人気ブログランキング |
ブログトップ

nice!nice!nice!

liberté リベルテ/ 自由 〈4〉






f0136579_16253791.jpg






f0136579_16255449.jpg


□ 第四話 モラン・テリー

「(ボーイフレンドが三人ってのはちょっと多いんじゃない?)」
ミチルと阿部さんの関係を知ったアレックスが、困った顔をしてミチルに言う。

ボーイフレンドが三人?
そっか、わたしにはボーイフレンドが三人いるのか。

言われてはじめて気がついた。
ミチルにしてみたら、ほんとうに、それらはたまたま時期が重なりあっただけのことで、なんの作為も思惑も計画もない、生きている間に自然に起きたことだった。

わたしはなにも悪いことしてないよね?
だってわたしは自由でしょ?
同じように田坂も阿部さんもアレックスも自由だよね?
そうだよね?

わたしは誰も責めない。
そしてわたしは誰からも責められたくない。
だってお互いに自由でいたいじゃん?

田坂がいてくれるから、わたしはアレックスや阿部さんともつきあえるんだわきっと。
田坂という帰る場所があるからわたしは自由でいれれる。

ミチルは、自分なりの論理を頭でこねくりまわしてみる。
そして田坂と結婚したらどうなるのかなんて考えてもみなかった。

ミチルは相変わらず、毎晩のように母親に電話しては、結婚への不満を聞いてもらっていた。

結婚への不満を別にすれば、ミチルはやっぱり田坂のことが好きだった。
田坂と結婚するためにはここを通らなければならないのだと自分に言い聞かせながらなんとか自分を自分らしく保っていた。
母親の言うとおり、これは誰でも通る道なのだと。
通り抜けてしまえば、すべて忘れてしまえる些細なことなんだと。
わかってはいたけれど、正直に言えばわかりたくもないことだらけだったから、ミチル自身は意識さえしていなかったけれどストレスは蓄積される一方だった。

「結婚する前は誰にでもあれこれ気に入らんことのあったり、もうやめてしまいたいと思うことはあると思うけど、そいにしてもあんたの場合はちょっとそいのありすぎるかもしれんねぇ。
そっぎゃーんまでいやとやったらやめてしまってもよかよ。」

その日ミチルの母親はこう言った。

えっ?!ミチルは母親の言うことが一瞬、理解できなかった。

やめてしまってもよかよ?


や め て し ま っ て も よ か よ


それはまるで、はじめて聞いたことばのように、ミチルの頭で反響した。

ミチルはそう言われるその時その瞬間まで、そんなことはまるで思いつきもしなかった。

田坂との結婚をとりやめにしてもいい。
それも、あれほど応援してくれていた母親が、そう言っている。

ほんとっ?よかとっ?やめてもよかとねっ?

「いや、、、よかってこともなかばってんが、、、あんたもうずーっとなんだらかんだら不平不満ばっかい言いよるやろもん、、もしかしたらそっぎゃーんして結婚してもよかことはなかかもしれんねーって思えてきたんよ、、、」

!!!!!

、、、、、そうやね、、、ほんとにそうかもしれん、お母さんの言う通りかもしれん。

あたし、やめる。
いや田坂は好きやけん、結婚ば延期してくれるごと、頼んでみるけん。
ミチルはやけにさばさばした気分になってそう母親に言ったのだった。






その週末、ミチルは田坂とふたりで彼の実家を訪ねた。
田坂にはあらかじめ、ご両親に会いたい理由を電話で伝えてあった。
駅まで迎えに来た田坂はなんだかこっけいなくらいにぎくしゃくしていた。

ケーキとお茶を出されたミチルは、正直な気持ちを田坂のご両親に伝えた。

「わたしは今も田坂くんのことは好きなので、結婚はしたいと思っている。
しかし、その結婚の形が、わたしの思い描いていたものとはあまりにもかけ離れていて、正直とても混乱している。
できることならば、結婚を延期してもらいたい。」

そう言うと、笑みを絶やさない田坂のご両親は心底ほっとしたようだった。
そして母親の方がミチルに向かってさぞそれまでの苦労をねぎらうように、

「そうですか、そうですか、ミチルさん、つらかったのねえ」

と言った。そして結婚に延期はありえない、とはっきりと言ったのだった。

結婚はね、延期はしないのです、と。

え、、、やめてしまいたくはないんです。あの、、田坂くんのことは好きなので、、、

必死に応戦しようとするミチルを、田坂の両親は有無を言わさず態度で、いえいえそれはありえませんよ、とあくまでもにこやかに、断言した。

「ミチルさん、どうかしあわせな人生をおくってくださいね」

別れ際に田坂の母親に言われたこのセリフが、とても皮肉に響いて、ああわたしはしあわせなんかにはなれないんだろうな、とミチルは思った。
披露宴をしたくないという理由だけで結婚を破談にしてしまったわたしは、しあわせになる資格などないんだ、と。

ふたたび駅まで送ってくれながら、田坂がもう今さらこんなこと言ってもしょうがないんだけど、と前置きして
「最初っから俺んちの両親とミチルを、ちゃんと向かい合わせて話してもらえばよかったんだよな」
と悲しそうに言った。

田坂の両親は、ミチルの両親から援助してもらってアパートを購入することに反対していたのだとその時はじめて聞かされた。
今となってはふたりの住むべきアパートが見つからずじまいになっていたのは幸いだったかもしれない。
披露宴のことも、田坂はミチルを尊重したくても、両親がそれでは結婚を認められないと言ったそうだった。

大歓迎、だったのかもしれないな。

ミチルのほうから「延期」を言い出したことは、田坂の両親にしてみたら、待ちに待ったことばだったのかもしれないなとそのときになって気づいた。
田坂の両親が「ああよかったよかった。これでやっとあの田舎者をお払い箱にできる」と手をたたいてよろこんでいたとしても、なんの不思議もなかった。

ああ、わたしは後悔するな。
帰りの電車の中で、ミチルは強く思った。
好きな田坂と、こんな形で終わってしまうことをあとからものすごく後悔する。
婚約式のために田坂から贈られた指輪や、披露宴会場をおさえるための内金など、田坂に散財させてしまってもいた。

何やってんだろうなわたしは。
なんてできそこないの、ばかやろうなんだわたしは。






翌朝ミチルは目覚めてみてびっくりした。
朝まで一度も目を覚ますことなく眠ったことに心底驚いた。
ミチルはもう何ヶ月も前からずっと、夜中に何度も目が覚めては眠れない夜が続いていたのだった。
そっか。そんなにつらかったかミチルちゃんは。
そう思ったら愉快になってきた。
太陽の光がよく眠った目に気持ちよく差し込んできた。






ミチルは中断していたフランス語の勉強を再開して、仕事帰りに水道橋にある語学学校へ週三回通い始めた。
その学校で夏、パリ祭を祝賀するパーティがあった。
パーティといっても簡単な飲み物やスナック類が販売され、フロアー一面を踊れるスペースにする、というとてもくだけたパーティ。
そこに友人と一緒に遊びに来ていたのがテリーだった。

























婚約解消ってそんなことしちゃって、、、ミミミ、、ミチルーッ、、、!
ブログランキング・にほんブログ村へ


でも結構いるんですよね、、、婚約解消を経験した人って、、、もしやあなたも、、、?

恐れ入ります
Commented by マナブ at 2009-10-08 18:33 x
て、テリー!?
テリーって、放送作家のテリー伊藤か!?
ミチルー、婚約解消は間違ってないけど、テリーはやめとけー!

くそぉ〜、おもしろいぞ、この話、、、。
早く、早く、続き,続き。
Commented by rundmc8 at 2009-10-08 18:45
私の従姉妹、結納を交わした後、婚約を破棄しちゃい
結局、数ヵ月後に別な男性と出会い、その人と結婚しちゃったんですよ。
読んでて、その時のこと思い出してドキドキしちゃいました><*

Commented by gudigudi at 2009-10-08 19:03
テリー。
テリーと言えばテリー・サバラス(古っ)。
いや、やっぱり年代的にテリュース・G・グランチェスターか!?
Commented by たまちゃんの母 at 2009-10-08 19:46 x
自覚はなくても、無意識にこの人ではないとわかってたんだろうな。
選択の余地なく、選ぶしかない相手ってあるみたいね。

うちの職場にも婚約破棄歴のある人がいて、
もう、結婚するくらいなら死んだほうがましだとまで思ったって。
訴えられそうになった挙句高額の慰謝料を支払い、大変な目にあったみたい。
今の旦那さんとはささっと結婚して、
色々あってもやっぱり一緒にいるから、
やっぱりこれでよかったのだと。

ミチルが田坂さんに訴えられなくてよかったです。
Commented by mirasierra at 2009-10-08 22:50
そうですか、そうゆうことになりましたか。。。
ミチルの母の言葉は直球ズドンと入りましたね。
そして、いよいよ真打ち登場なのかしら~?!

テリーって、キャンディ・キャンディの方が先に浮かびましたが、
もう一人はコジャックやってた人だってわかる私も古いです、gudigudiさん。(笑)
Commented by 重箱Ginger at 2009-10-08 22:57 x
パリ際はパリ祭ですか?
ミチルさん、もてまくりで、うらめしーやら、うらやましーやら。秘訣はなんだったのでしょう?

今までのKyotachanさんの小説をプリントアウトして自分なりの本というか冊子を作ろうと思います。いつでも読めるようにね。その前に自分用のプリンターを買いに行かねば。

Commented by kandamyojin at 2009-10-09 00:33 x
そうか、テリーね、パリ祭に遊びに来るのだから、もちろんフランス人(アレックスもテリーもどうもアメリカ人っぽい名前のようですが)。なるほど、次回が想像できるような気がします。
田坂さん、それでいいのか、おい、しっかりしてくれ。そんなことでは電気自動車を開発することが出来ないぞ。
Commented by merurobi at 2009-10-09 02:44
婚約破棄ならまだまし!

私の友人は成田離婚ならぬ長崎(空港)離婚を2回続けました・・・

こんな田舎の事、その友人はそれから田舎には帰って来ていません・・・


いいなぁミチルちゃん・・・正直だと思うなぁ・・・

Commented by kyotachan at 2009-10-09 16:48
+ マナブさま

そうそう大当たりー!テリー伊藤なんですよこれー!テリーといえば彼しかいないですよね、、、あのろんぱった目、、早口でまくしたてて何がなんでも我を通す、、、、、、ってマナブさーん!あなたのおかげでテリーがヘンなところへ行っちゃったじゃないっすかあああああああ
Commented by kyotachan at 2009-10-09 16:50
+ rundmc8 さま

ayumi さんんが読んでくださってるなんて、、、なんか、、、はずかしいやらうれしいやら
ニースに来てから日本人女性の集まり?でそういう話題が出たんですがいやーいるわいるわ!婚約破棄経験者、、これはけして珍しいことじゃないんだなーと実感した次第です
Commented by kyotachan at 2009-10-09 16:52
+ gudigudi さま

キャンディキャンディは覚悟しといた、、、それにしてもあーたフルネームで来たわね、、、さすがだわ
もうひとりははげのおっさんね、、、男なるものはげてなんぼよね?ん?夫もジダン風になってきたわ~
Commented by kyotachan at 2009-10-09 16:53
+ たまちゃんの母さま

わっちゃー!慰謝料?!そんなもんとる男がいるのねー、、、そりゃあさっぱり別れといて正解だったわねきっと、、、
Commented by kyotachan at 2009-10-09 16:54
+ mirasierra さま

ぴぴーっ、、、!テリーで遊ぶのはそこまでーっ、、、!しかし、、、あのひげのおっさんご存知とは、、、しぶいわ、、、
Commented by kyotachan at 2009-10-09 16:56
+ 重箱Gingerさまさまさま

いやーっ、、、、サンクスですーっ、、、ひとりだともう絶対気がつかない間違いですわ、、、今後も校正係よろしくですー!
プリンター、、、っていらないいらないそんなもの!本屋に本がならぶようになるのすぐですからーっ!(この年になって「夢はでっかく」と思えるようになった笑)
Commented by kyotachan at 2009-10-10 04:58
+ kandamyojin さま

あらっ?先を読まれてしまっているかしら、、、っ???アレックスはアレキサンドル、テリーはチェリー、みたいな感じですがフランスにも多いんですよ、、、田坂ねえ?あのテニス部の主将を手放すべきじゃなかったのかもしれないですね、、、、
gudigudi さんのところいらっしゃったことありますか?キョータの姿、、おぼろげですけどごらんいただけますよ
Commented by kyotachan at 2009-10-10 04:59
+ merurobi さま

ほっほー!長崎でもありましたかー!そうそう確かバブルの時期で披露宴でもお色直しを四回も五回もやってあげくのはてに豪華絢爛な新婚旅行からもどったとたんに現実を見せ付けられて嫌気がさす、、、てパターンのカップルが続出したんでしたよね、、、ったく、、、やっぱりあの頃って日本全体が狂ってたなー、、、
by kyotachan | 2009-10-08 17:18 | liberte リベルテ/ 自由 | Comments(16)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族