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歓喜の涙。



引っ越しをすませるとその足でマルセイユへ。

マルセイユには日本領事館がある。
離婚に必要な戸籍謄本の翻訳ができあがったのだ。

この日は美しいとしか言いようのないお天気だった。
お天気さえもミチルの引っ越しを祝ってくれている。

物理的に相手と離れた日。
泣いてばかりいた一日だった。

青い空を見ても白い雲を見ても
何をしていても気がつけば泣いている。

この記事を読むと今でも涙が出る。

歓喜の涙が。













しあわせすぎると出るんですよ涙って。
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# by kyotachan | 2022-08-15 00:20 | joie ジョワ/ 歓喜 | Comments(6)

ギリギリセーフ。


引っ越しの日まで約二週間。

ミチルは今後必要になるであろう書類をまとめる。

両親が作ってくれたアルバム、
幼稚園から大学まであった卒業アルバム、
日本の写真屋さんからもらったペラペラのアルバム、
アルバム、と呼ばれる類のものは全部捨てた。

例外がひとつ。

ミチルが二十代の頃に両親と行ったセネガルで撮った写真。
これをまとめた写真だけは捨てられなかった。

たぶんセネガルがリノの出身地、アンゴラに通じるからだ。
そんなばかな!
そう思いながらも捨てられないものは捨てられない。

PC、ミチルが使っていたのは旧型も旧型、
相手がみつくろってくれたPCだったのだが
これも手放す決心をする。

大量の写真が入っている。
未来の自分には必要ない。

必要なもの。
不必要なもの。

自分に問いただす。
雑誌のクーネルを残さず段ボールに入れた自分を笑う。

好きなんだなあ。
すごいなクーネル!

自分で縫ったものもずいぶん捨てた。
また縫えばいい。型紙?また取ればいい。

今の自分がここにいればいい。

当時長男は愛憎の中の憎のゾーンにいた。
つまりミチルとは口をきかず、ミチルを無視する態度を徹底していた。

台所の椅子に座り冷蔵庫からタッパーに入った前日の残り物を食べる長男。
ミチルは「いま、言っておこう」と決める。

「(風くん、ママね、もうすぐここを出ていくよ。
でもママはずっと風のママ。
風がママに会いたくなったらいつでも来ていいよ)」。

風はタッパーに顔をうずめるようにして食べている。
ミチルはこれでいいと思う。

言いたいことは言った。

そして引っ越し当日。



















二月中にはとても無理と思いはじめていた。気がついたら二月の最終日。まだ二月だった。
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# by kyotachan | 2022-08-14 19:26 | joie ジョワ/ 歓喜 | Comments(0)

ひとすじの光。

あの時、ミチルの額に表示された「二月中に引っ越し」の文字。



あれはなんだったの?
このちいとも発展しない状況ってなに?

どうあがいてもどうにもならない、
と思いはじめた二月の後半。

ある友人が二ヶ月前にアパートを購入。
今年は賃貸に出す予定もないらしいよ、と聞く。

早速電話連絡。

「(え、離婚?そうなの?びっくりー!)」

電話した翌日、アパートを見せてもらうことに。

そのアパートはミチルたちの住むアパートと
長女が借りているアパートのちょうど中間地点にある。

長女に電話するとその時間は空いているという。
一緒に来てくれることになった。

そのアパートは丘の上にあって海が見えた。
スチュディオと呼ばれるワンルームだ。

地下に倉庫もあって段ボールを保管するスペースも充分だ。

「(考えてみる?)」

おうように言う友人にミチルは即答する。
友人さえよければ貸してもらおうとすでに決めてあった。

「(本当に借りられるならすぐにでも引っ越してきたい)」
「(あら!)」

友人は相手のことも知っている。
すぐに状況を察してくれたようだった。

「(じゃあもう今、鍵を渡してしまった方がいいわね)」。

友人はミチルに鍵を渡す。

アパートの住所はビジネスをするイタリア人の友人のために貸している。
だから賃貸契約は結べないという。

まさか、無料で?とふらちな思いがミチルの心をよぎる。
それを見透かしたように隣の長女がいう。

「(ママ、それはただで、てことじゃないよ。家賃分は払うんだよ)」
「(!わわわ、わかってる!)」

この時の気持ちを正確に言うのは難しい。
恥ずかしいのだがミチルはこう思ったのだ。

長女についていけば間違いない!

かつて常識がないと言われ、今も常識があるとは思っていない自分のところに
常識のある人が生まれてくれた、というような不思議な感覚。

引っ越しは長女とそのボーイフレンドの都合で
その週の週末ではなく、翌週に予定された。

友人とはアパートを出たところで別れる。

ミチルは友人を抱きしめた。それも強く。
そして泣いた。

なんとお礼を言えばいいのかわからなかった。
そんなミチルを長女は黙って見ている。

ひとすじの光が見えた。












バカンス用のアパートらしく、ステキなアパートでした。
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# by kyotachan | 2022-08-11 14:25 | joie ジョワ/ 歓喜 | Comments(2)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。