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liberté リベルテ/ 自由 〈2〉






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□ 第二話 ドローム・アレックス

ミチルは経理部長に頼まれて、コーヒーを応接室へ運んだ。
中ではフランス本社の社長ミスター・ドロームが書類に目を通している。
ミチルの勤める事務用品メーカーはフランスの会社が資本の半分を持っていて、自社製品を製作販売しつつフランスの事務用品を輸入して販売することもしていた。

「(ありがとう)」
書類から目をあげたミスター・ドロームは、めがねのふちからのぞきこむようにミチルを見てそう言った。

青い目にブロンドの髪。
もっとも髪の毛はほとんど銀色に近い。

ミチルの知るフランス人の中ではとりわけおだやかな人だ。
知っている、と言ってもミチルの知っているミスター・ドロームはこうしてコーヒーを出すときに笑顔でお礼を言ってくれる、感じのいい社長でしかない。
お礼を言われて、ミチルが立ち去ろうとしたきだった。
「(仕事のあとって、キミみたいな女の子は何をしてるの)」
と声をかけられた。

それが、ミチルとアレックスとのはじまりだった。

その日はアレックスが投宿していた四谷のホテルのロビーで待ち合わせをして、そのホテルの最上階にあるフレンチレストランで食事をした。
ミチルは緊張して料理のほとんどを残した。
その日ミチルはそのままホテルに泊まり、アレックスは翌朝の便でフランスへ帰った。

ミチルにとってフランス本社の社長ミスター・ドロームは、憧れににも似た気持ちを抱く遠い存在で、その人が思いがけなく自分の生活に入り込んできたことを、ミチルはうまく消化できずにいた。

一体全体、なにが起きたの?
ミチルの胸はまだドキドキしていた。

出張最終日の夜に、ちょっと遊びたくなっただけなんだろうな。
ミチルはアレックスの心理をそう分析した。

ミチルの分析が的を得ていたのかいなかったのかはわからないが、その日からアレックスがミチルに夢中になったことは確かなようだった。
アレックスはフランスから毎晩、ミチルに電話をよこすようになった。
それは週末さえ欠かすことなく続いた。
週末は自宅にいて奥さんもいるでしょうに、というと、
「(ぼくはテニスをするためにひとりで出かけるから)」
と言って、ミチルが感心してしまうほどアレックスは定期的に電話をかけてきた。

アレックスはそれまで日本へは「たまに来る」程度だったのに、にわかに日本へ来ることが多くなった。
そして滞在日数が以前より増えた。
ふたりで箱根や京都へ旅行もした。

「ぼくは日本にはじめて来た時、ここは牢獄なのか?と思ったんだよ。」
アレックスはミチルに言った。

人々には表情がないし、一様に足早に歩いているし、着ているものはまるで法律で決まっているかのように灰色か黒、よくて濃紺。
地下鉄に押し込まされて文句のひとつも言わない。
仕事の交渉をしようとしてもいいと思っているのか悪いと思っているのかこちらにはちいともわからない。
怒った顔をしているから当然この契約は失敗だと思っていたら最後にどうぞよろしく、と手を出されて面食らったこともある。
日本人って一体、なにを考えているんだろうって思ってた。
なんていうのかな?得体が知れなくて、気味が悪かったんだ。
でもミチルに会えてよかったよ。
日本人だってこんなに自由だってわかったから。

実際には日本にだって赤色の服を着た人も黄色の服を着た人もきんきらきんの服を着た人だっているはずだ。
アレックスの目にはそんな鮮やかな色さえも黒や灰色や濃紺に見えてしまうのかもしれない。
確かに日本という国はどこか牢獄に似た空気を持っているとミチルも思う。
人に性格があるように国にも国の持つ性格のようなものがあり、日本のそれは牢獄のような性格をしている。

なぜなんだろう?

それはもしかしたらアレックスやミチルの目にそう写るだけかもしれないけれど。

アレックスは大人だった。健全で善人だった。
既婚者の立場で日本に住むいたいけな女の子に手を出したことを考えれば、充分に倫理に反したことをしているのだから、そんな人に大人だ、健全だ、という形容詞は有効ではないかもしれない。
しかし当時のミチルにとってみたらアレックスは大人で健全で善人そのものだった。
こんな人と一緒の時間を過ごせてよかったなとミチルはよく思ったものだった。
アレックスと一緒にいて、いやな思いをしたことは一度もない。

たとえば、手に持っている邪魔なゴミをけして道端に捨てたりしない。
「(必ずあるよ。これを捨てるべきゴミ箱が)」
と言ってほんとうにゴミ箱を探し出してゴミを捨てるようなところがあった。
そして、クリスマス時期になると、
「(パリにはね、この時期でも道端に寝てる人がいるんだよ。ボクはその人たちにたいしたことをしてはあげられないんだ)」
と言ってほんとうにすまなそうにした。

日本にあまり頻繁に行くと怪しまれるからといって、香港で落ち合うこともあった。
一週間の休みをとって、ジャカルタで落ち合い、バリ島へ行ったこともある。

一度だけ、アレックスがミチルに言ったことがある。
「(パリにアパートを借りてあげるからそこで生活してみる気はある?)」
ミチルにとってそれは、身に余ることばだったけれど、パリでアレックスに囲われる生活が自分の望んでいることだとはとても思えなかった。

アレックスにしてみても、父親のような立場で、ミチルのほんとうのしあわせを願ってくれていたと思う。
だから田坂のことを話して聞かせると
「(そのクリスチャンがキミをしあわせにするとは思えない)」
というような意味のことを何度も言った。
田坂のご両親は敬虔なクリスチャンで、ミチルと田坂は、目黒の教会で「婚約式」を済ませていた。
そして教会で結婚するための準備として週に一回六ヶ月間にわたる勉強会に出席していた。

でもわたしは田坂のことが好きだから、ミチルはそのたびに自分の気持ちを確認するのだった。

「(ミチル?昨日は誰と一緒だったの?)」
ミチルはアレックスにそう聞かれてわざと黙り込んだ。
昨日は田坂と一緒ではなかったからだった。

「(もうひとりの、日本人?)」
ミチルが仕方なくうなずくと、アレックスは露骨にいやな顔をした。
ああアレックスだってこんないやな顔をすることがあるのね、というくらいにいやな顔。
やっぱりアレックスは安部さんのことは気に入らないんだなとミチルは思った。























安~~~部~~~っ?!
、、、、、まあまあまあまあ、、どうどうどうどう、、、、、
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お怒りの方、、、、あの、、、まだ続きます、、、、、

恐れ入ります
Commented by mirasierra at 2009-10-06 18:58
upされてる~♪ と思ったら・・・
もう一人男の影が?! きゃ~!
Commented by jean-miro at 2009-10-06 19:24 x
面白い〜♪  kyotachanって、作家さんだったんですね〜♡
3話目を楽しみにしてます〜☆☆☆
Commented by mvt25 at 2009-10-06 19:41
kyotachanさんが何が書きたいのかまだ読めないから・・・最後の最後まで楽しみに読ませていただきま~す
Commented by somashiona at 2009-10-06 19:51
ミチル〜、やにやってんだよぉ〜!
で、な、なにぃ〜、阿部さんだぁ〜!?
誰だ〜それ〜っ!連れてこ〜い!
彼氏があんまりじゃないか!
あ、名前なんだっけ?
アレックスじゃなくて,最初の、、、あれ、もう忘れちゃった、、、。
Commented at 2009-10-06 21:54
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-10-06 21:55
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by たまちゃんの母 at 2009-10-06 21:56 x
ヨーロッパの香りのする山田詠美だね。
露骨でえげつない性描写がないとこがいいです。

披露宴やりたくない主人公に、
激しく共感。
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:09
+ mirasierra さま

、、、、、すみません、、、こんなん読んでくれてどうもありがとうございます
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:10
+ jean-miro ちゃん

うっしっし、、、これで自立をねらうわわたし笑
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:11
+ mvt25 さま

賢明なご意見ありがとうございます、、、
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:12
+ somashiona さま

期待通りのリアクションに感謝します、、、最初の?次の?んでまた次の?ついてきてちょーだいよー!
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:13
+ at 2009-10-06 21:54 かぎさま

キミほどこれを楽しんで読む人はいないと思ってました
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:14
+ at 2009-10-06 21:55 がきさま

実は長くするのはいくらでもできるんだけど退屈モードにおちいりそうなのでこれから先はスパッ、、スパッ、、とすすみます
Commented by taroandhana at 2009-10-06 22:14 x
早速続きを読めてうれしい…
で、また続きが気になりますね〜。早く読みたいよ〜!!
あっ、改行の事…書いた後に気づいたんですが
画面の幅を自分でちじめると、勝手に改行されるんですね。
今、知りました…トホホです。すみませんでした。
なので、その話はなかった事に…。
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:15
+ たまちゃんの母さま

そんな大家、、、こえたるでー(最近強気で打ってでようと決めた)
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:17
+ taroandhana さま

早速またまたどうもありがとうー!そうそう画面ってPCによって違って見えるんですよねーたまに夫のPCで自分のブログを見るといつもの「顔」と違っていてビックリしたりします、、、わざわざありがとうございます
Commented by Photobra7 at 2009-10-06 22:30
もう1話からそのムード満点なんだけど、

ミチルに結婚なんて、無理~。

とくに普通の結婚は。
Commented by kyotachan at 2009-10-06 22:39
+ Photobra7 さま

うわー!読んでくださったんですかー?うれぴーっ!
無理、、、ですよねーほんとに普通の結婚なんて、、、、、、、、むむむ?普通の結婚、、、って、、、???
Commented by merurobi at 2009-10-07 00:04
おもしろ~い!!!

うんうん・・・何でも話せる大人な男性・・・憧れますわ!!!

私にもいないかな・・・大人な男性・・・

案外近くにいたりしてね・・・・

続き楽しみにしています。
Commented by acco at 2009-10-07 12:03 x
え~~~、今度は阿部さんですか?!
ミチル、モテまくりじゃないですか!なんか、ちょっと羨ましいかも・・・
う~ん、どうなるのでしょう。ますます気になります!

kyotaさんの言葉って、サラリとしているのにどこか引っかかるところがあって。とても惹き付けられます。
それにしても、SEXY PUZZLE Tシャツ。
こちらにも変に惹き付けられちゃいました^^;
Commented by kandamyojin at 2009-10-07 15:35 x
アレックス、突然現れて意外な展開。銀色の髪か・・・、シエクスピア役者(といっても実際に観たことはありませんが)を想像してしまうなあ。田坂、君は大丈夫かと心配になって来ました。ところが、安部の登場、なぜか、アレックスも知っている人物のようす、アレックスがいやな顔をするのだから、よほど嫌味な人物か、はたまたアレックスが嫉妬を覚えるほど魅力的な男か、さあ次の展開は?
あの頃の日本はまだ多少元気があったように思います。当時が牢獄ならば、ミチルやアレックスは今の日本をどう感じるのだろう。ヴェルサーチ(名前を知っているだけの存在ですが)が撤退しました。
Commented by kyotachan at 2009-10-07 16:44
+ marurobi さま

そう言ってもらえると励みになります、、、ありがとうございます!
あ、、、marurobi さんって今はお一人なんですね?だからきれいなのかな笑、、、きっといますよー案外近くに!
Commented by kyotachan at 2009-10-07 16:47
+ acco さま

モテモテのミチルちゃんです、、、、このTシャツいけてるでしょ?こういうのをいやみでなくシャレでこなせる男性っていいですよね笑
Commented by kyotachan at 2009-10-07 16:47
+ kandamyojin さま

、、、、、、そう言われるといじめられているような気がするんですがきっと気のせいですよね?笑
今の日本、、、どうなんんでしょうね?もう日本に住みたいとは思わないんですがちょっとのぞいてみたい気はします
by kyotachan | 2009-10-06 18:46 | liberte リベルテ/ 自由 | Comments(24)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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