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fumiko 史子。<21>







fumiko 史子。<21>_f0136579_055242.jpg


「えっ?
お母さん今、なんて言ったの?」

わたしの横にごろんと寝転がっていた恭太が、
いきなり上体を起こして言った。

「そんなにビックリしなくてもいいでしょ。
三芳くんはきっと、自分で生まれてくる姿を
決めて、生まれてきたんじゃないかなあ、
て、そう言ったんだよ」

「なにそれ!お母さん」

「いやほら、
〝神様は不公平〟
とかって、言う人、いるじゃない?」

「神様が、不公平」

「うん、障害を持って生まれた人とか、
事故で、車椅子を使うようになった人とかに、
〝神さまって何て不公平なんでしょう〟
とかって言う人、いるのよ」

「ああ、神様が、不公平」

「恭太、聞いたこと、ないかな」

「どうだろう。わかんない。
でも、なんか、わかる気がする。
三芳が、杖をつかないと歩けないのも、
神様が、不公平だからなの?」

「ううん、違うよ。
違う、とお母さんは思ってる。
神さま、がいるかどうかもわからないけど、
でも神さまが不公平なんじゃない。
神さまが三芳くんの足を悪くしたんじゃないよ。
そんなの、絶対へんだと思う」

「じゃあ、誰?」

「だから、三芳くんが、
自分で、その姿で」

「そっちの方が、
ぜったいに、へんー!」

恭太は叫びながら、
またごろんとわたしの横に転がった。

「そうかな。
でも、これはもう、どう信じるか、
の問題だからさ。
三芳くんの足は、神さまが決めたことで、
だから、神さまは不公平なんだ、
て信じることもできるし、
三芳くんは自分でその足で生まれようって
自分で決めたんだ、て信じることもできる。
ただ、それだけのことなんだよ」

「だって、なんで三芳、
そんなことを決めたの?
自分で決めるんだったら
普通の足で生まれてこよう
て決めたほうがいいのに」

「ほんとだよね。
そこが、人間の、不思議なところよ」

「いや、お母さんのほうが、不思議だと思う」

「あ、不思議なのは、わたしですか」

わたしたちは足の裏を合わせて、
片足づつ、押したり引いたりした。

わたしは昭彦さんの、死んだ息子のことを
思い出していた。

由美子さんは言ったのだった。

「息子は、わたしに何かを教えようとして
死んだのじゃないか」

それは三芳くんにも通じることばだ。

三芳くんは、わたしたちに、何かを教えてくれるために
悪い足をもって生まれてきたのじゃないか。

三芳くんが生まれたとき、
ご両親はどんなに苦しんだだろう。
どんなに悲しかっただろう。

でも、笑って笑って毎日笑うことを忘れずに、
生きてこられたのじゃないかという気がする。

三芳くんの家族の明るさは、
何もかもを乗り越えた、その先にある明るさ、
という気がしてならない。

三芳くん家族の笑顔を見ると、
足が悪いなんて、実はたいした問題じゃあないんだよ、
と言ってくれてるようなそんな気持ちになるのだった。

これを、恭太に、どう伝えればいいのだろう。

わたしが黙りこくったのを見て、
恭太は言った。

「お母さん、ぼく、
不思議だけど、でも、嫌いじゃないよ」

「えっ?」

「その、お母さんの考え方」

「そう?」

「うん、神さまが不公平なんじゃない。
三芳が、自分で決めたんだよね。
だから三芳、あんなに明るいのかもしれない。
そして三芳は、不幸なんかじゃないと思う」

「ああ、うん!
お母さんも、そう思う」

「お母さん、ぼくさ、
ちょっと行って来ていいかな」

「どこに」

「三芳んち」

「今から?」

「うん、さっきさ、
山下にへんなこと言われて、
ぼうっとしているときにちょうど
三芳のお母さんが迎えに来ちゃったから
そのまま、なにも言わないで、
帰ってきちゃったんだ」

「ああ、そうなんだ。
でも、行って、どうするの」

「え、えーと。
どうしようかな」

「三芳くんは、不幸じゃない、て、言うの?」

「そんなこと、言えない」

「三芳くんと一緒にいるとほっとする、て言うの?」

「そんなこと言うの、はずかしいよ」

「じゃあ、ケーキ、買ってくる?」

「え、いいの?
三芳んちのケーキ、
高級だから、高いんでしょ?」

「うん、でも、マカロン、
食べたくなっちゃった」

「ほんと?
じゃあさ、
ぼくの好きなロールケーキも
買ってきていい?」

「しょうがないなあ。
そしたらお父さんのガトー・ショコラもだ。
ほんとうは特別の日だけに
しておきたいんだけどなあ、
ドゥ・フレールは」

早速起き上がろうとしている恭太に、

「あら!何か一言、足りない気がする」

わたしが言い終わらないうちに、恭太は
わたしのお腹にアタックしてきて

「ありがとうお母さん。
ああ、お腹が気持ちいい~」

とわたしのお腹のぜい肉に
顔をぎゅうぎゅう押し当ててきた。

「一言おおい!」

大声で返しながら、
恭太の頭をくしゃくしゃにした。
























ああ、下の子、てそれだけでもういつまでもぎゅーってしていたい存在なんですよね、、、>史子に同感なキョータ。
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上の子は上、てだけで憎らしい、て感じ。>あ、これはキョータだけです、きっと。

恐れ入ります。

Commented by スロー at 2010-11-04 09:25 x
目頭が熱くなり、鼻のあたりが痛くなるのって、へんでしょうか?
(ほんと、お恥ずかしいです・・・)
こういうお話、とてもスキ、というか、理屈なく勝手に感動してしまいます。
ちなみに、上の子だから憎たらしいのではなく、相性の問題ではないでしょうか?
Commented by MAKIAND at 2010-11-04 12:58
は~。へーさんを思い出す~
なんだか合いたくなってきた=。
フランスが気に入ってるみたいです。友達もできて、今朝5時半に電話してきて。^^ 
Commented at 2010-11-04 13:27
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kyotachan at 2010-11-04 22:13
☆スローさま

いつも読んでくださってありがとうございます。もう、おひとりからだけでもこんなコメントもらうと、ああ、がんばって書かなくちゃ、と思います。うれしいです。憎たらしいのは、、、、相性、ですかねえ。わたしが自分の子どもたちと相性がいいのか悪いのかまだわかりません。笑。よくても悪くても憎たらしい時は憎たらしいような。相性がいいほど憎たらしい、てこともある気がします。
Commented by kyotachan at 2010-11-04 22:14
☆マキさま

あら!留学期間、一年間ではなかったですか?早く会いに行かないとすぐに戻っていらっしゃいますよー!
Commented by kyotachan at 2010-11-04 22:15
☆かぎさま

もうこれ、ずっとありますからここに。暇で暇でしょうがないー!て時に読んでください。>ママには永久にそんな時間は来ないかも?
Commented by MAKIAND at 2010-11-05 10:10
留学は5年です。大学も行くつもりです。^^
Commented by kyotachan at 2010-11-06 01:42
☆マキさま

あ!五年?うわー!いいなあ。フランス語、わたしより上手になっちゃうんだろうなあ。
by kyotachan | 2010-11-04 01:10 | なげーやつ | Comments(8)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
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