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guerre tâches ゲータッシュ/ シミ戦争

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若い頃から日焼けに関しては完全に無頓着に徹してきた。
食用のオリーブオイルを塗りたくって実家のベランダに寝っころがっているときには
母親に「それだけはやめた方がいいのではないか」と心配された。

顔中、そばかすだらけだったのだが、いつしかそれはシミとなり、老斑と呼ばれるものになり、
まあそれでもそれを気にするわけでもなく今まで生きてきた。

たまに見かける日本人観光客の、その肌の白さに心底びーっくりし、
なになに、日本人の肌って、あれが普通なわけなの?とひとりごちる。

あるいはある女優さんのブログ記事に載ったお出かけ写真、
黒い幅広帽子にひじまである黒い手袋、もちろん全身どこも空気に触れてません!
キャプションは「あまりにも暑いからアイス~」
みたいのを見ては、
まじっまじっまじっまじっまじっ
とおののいていたんである。
もしこれが日本人の夏のお出かけスタンダード姿だとしたらすごすぎる。

この人ってさ、この人ってさ、死ぬときに、「ああ、わたしは顔にひとつもシミを作らなかったわ……」て
喜びに包まれて死んでいくんだろうか。
って、つまりはわたしはそういう人たちをばかにしていたのだ正直。

わたしの使っている化粧品は、といっても化粧品と呼ぶのはおこがましいほどのもので、
医者でくれる乾燥肌用のクリームをとても気に入って顔から全身まで塗りたくり、
それで充分に事足りていると満足していたのだった。

そんなある日、ひやかしで入ったはちみつ専門店で、キャンペーン中だという「しみ用のクリーム」をすすめられた。
「だってマダム、ここに、シミ、ありますよね」
若い店員の指差す先はわたしのみぎほっぺのちょうどまん中あたり。

ええええ、ありますともありますとも、そのへんにねえ、大きいのがべったりと。
それはほら、若い女優さんが老け役をやるときに、顔にシミをほどこして老け感を出す、
という手法があるでしょう?
あんな感じのシミなのよ。いや、もう、ほんとうに。
老け顔をつくりたいなら、シミ、ここ!な位置。

今だけキャンペーン中でほんとうの値段から二十ユーロも安いんだって!

あらやだ。じゃあ、試してみようかしら。

だってここ数年、クリーム代はほとんどゼロで来ているんだもの。
五十オンナがシミに効くらしいクリーム買ったって罰はあたんないよ。

若い店員さんは
「お使いになったあとの感想を、ぜひお聞かせくださいね。
だってこのクリームは発売されたばかりで、マダムが最初のお客さまなんですから」
などとのたまう。

これはもう、塗った瞬間にシミが消えてもおかしくないような言い草ではないか!

期待感に包まれつつ使い始めて、およそひと月半で使い切った。
結果は……、全くの変化なし。

なーんだよー。
あの言い方はないよなー。
ったくよー。

そう思いつつ、まあこんなものかと思ったのだが、
それがきっかけで、それまでなんともなかった顔のシミがにわかに気になりだした。
どうにか、消す、ことはできぬとも、薄くできぬものか。

そんな時、今度は日曜日の新聞におまけで付いてくる女性誌の中にこんな記事を見つけた。
ロングセラー商品をいくつかピックアップしてそれらを紹介してある。

「ほかの製品は肌を乾燥させることに重点をおいているのに対して、これは bouton ブトン を成熟させて速攻にはぎとることができる。
衝撃的、しかしおそろしいまでによく効く」

これは写真右の PAYOT という製品。
わたしはこの紹介文を読んで、わたしの右ほほにあるシミがとたんに吸い取られてなくなってしまうところを想像した。

そして間髪をいれずインターネットで探してその場で注文。

三日くらいで到着したそれは、まず、おそろしく小さな瓶に入っていた。
中はクリームというよりも、むかーし遊んだ、粘土、あの粘土にそっくり。
手ざわりといい、匂いといい、あの粘土を入れたのでは?と思うほど。

寝る前にシミの上にのせるように塗る。
粘土状だから、ふとんに付いたらふとんが汚れてししまう。

数回使ってみたものの、
シミには何の変化も見られない。

そこではじめて家族に相談するばか(ここにひとり)。
そして bouton ブトン とは「吹き出物、にきび」であって「シミ」ではないことが発覚するのだった。

えーっ!

驚くわたしに、いっそう驚く家族の顔。
長女にいたっては「ママ、ばかすぎ」と言ってはならないことまで言う始末。

これはにきびで悩む長女と次女へ払下げ。

おまけにずっと前に試供品でもらった
「ROLL ON COLLAGENE REGARD Anti-Poches Anti-Cernes」
というのを「これはシミ用だな」とシミのところに塗りこんでいた。
これは下に英語で
「Anti-Puffiness Anti-Dark Circles 」
とあって、Dark がわたしの頭の中では「シミ」に自動変換されたと思われる。

おわかりだとは思うがこれは「目の下のクマ消し」。










家族に散々にばかにされ、オレは人生五十にしてなにをやっちょるんじゃったく、
とちょこっとだけ落ち込み。

そんな折、夫が薬草やさんに用事があるというので付いて行った。
そこで「キミは?何か必要なもの、ある?」と聞いてくれたやさしい夫。

ここのところ、頭の中はシミのことに占領されているからもちろん、
「あの、シミに効く何か、あります?」
と聞いてみた。

そしてすすめられたのが写真左のオイル。
使いはじめて今日で一週間。
なーんの変化もありません。

シミ戦争、まだまだ続く模様。
















guerre ゲー が戦争、tâches タッシュ がシミ。造語です。
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Commented by りか at 2017-06-07 17:55 x
お元気ですかー??
すみません、、、読んでて笑っちゃいました。
フランス人のお医者さんのお友達が、フランスで確実にシミを取りたければ、皮膚科医が処方する顔のピーリングクリームが効果的だって言ってますよ。
へんなクリーム買うより皮膚科に行った方が安上がりかも?!
Commented by kyotachan at 2017-06-08 16:11
りかちゃん、
元気だよ~。暑くなってきてすでにばてそうではありますが。
笑っちゃでしょう!ていうか、シミをフランス語でなんていうか、今まで知らなかった、てことが自分でも笑える。相当興味なかったんだなシミに対して。気になりだすと気になるもので、わたしもあれから色々と情報収集……主に長女から。爆!長女の友人ですでに皮膚科でレザー治療をしている子がいて、ままま、まじっ?という感じ。レザーってそこが消えてもまた別のところに生えてくる、て聞いたことがあって、なんだか及び腰になっていたの。ピーリングクリームですか!それはなんだかぴりぴりぴり~っとシミがはがれそうですね。ナイスな情報をどうもありがとう!ただ今はすでに焼きモードにはいっているので秋ごろに予約いれておこうかなあ。
ところでりかちゃん家の食卓、なんですかあれは!レベル高すぎでしょう!それに海?山?なんだかすごすぎる~!!!
by kyotachan | 2017-05-22 23:30 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(2)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
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