たぶんどうでもいいこと。でも、小さな、決意。







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わたしが日頃ひいきにしているスーパーは

Lidle リドル と Dia ディア。

超・ディスカウントなスーパーで
わが家から近いせいもあって
買い物はなるべくこの二軒でしている。

Lidle リドル はドイツ系らしく
質のいい安価な洗剤類が多いし
ヨーグルト系がおいしい。

またここのスモークサーモンは
お刺身で食べれるほどおいしい。
そしてビックリするほど安い。

Dia ディアの野菜売り場は
いつも充実していて新鮮だ。

箱入りワインも数種類あって
良心的な値段で売られている。

働いているスタッフたちも「庶民の味方」的でとてもいい。

たとえば、ネットに入ったたまねぎをひとつ買ったとき
「今日は一個おまけだよ。もうひとつ取りに行っといで」
とわざわざ教えてくれたりする。

走ってたまねぎ売り場に行くと
なるほど今日はネットひとつにつき一個おまけ
という貼り紙がでている。
わたしは気がつかなかったのだ。

こんなやさしさにわたしは弱い。
ああ、フランス人も捨てたもんじゃないじゃん、
とほんわかこころが温まる。

昨日、
レジでおじさんがお会計中
「一ソンチーム、ありません?」
とレジの女の子に聞かれていた。

おそらく、もしおじさんに一ソンチームの持ち合わせがあったら
九ソンチームという半端なおつりを出さなくてすむという理由だろう。

おじさんはあいにく一ソンチームの持ち合わせがなかった。
すると横のレジに並んでいた人が
「ほれよ」
と出してくれた。

おじさんとその人は知り合いでもなんでもない。
おじさんはていねいにその人にお礼を言っていた。

わたしはそれを見ながら、
うん、まあ、ちょっと違うけど、
でもそういうことなんだよなと思った。











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二年くらい前の夏
わたしはLidle リドルのレジに並んでいた。

わたしの前には
十才前後と思われるきょうだいが二人
並んでいた。

お兄ちゃんと、妹。

二人は
六個入りくらいのアイスキャンディの箱を一個
レジのテーブルに置いていた。

彼らの番になってお会計をするとき
彼らの持ち合わせの金額では
足りないことがわかった。

ほんのわずか、
数サンチームが足りなかったのだ。

ふたりは、外国語らしいことばで
二言三言ささやきあい、
そしてたいしてがっかりした様子もなく
アイスキャンディの箱をあきらめて
店から出て行った。

わたしはそれを彼らのすぐ後ろで見ていた。

そして日を追うごとに
この光景が目の裏側によみがえり
そのたびに後悔した。

ああ、わずか数サンチームだったのに。
わたしが出してあげればよかった。

わたしは貧乏主婦の代表で
おまけに暗算が下手くそときているから

「このくらい大丈夫」
とレジに並んでいて
いざという時にお金が足りず
何品か商品を返す
ということをすることがある。

あの子たちに
そんな自分を重ねてしまうのだ。

わたしはいい。
わたしは貧乏主婦で、
そういうことが起こっても平気でいられる。

だけど、子どもたちには、
そんな場面を経験させたくなかった。

それがたとえ知らない子どもでも、
わたしが出してあげられる金額だったら出してあげたい。
そう思った。

今度そんな場面に出くわしたら
わたしはゼッタイにおしつけがましくならないように
そっと数サンチームを差し出そう。

わたしはそう決めた。強く、決めた。

そして数ヶ月が過ぎて冬になり、
わたしは Dia ディアのレジに並んでいた。

わたしの前にいるのは、
色の白い、ブロンドの女の子で、年は二十歳くらい。
しかしどうみてもフランス人ではない。
「東の方から来た」女の子のように見えた。

ぴしゃげた黒い靴とくたびれた茶色のコート。

彼女もまた、六個入りくらいのアイスキャンディの箱を
レジのテーブルにのせていた。

わたしはにわかにドキドキし始めた。

こんなに寒いのに、アイスキャンディを食べたくなったんだな。
ここへ来れば、六個入りのが買えるって知ってたんだな。
きっとお金はキッチリしか持ってない。
もしかしたら足りないかもしれない。
わたしはひとり、想像をくるくるとめぐらせてしまう。

さりげなく、でも確固とした態度で。
おしつけがましくなく、でも悠然と。

わたしは、数分後に起こる<かも>しれない場面を想像して
わきの下に汗をかくくらい、緊張した。

彼女の手は両手ともコートの中に入っている。

お会計をするとき
彼女はコートのポケットに入っていた片方の手を出した。

手の平には小銭がいくつかのっている。
やはり、足りなかった。

女の子は顔を赤らめて小さい声で抗議した。
なんと言っているのか聞き取れなかったが
「この値段がついていた」
と言ったのだろう。

わたしにもよくあるのだが、
フランス語での商品名を知らないとき
どの札がどの商品の値段か
判断がつかないときがあるのだ。

冷凍庫に入っているアイスキャンディなどなおさらだ。
彼女は他の商品の値段を見て勘違いしたのだろう。

わたしはさっと財布を開けて
小銭を確認した。

大丈夫だ、出してあげよう、
そう思って顔をあげたとき、

彼女は反対側のポケットに入っていたらしい
五ユーロ札をすでに出したところだった。

ああ、持ってたんだ。

ほっとした、

と同時に
すごく、がっかりしていた。























というまあ、それだけの話なんですけどね。ええ、ええ。こちらが貧乏なだけに、なんかこう、助けたくなっちゃう、みたいな?
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その後、こんな場面には出くわすことなく、今まできちょります。今後、どうなんでしょうねえ?>あ、どうでもいい?汗

恐れ入ります。
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Commented by ババ姫 at 2010-11-13 04:01 x
ブラボー!
おもしろかった。
やさしさと機転の利く頭脳のkyotaちゃん
好きだよ。
Commented by julia at 2010-11-13 10:40 x
ドキドキしました。ドキドキしました。
どうするんだろう、どうなるんだろう?と思いました。(笑)
読ませるな~ホント。観察眼がスゴイなぁ。^^

レジでお金が足りないって、私も何度かやったことがあります。すごーーーく恥ずかしかった。やっぱり何品か返しました。以後、お財布には予備を入れています。^^;

言おうかどうしようかと迷って・・・ってこと、私、バスの席を譲るので失敗があります。東京で、相手はドイツ人の若い女性だったんだけど、私が下りる時、「私はここで下りますから、この席にどうぞ」って言ったつもりだったんですが、相手があんまりびっくりするから、「??」と思ったんですけど、よく考えてみたら、「ここに座りなさい!」のドイツ語だったな~、なーんてね。^^;
Commented by greenlove at 2010-11-13 11:48 x
ほんとに ちょっとした善意を行うときって結構勇気がいりますよね。
ものすごい決心してドキドキしながらいざ決行!というとき思わぬ
肩すかしにあうことがあり、あの緊張感はなんだったんだろう・・・なんて。
私が普段で気をつけていることはスーパーのレジに並んでて順番がくるとレジ係さんがまず「こんにちは!」と言われるので私も「こんにちは」とおかえしします。
またレジを打ち終わったら「ありがとう」ともいうことにしています。
善意なんて言うほど大げさなことではありませんが無言で全ての事が終わってまうのはなんだか味気ない気がして・・。
レジ係りさんと私も「一期一会」ですもんね。
Commented by coco at 2010-11-13 12:10 x
あ~、ものすごおくわかるなぁこれ。
たまに日本でもあるけれど西洋人のそれはものすごく
さりげなくて“何とありがたい!!”って感じでも
なく、施し風でもなくって自然。それでいて気持ちが
いい具合。 転んだ人に駆け寄るときも大げさでなく
さりげなく優しい。その一歩が踏み出す勇気がなくて
ボーっとどうしよう・・と観ていただけの自分が
ちょっと恥ずかしくて後悔したりして。。言葉が
通じなくてもとっさの言葉が出なくても駆け寄って
手を差し伸べるって事でその人が嬉しく思うのは
間違いないことなのに、なんて後から考えるんだけれど
ねぇ。
私も次こそはって狙ってる場面いっぱいありますよ!
次こそ勇気をもって!!!!!あ、お互いに♪
Commented by スロー at 2010-11-13 15:56 x
うちの息子、小さい頃に、スーパーのレジ横で
「おかあさん、おカネ、足りるの?」と、とてもか細い声で心配してました。
それをレジの方が、クスっと笑っておられ、恥ずかしい思いをしたことがあります。
足りなくて、返品もしたことがありますが、
「あれま、足らんわ~。じゃ、ひとつ返そうっと~」と、
私はべつに、どおってこと、思ってないんです。
でも、周りから見ると、かわいそうで、気の毒に映ってるかも知れません。
助けたり、助けられたり、自然にできるといいですね。
Commented by masako at 2010-11-13 18:53 x
ホント。5ユーロ持ってたんだ。ホッとした~。ね?
キョータちゃんの文章は、臨場感があるよ~。
PCの前で「どーしよー?」と悩んだよ。

手伝うべきか?そっとしておくべきか?
でも 目の前で カッコよく手助けする人がいたら、「あー。良かった!でも、今度は私も手伝おう。」と思う。
皆に優しくしようとする気持ちの輪を広げるのが、一番大切なような。
キョータちゃん、これで、キョータちゃんのいない所でも困っている人を手伝う人が増えたよ。だから、これも、キョータちゃんの人助け!だよね。
Commented by kyotachan at 2010-11-14 21:46
☆ババ姫さま

ブラボー!ですか!うれしいです。ババ姫さんはこんな風なやさしさ、さらりとこなしてしまいそう。そして、周りの人にさらりとやさしくされていそう。わたしもそうありたいなと思います。
Commented by kyotachan at 2010-11-14 21:48
☆ジュリアさま

ていうかそのドイツ人、まさかバスの中でドイツ語を話す日本人に出会うとは思っていなくてびっくりしたのでは?だって、ねえ?普通、ドイツ語は話さないでしょう?笑
Commented by kyotachan at 2010-11-14 21:50
☆greenlove さま

わたしも人にやさしくしなれていないので妙に緊張します。笑。レジの人にこんにちは、ありがとうさようなら、わたしも言います。わたしの場合すっかり顔なじみです。
Commented by kyotachan at 2010-11-14 21:51
☆coco ちゃん

ああ!それ、あるかもしれない。ぺビーカーを持って階段登っているときにいかつい兄ちゃんがひょいと手を貸してくれて感動したり、、、なんか、自然な善意が気持ちいいのよね。おし!わたしたちもばんばろー!笑
Commented by kyotachan at 2010-11-14 21:53
☆スローさま

いやあわたしもこんだけ恥かいてるんだから暗算がうまくなりそうなものなんですが最近は「だめならこれ返そう」てちゃんとこころの準備をしてたります。進歩がなくてそしてなんだか図太くなりましたわー。
Commented by kyotachan at 2010-11-14 22:48
☆マサコちゃま

そうそう!親切な人を見るとほんわかするし、ああ、やってあげたっていいんだよなあと思う。親切にされるとわたしもうれしいし。どこかで同じことをやってあげられたらいいなとも思う。うふふ。がんばるぞー。
Commented by tomatomatos at 2010-11-15 10:38 x
オバチャンになってから人に親切になった気がする
あ!違う?母になってからかな
こっちが親切にするとウチの子供達に親切にしてもらえそうな気がする
ちょっとズルいかな?
Commented by tamasan at 2010-11-15 14:38 x
kyotachanさん、良い人ですね~
ほんわかとした、可愛い人柄が滲み出てて好きです。

大阪のオバちゃん化してる?ぁ、これ決して悪い意味じゃ
ないですよ!私生粋の大阪人ですから、こんな時黙って
見てられないのです。
Commented by kyotachan at 2010-11-15 21:11
☆とまとさん

わたしも最近やっと人にやさしくしたいと思うようになったよ。そうそう、わたしもとまとさんと同じ。やさしくした人がわたしじゃない人にやさしくしてくれたらいいな、と思うよね。あはは、それが自分の子どもたちだったら言うことないわ!
Commented by kyotachan at 2010-11-15 21:12
☆tamasan さま

大阪のおばちゃん!いいですわ~。ああ、っもう!そのくらい出したるだしたるー!そんなもん気にせんでええよええよ、て自然に言えそう。わたしもそんなおばちゃんを目指そうっと。
by kyotachan | 2010-11-13 02:48 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(16)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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