人気ブログランキング | 話題のタグを見る

redoubler ルドゥブレ/ 留年する







redoubler ルドゥブレ/ 留年する_f0136579_1633258.jpg

幼稚園字代から留年のあるおフランス。

はじめてそれを聞いた時には、ま、まさか?!
と思ったのだけど、実はわたしにも実体験がいくつか。

ひとつ目。

十二月生まれ(日本式にいうと三月生まれ)の次女が
幼稚園生だったときのこと。

次女は訳あって、幼稚園に入園したのが
学年のはじまりの九月ではなくてその年の暮れになってからだった。

おまけに最終月生まれで、やることがすべて「遅れ気味」。
親のわたしもなんとなく気づいてはいたけれど、
まあ、それほど気にするほどでもなく。

学年末の六月になってから担任の先生にはじめて
「次女ちゃん、留年を考えていたけど、最後の最後になってどんどん追い上げてきたから」
と言われた。

ま……、まじっすかっ?!

というのが正直な感想。

幼稚園の年少といえども「通信簿」が存在し、
「できる」「できそう」「できない」
の三段階で細かく採点される。

「できない」がいくつ以上ある場合には「留年」
とでも決まりがあるのだろう。

そして、留年は学校が一方的に決めるのではない。
学校の先生から打診され、親も留年したほうがいい、と判断してはじめて
子どもの留年が決定する。

子どもの通信簿の採点が悪かろうがなんだろうが
そんなものは重要視しないから進級させて、という親もいるらしい。








ふたつ目。

長女が小学校の一年目だったと思う。
親しくはないけれど、子どもの顔と親の顔はわかる、
くらいのクラスメートが留年することになった。

見た目、といってもわたしは公園で見かけるくらいの見た目、なのだけれど、
子どもも親もいたって普通の親子だった。

「留年」に慣れないわたしは他人事ながら、それを聞いてなんだかショックを受けて
公園で見かけるたびになんだかものすごーく気の毒な気持ちにおちいっていた。

本人たち(子どもと、親)はわたしほどにはショックを受けていないようだったけれど。








みっつ目。

我が家の長男が「進級が危ぶまれる」と言われたのが今から約二ヶ月前のこと。

お、我が家にもついに来たか、という感じだった。

学校の勉強は進んでする人ではないけれど、
それがそれほど苦手ではないと思っていたから
わたしからはひと言言っただけ。

「留年するも進級するも、キミが決めることでわたしには何ひとつしてやることはないよ。
あと二ヶ月あるんだから、死ぬ気で勉強すれば進級はするでしょう。でも勉強するのはキミだからね」。

「わかった。決めたよ」

とやけにしおらしく言うので、さあ、こっから学年末までは勉強するだろうと思っていたら
そんな姿が一向に見られない。

あ、あれえ?あいつ、決めた、て何を決めたんだろう?

わたしはわたし側で静かにしゅん巡している一方、長男と父親との格闘はもっと激しかった。

わたしの夫は三人娘の中で唯一生まれた男の子を生まれた瞬間からことのほかかわいがってきた。
本人はけろっとして、「四人になんの差別もしてないよ」とおっしゃるが、
長男を特別なものとしてあつかっているのはあまりにも明らかで女が四人集まるとよくその話題になるくらいだ。

しかし、ここへ来て、長男の父親に対する態度が硬くなってきた。

男十六、といえば、それが当然の態度かなとこちらは思うのだけど
夫にしてみたら、なぜ息子の態度が突然かたくなったのか、どうしても理解できない。

わたしは自分の十六歳を思い返し、父親とは一切会話のなかったことを思い出す。
「わたしだってそうだったんだから、カゼが父親と口をききたくなくても普通だよ」

わたしがそういうと、夫の怒りはますます増すばかり。
「ぼくはキミがどうったか、なんてことにはまったく興味がない。カゼがどうしてぼくと話したがらないかを知りたいだけだ!」

そう言われたらわたしにはもう、何も言うことはない。

夫が長男の部屋にこもって何かを怒鳴りつけている、ということが何回か、あった。

そんなことしたら、というより、わたしはわたしの十六の立場でしかそれを見ることができないから、
そんなことをされたらわたし、お父さんとはもう、絶対に口をききたくないけどね、と冷めた目で見ていた。

不幸なことにわたしの夫は自分の父親の存在をまったく知らない。
そして自分の十六歳のときはアメリカの高校の寮に入っていたのだ。
「親がうざったくてしょうがない」という時期をまったく生きてないのだ。

父親から何度も怒鳴られて、
留年したら軍隊の学校に入れてやる、とまで言われて、
勉強するようなそんな聞き分けのいい子じゃあないんだよなあ。

口も出せなければ手も足も出ない状態のわたしは
黙って見ているしかなかった。

長男本人は
「今年無理をして進級するよりここは留年したほうがいい」
と言い出す。

わたしは「ただ単純に父親に反抗したいから勉強しないてことだな」、と思ったけれど、
それならそれで本人が決めたのならわたしにはもう、どうすることもできない。

そして一年留年することが人生の中でそれほど重大な問題ではないとも思っていた。









昨日の夕方、学校から戻った長男がはにかんだ顔で言う。
「進級するよ」。

なんと留年・進級を決定する協議会で長男の進級が決定したという。

なんだか、ほっとして、涙が出た。
ただ単純に進級することがうれしかった。

うれしくて長男を抱きしめようとするも、ビズしようとするも
本人は「暑いよママ」の一点張りで母親を拒否してくる。

いちばんほっとしていちばんよろこんでいるのは本人のはずなんだ。
ああ、よかったよかった。

そのあと帰宅した夫は、まじ泣き。
「なんだか抱えていたストレスが一気に流れていってしまったよ」。
ほんとうにうれしかったんだな。



















にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ


Commented by ほくろの魔女 at 2016-06-08 20:04 x
これぞ親の醍醐味!相当キツイけど・・・笑
Commented by cazorla at 2016-06-09 07:15
一人息子とか一人娘とか『一人』ものが色々抱えてるのかな?うちは長女が大変だった。12月1日に学校行かないって言って部屋にこもった。高校最後の年に。もう直ぐ受験だっていうときに。あれはしんどい一年だった。思い出しても涙が出そう。幼稚園って留年しても小学校に入る年は同じなんでしょ?だって義務教育だもん。それとも幼稚園も義務教育?
Commented by kyotachan at 2016-06-09 15:48
ほくろの魔女さん、
醍醐味、とか、キツイ、とか、ほんとうはそれほど深刻ではなかったんです。わたしの中では。長男の態度はそりゃあもう、ふてぶてしくて憎らしくてべんきょうのべ、さえしていないのは明らかだし。こちらとしては尻をたたくわけにもいかず。言えば引く、のは自分を見ればわかるわけだし。
でも進級のわかったときの、なんか、何かから開放されるような気持ちを思うと、やっぱりちょっと、キツイ、とおもっていたのかな。

cazorla さん、
お宅は長女ちゃんが一人娘だもんね。なにか、関係があるんだろうか。わたしは何か、「やらねばならない」ことがあるととたんに逃避力が働く人なのよ。だから長男が父親に「勉強しろ」と言われてますますしなくなった理由がものすごくよくわかる。だからわたしはけして「勉強しろ」とは言わないし、「自分で決めろ」と言う。
部屋にこもって出てこないということはなかったし、学校には出かけていくしちょっとしたおつかいも行ってくれるし、手伝いもする。まあ、それほど悪い子じゃないよ、いいよいいよ一年くらい、と思っていたんだけど。
あら。幼稚園は義務教育じゃないはずだけど、でも留年したら小学校へ上がる年も遅れるはずだよ。幼稚園の場合はけっこう飛び級する子もいる。そんなに急いでどこへ行く~と思うけどね。
Commented by greenlove at 2016-06-09 18:46 x
去年の暮を思いだしました。高校生の孫は一応進学校と言われる高校に入学しましたが部活(ダンス部)に熱中し勉強は全くせず
留年を覚悟するよう親が呼び出されて学校から言われました。息子は激怒しダンスで疲れて勉強できないならダンス部やめろ!
毎日修羅場で孫は2時間ほどかかる我が家に家出してきたこともありました。
色々ありましたが結局進級が決まりそれはそれは皆ホッとしましたとさ(笑)
教師をやってる娘に言わせると進学校はそう言って生徒を脅かすのよって言いますが勉強ができないのは確かです、もうあんな思いはしたくない!
Commented by cazorla at 2016-06-10 15:38
スペインの小学校1、2年生って幼稚園みたいな感じ。子供もまだちゃんと服着られないし。日本の保育園って靴自分で履けるようになること、ボタン掛けできることとか色々あるでしょ?マリアは4歳でスペインに行ったからギャップがものすごかった。ことばができなかったから、それでバランス取れてたけど。エラスムスの留学が決まってるのに、今年も一個落としたよ、マリアさん。9月に合格しなかったら、留学取り消しになる。全く、いつもハラハラしてます。
Commented by kyotachan at 2016-06-10 15:56
greenlove さん、
わたしにいわせると高校時代にそれほど熱中できるものをひとつ持つことって学校の勉強をするよりよっぽどいいと思うのですけど。勉強はしたいときがくればいつだってできる。
わたしの印象では日本では大学をのぞけば留年ってなかなかしないようにできていますよね。成績が悪い子は追試をするとか、病気で出席日数が足りなければ休みの日に出てこさせるとか。でもフランスはもっと簡単に、というか、もっとひんぱんに留年をさせる傾向にあります。同じことを理解するのに一日でいい子と一ヶ月かかる子がいて当然だからこれは親切なことだと思っていますが。でも進級が決まったときにはなんかもう、それだけでうれしかったなあ。

cazorla さん、
ポーランドに留学なんて、すばらしい!あこがれの国~。一度は行ってみたい。おめでとうございます!
マリアちゃんはそのくらいのぐらぐらした状況でないと本気がでないのかもね。最終的にはちゃあんとやってみせるに違いないのだから今のはらはらどきどきを楽しまないと!って、他人事だとなんでも言える!合格、するよ、きっと!
Commented by cazorla at 2016-06-12 02:52
9月に合格しなくてもポーランドには行けるらしい。不合格になった教科と一緒に4年んいなるんだって。まあ、できれば合格してほしいけど。行くかどうかわかんないと準備とか中途半端な気持ちでしなくちゃならないから、よかったです。
上のイギリスの生徒みたいにって面白いね。可愛い。ハイソックスがあってよかった。
Commented by kyotachan at 2016-06-13 20:25
cazorla さん、
ああ、よかったよかった。ぎりぎりまで行き先がわからない、ということほどのストレスはないもんね。九月はポーランドかあ。じゃあ夏の間に偵察に行くよね。楽しみだなあ。>て、オレが楽しみにすることじゃないか。
合格すると思うよ。長女って、やるときゃやるもんだよ!
ハイソックスね、冬の定番なの。わたし冷え性だから。靴下が短いとGパンのすそから風が入ってきて寒いの。だからだいたい長い靴下はいてます。
by kyotachan | 2016-06-08 16:40 | 文 化 教 育 | Comments(8)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31