たちは、
楽しむようにして、最大限にもてなしてくれた。

ひやー!その節はほんとうにありがとうございました!

わたしたちはお腹いっぱいに食べ、そして存分に飲んだ。

鎌倉、を思うとき、大仏さまや海の色は記憶のおく~の方にうっすらと残っているだけで、
この小さな赤ちょうちんのお店だけがわたしの鎌倉のいちばんの思い出になっている。



















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今日はニースへ帰るよ、という日のお昼時。

高速に乗ってしまうとまずいサンドイッチしかない。
今、食べておこうよ、ということになった。












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よしよし、けっこうぜいたくなサンドイッチができそうだ。










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わたしたちは思い思いにサンドイッチを注文した。
店主であるらしいマダムは具になるものを両手に抱えて奥へと引っ込んだ。
中のキッチンで今から作るらしい。

同じようにするつもりの観光客らしいカップルが壁にもたれて順番を待っている。
お店のマダムもお客さんたちもおしなべてリラックス。
わーこの店好きだー。













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わたしはパテときゅうりのサラダをサンド。











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salade paysane サラッド・ペイザンヌ/ 田舎風サラダ。
ラードン(細切れベーコン)が入ると「田舎風」とつくみたい。














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高速に乗ってすぐ、けっきょくここでも甘いものを食べる。
子どもたちの食欲ときたら!











今年の夏休みを、どうしてもブログに残しておきたくて、
そしてそれはとても時間のかかる作業になってしまった。

気持ちがブログに向かわなかったから、
という理由からなのだけど、

途中からなんでわたしはここまでして夏休みのことを残しておこうとしているわけ?
と自問することになった。

きりんおじさんの空気をここに残しておきたい、という思いがひとつ、
そして六人で家族旅行をする機会は今後どんどん減っていくのだろうなあ
そう予感しているからなのだなと気がついた。

子どもたちが成長し、わたしたち両親が老いる、という図式はほしくない。
子どもたちが成長し、わたしたち両親もまた成長し続ける。
という人生を送る。ぞ。


















ここのところ、怠け癖がついているので、自分に活を入れるべく書いてみた。
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もっとブログを書こう。書きます。書くぞ。


夏休みの記事はこれで終了!






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Commented by coco at 2017-12-23 07:31 x
こちらもノエル本番直前、今更?な夏の画像を楽しませて
もらっています♪ すっかり私も親目線で読んでしまうの
が自分でも可笑しい。
そして鎌倉のお店の話を読んで美味しいおでんや一杯
飲み屋なお料理が恋しくなりましたー><

まだまだちびちゃんだけれど、私もつい先日いつまでも
この子を抱っこしていたいと思ったものです。そういう
わけにもいかないのだけれど。
Commented by kyotachan at 2017-12-24 20:32
coco ちゃーん、
こんな季節はずれの記事、読んでくれてどうもありがとう!!!
このお店、また見つけたらきっと泣いちゃうなー。ほんとうにすてきなお店でした。料理の味と同じくらい、おもてなしの仕方が強烈に印象に残っています。
タンタン、歩くようになったんだねー。ひとりで歩くようになるとこの先ずーっとひとりで歩き続けなくちゃいけないから、歩き始めるのはゆっくりでいいよ~って、赤ちゃん見ると、言いたくなってしまう。これからまたタンタンのお尻をおいかけるのに忙しくなるね。
いい年の暮れとますますいい新年を!
by kyotachan | 2017-12-20 04:05 | vacances d'ete 2017 | Comments(2)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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