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長女が言った。
「(弟の)カゼを殺してやる」

十二歳ころだったかなあ。
その言い方があまりにもリアルに憎々しげだったので思わず言った。
「わたしの、息子、を?殺すの?まじで?わたしの、息子だよ?」

そんなわたしにあきれた顔をしながらも
「だって。まじで頭にくる」。









最近はわたしも長男にはカッカッとなって長女に言うことがある。
「まだカゼのこと、殺してなかったの?じゃあわたしが殺すかも」。

なんとも物騒な母親だ。鬼畜ママだな。








長女がスキーに出かける日、出発は夕方の五時すぎで
お昼は「二週間、会えないから」って、友人(女の子です)の家に食事にいくことになっていた。
友人宅へはトラムに乗って行く。

ウチはトラムのチケットは十回分のマルチカードを使うことにしている。
一回分のチケットは 1.5 € 。
十回分のマルチカードだと 10 € で五割もお得。

トラムの中でチケットを器械に通すとそのたびに検印される。
同じカードで十回使うことができる。

いちばん最後に使ったのは長男だったから、長男に「使うからちょうだい」と言った長女。
あちこちを探し回る長男を横目にいや~な予感がしだす鬼畜の母親。

ほどなくして、我が家の長男くん、
まだ三回ほどしか使っていないカードを G パンのポケットに入れたまま洗濯したことを発見。

長男の G パンのポケットからは 5 € 札が出てきたことがあるから
注意するようにしているのだけど鬼畜ママもこれは見落とした模様。










どっかん。

長女のかみなりが落ちた。

それはもう、すんごい剣幕で長男を罵倒しまくっている。
台所で聞いていた鬼畜ママはもう、わっちゃー!てな感じ。

急いでわたしのお財布に入っていたもう一枚のマルチカードを長女に渡す。
ええ、ええ。もう一枚、あったんです実は。
だけどね、長男の持っていたカードの存在を確認したかったの鬼畜ママは。

それでも一度沸騰した頭は急には冷えないらしく、さらに長男を罵倒しつつ
ドアをけちらすようにして出かけた長女。










しん、とした長男の部屋のほうをうかがいながら、ああ、泣いてるなあと。
ちーママ、怒るとこわいのよ。気をつけな?とひとりで電波を送る鬼畜ママ。

と、長男、部屋から出てきて鬼畜ママに抱きついてきた。

はあ、よかったね。今回は殺されなくて。










夕方になって長女をスキー場へ向かう、バスセンターへ車で送った。

「出がけにカゼと話した?」
「ううん。なんで?」
「だってさ、さっき、泣いてたよ」
「まじで?」
「たぶんね。そのあとママ~ママ~って来たからさあ」
「ふんっ」
「とりあえず、息子を殺されなくてよかったよ」



























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by kyotachan | 2015-02-28 00:30 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(5)









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長女は月曜日にスキーに出発。
帰りは金曜日だって。

友人の両親の持つアパートに滞在するから費用は少ないけど
でもメンバーは男女混合の七人構成。

よく夫がすんなり許したなあ。









長女は普段からわたしより母親をしているところがあって
明日は学校、なんていう平日の夜の九時半ごろ、
「ソラッ。まだ起きてるのっ。ほらほらもう寝て寝てっ」
なーんて言っているのが聞こえてくる。

それもまったくふざけた調子じゃなくてまったくの素面な感じ。
本気でいもうとに怒った調子で言うのでクスリ、としてしまう。

その上フランス語はもちろん彼女の母国語だからわたしよりよっぽど母親っぽい。










外から戻ったとき、した三人すでに帰宅していると
「クックーマイベイベー(やあ、わたしの赤ちゃん)」
なーんて言っている。

なによなによ、マイベイベー、なわけなのね?いもうと・おとうとたちは?











こんな調子だからわたしの不在時でも長女がいれば安心。
これって何かにものすごーく似ている。なんだっけ?
と思ったら、ちーママ。

わたしがいなくてもちーママがいればあーんしん。

いや、バーのママ、やったこと、ないですけど。
きっと、ちーママの存在ってこんなんなんだろうなあ、と。








だから月曜日からちーママがいなくて本ママとしてはちょっと不便。
わたしが出かけると、頼るは順番からしてやっぱり長男。

次女のほうがよっぽど頼りになる、という部分はあるのだけど
こちらとしては上を立てる、を主義してとしてきたから、長男を頼る。とりあえず。

お昼の指示も細かく、子どもたちだけで出かけるときの注意も細かく。
とにかく「そんなことまで」と自分でも思うことを細かく指示。

「そこまで言う?」とあえて一言を付け加えなかったために起こった事故は多数。
長男以下三人には自分でも嫌気がさすくらいに「そんなことまで」言うことにしている。












まあ、そんなことを言ってる間にあっちゃーまに金曜日はもう明日。

ちーママー早く帰ってきてーーーーー。>本ママの本音。























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by kyotachan | 2015-02-27 02:01 | 六 人 家 族 | Comments(3)









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玄米が好きで、一キロを一度に炊いて冷凍しておく。

最初は玄米だけで炊いていたのだけど、
それに麦、 quinoa キノア、graines d'amarante グランダマランテ、そばの実を混ぜたり。
玄米の基本一キロはそのまま、だけど配合するもの、量はその時によってさまざま。

水の配分は適当で、毎回どきどきなのだけど(なんせ、一キロ以上は炊くので)
幸いなことに今までは、たいして失敗はなく。










今回ははじめて、玄米とあずき。
玄米は一キロ、あずきは 250 g。

麦とgraines d'amarante グランダマランテをほんのちょっと。
六キロの圧力鍋ではこのくらいが限界かな。

水はちょうど二リットル。
こんぶを細かく切ったもの(これも一緒に食べるので)も入れて一晩寝かす。

翌朝(というかもう、午後でしたが)、岩塩(適当。大さじおおもり一杯くらい?)、お酒(適当。100cc 近く入れるかも)
を加えて加熱。

ここのころ落ち着いている炊き方。
①弱火で二十分(夏場は十五分)。
②強火にかけて、圧力がかかって五分はそのまま。
③ふたたび弱火にかけて二十五分。
④消火後、圧力が抜けるまで蒸らす(十五分以上はかかる)。









炊き上がったものを見て「わー!お赤飯だー!」。
あずきをいれているんだから当然なのだけど
母親が作ってくれた味によく似ていてちびっと感動。

母親のはもち米でわたしのは玄米だけど。
お赤飯はわたしが好きでよく炊いてくれたのだ。















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これでしばらくはいつでも炊きたてが食べられる。



























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by kyotachan | 2015-02-23 22:24 | お い し い | Comments(7)







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日本の新聞は配達されるものだけれどこちらの新聞は買いに行くもの。

日曜日の朝にカルフールに行ったらしい夫が(わたしはまだ寝てましてん)、
「ここのところずっと新聞にも目を通していないから」
と nice matin ニースマタン をお持ち帰り。

新聞に関する日本とフランスの違い、もうひとつ。
日本は全国紙、朝日、読売、毎日、が主流で、その中に「地方版」が一枚入っているかどうかだと思う。

こちらは新聞といえば地方紙。
ニース・マタン、ヴァー・マタン、ドコドコ・マタン、アチコチ・マタン、
その地方の名前に「マタン/ 朝」をつけた新聞がほとんど。

フィガロだのル・モンドだのの全国紙を読んでいる人は見たことがない。
もし見かけたらかなりびっくりすると思う。
キオスクには並んでいるから読者はいるはずなのだけどね。










こちらは金曜日の夜から(という言い方もフランスっぽい。学校がひけたらその足でバカンスに向かうイメージ)
スキーバカンスに突入。

フランスでは国内を三つの地域に分けて、バカンスの時期を少しずつずらしてある。
特にこのスキーバカンスは大きくずらしてある。
スキー場が混まないようにという配慮らしい。

まあ!
なんてナイスな配慮なのかしら。

その心遣い、バカンスにに関してだけではなくて色んなところに発揮してほしいわ。
……と毒づくニッポンザル。










今朝の朝刊の一面、大見出しは Au compte-gouttes オ コントゥ グットゥ。
二週間続けて週末が雨で、カーニバルの有料の催しはキャンセル続き。

compte-gouttes コントゥ グットゥ といえば、少しずつ砂が落ちる砂時計。
少しずつではあるけれど、カーニバルやってますよ、ということか。

gouttes グットゥ 、は「雨粒」のことでもある。
jeu de mots ジュ ドゥ モ/ ことば遊び、てやつですな。













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スキーバカンスに突入で話題はやはりスキー。

スポーツ用品のディスカウントで用具をレンタルする技や
スキー場の周りにある村に宿泊すればコストダウンできる、などの記事。

日帰りスキーする人、多いです。















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イタリアのヴェニスからやってきたサーカスの記事。

催事場、とでも言うのだろうか。
普段は駐車場に使われている大きな広場に、サーカスや移動遊園地が来る。

バカンスにあわせて来たんだねきっと。










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再びカーニバル情報。

Roi de la scoumoune ロワ ドゥ ラ スクムンヌ/ 不運の王さま

carnavalier カルナヴァリエ/ カーニヴァルをする人 にとって雨は敵。
王さまも不運と呼ばれてしまう。

今年のカーニバルのテーマは音楽。











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ニース市の広告。

ピスト・ノワール それとも グラン・ブルー ?


アルプ・マルチーム県では海岸からわずか百キロメートルも離れれば太陽のもとでスキーができます。

ピスト・ノワール(いちばん難しいスキーコース)を滑り降りたら、その日のうちにビーチでこんがりと肌を焼くことができます。
グラン・ブルー(大きい青)からグラン・ブラン(大きい白)までわずか一時間半。
きらきらとひかり輝く海岸をお散歩したら、さあ、太陽の降り注ぐ、雪の降り積もった頂上でスキーを楽しみましょう。
……、ここではすべてが可能です。あなたがいるのはここ、アルプ・マルチーム。ほかのどこでもありません。

ですってよ!みなさん!





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ふと目に付いたコラム。

「二百年前、ナポレオンがゴルフ・ジュアンから出航した」

ゴルフ・ジュアン、て夏によく海水浴するビーチなので。
あ、へー。ふーん。あそこから?












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裏面もカーニバル。

corso illuminé à Nice コルソ イリュミネ ア ニース/ ニースでひかり輝く山車の行列
vos gueules des nuages ヴォ ギュール デ ニュアージュ/ 雲はだまってろ

ta gueule タ ギュール/ だまれ

は我が家では言ってはならないことばだけど巷ではよく聞く。











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日曜版につく女性誌 femina フェミーナ。












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あら。ベルナール、あなたじゃないの?

スキー場では顔が覆われているから相手をまちがえちゃった、という漫画。











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あ、ニコール・キッドマン。












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こんな水着着たらおっぱいがすべり出てくるわ。











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フランス人の持つ日本へのイメージ。
……ふう。

日本の雑誌のフランス特集でもたぶん
……ふう、と思うからある意味おあいこ?




























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by kyotachan | 2015-02-22 23:26 | 日 常 空 間 | Comments(2)









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次女はインディアン。三女はカウボーイ。

小学校のほうはなんといっても目についたのがお姫さま。
おもちゃ屋さんで何種類ものそれ用ドレスが売っているからお手軽でもある。

三女に「誰の仮装がいちばんよかった?」と聞くと
「マルチカラーのかつらをかぶって黄色い大きなメガネをかけた男の子」だったらしい。

担任の先生は teletubbies テレトビーズ の格好で現れてクラス中が大爆笑だったとか。










コレージュのほうは仮装半分、普通の格好半分、という印象。
長男は前日は「パジャマで行く。まくら持参で」と言っていたのだが
直前に気が変わったらしく、まったくの仮装なし。普通で登校。

牛の着ぐるみあり、水着姿あり、キャラクターものあり。

水着の子は浮き輪持参で日光浴のデモンストレーションまでしたらしい。
かなり温かい日ではあったけど、仮装にも相当な覚悟がいる。










リセは「テーマが映画」だったらしく、色んな映画のキャラクターがいて楽しかったらしい。
こういうのはおもちゃ屋さんで仮装衣装を買ってすますより、
自分であれこれと工夫したほうがぜったいに楽しい。










好きだなあと思うのは
小学校、コレージュ、リセ、どの学校も仮装をしたからといっても特別な日ではないこと。
仮装したまま、普段のカリキュラムを普通にこなしたらしい。

この日は街中にも仮装している人たちをちらほらと見かけた。
おフランスの仮装文化はいいなと思う。












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前日に急ごしらえしたピストル。


























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by kyotachan | 2015-02-19 00:38 | 文 化 教 育 | Comments(3)

mardi gras マルディグラ









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明日は mardi gras マルディグラ。

キリスト教に関する用語で、いつまでたってもよくわからない、という用語の中の上のほうに位置することば。
直訳するとこれ、「火曜日・油ぎとぎと」。

毎年えーと、なんだったっけ。
と色々と説明を読んでみて、あ、やっぱりこれは理解できないかも、で終わる。

子どもたちに聞いても、 mardi gras マルディグラ は mardi gras マルディグラ。
ごちゃごちゃわけのわかんないこと聞かないで、て感じ。

つまりはカーニバルがはじまるよ、てことだと思っているのだけど本当にそれでいいのだろうか。








今年はどういうわけか、我が家のリセエンヌひとり、ふたりのコレジアン、かわいいエコリエひとり、
四人ともが仮装して登校するそうな。

こういうのって、その年のカレンダーと学校のカレンダーがうまくかみあってはじめて実現される気がする。
仮装なんていっさいしない年もあるもの。

日本だったら毎年ある学芸発表会や運動会は毎年あるに決まっているのにね。









長女が選んだのはミッキーマウスのガールフレンド、ミニー。
はぎれをどこからか見つけてきて、自分で縫った。

わたしはすそ上げとホック付けをやらされただけ。
ま、こんなのはね、テキトーでいいんですテキトーで。

ミニーだ、と思って見るとちゃんとミニーに見えるもんですな。笑



























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by kyotachan | 2015-02-16 23:28 | 文 化 教 育 | Comments(3)

montre モーントル/ 腕時計











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小さい頃から腕時計に引かれるたちだった。

今もブレスレットには気持ちは動かないのに
腕時計、というものにはどうしても興味が行く。










最初の腕時計は牛乳のビンのふたに輪ゴムを通したもの。

確か幼稚園生のころで
腕時計をほしがるわたしに、母親が作ってくれたのだと思う。
針はいつ見ても「おやつの時間・三時」を指していた。

ホンモノの腕時計を買ってもらったのは小学生の三年生か、四年生のころ。
スヌーピーのまるっこい手(足?)が文字盤の上をちくたくと動いた。

二代目の腕時計は長兄にプレゼントされた。
高校入学のときじゃなかったか。
シチズン製で薄手で、黒と赤のツートンカラーだった。










スウォッチにはずいぶんと長い間はまった。
五千円でスイス製のかっこいい腕時計が手に入る。

色んなデザインのものを手に入れたが
問題はすべての腕時計に常に電池を入れておくのはけっこうな維持費がかかることだった。










これは夫のおじさんのものだった時計。

夫のおばさんが亡くなったあとに、
小さな箱に彼女の時計と、夫のそれが仲良くふたつ、並んでいた。

おばさんの小ぶりの腕時計は長女が気に入って使っている。
こちらはベルトを交換するだけですぐに使えるいい状態だった。

おじさんのほうは痛みがかなり激しいのが素人目にもすぐにわかった。
レンズは茶色に曇って、ひびが入り、ベルトは根元のほうからくさっていた。

近所の時計屋さんに修理をお願いしたら
新品みたいになって返ってきた。

ベルトは文字盤と同じ青色にした。
サメの皮でできているらしい。

スウォッチが三つは買えるほどしたけれど
自動式のこの時計ならずっと使っていける。

文字盤が大きくて時計を見るたびにいらいらしなくてすむ。
今日の日にちと曜日を教えてくれるところもかしこくていい。

三女にモデルを頼んで時計の写真を撮ったら
針はもうすぐ、三時になろうしているところだった。

























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by kyotachan | 2015-02-15 23:33 | た の し い | Comments(6)










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三十八度の熱が出た。

日曜日の午後、背中がぞくぞくするから熱を計ってみたらやっぱり。

前日の土曜日の午後、家族で買い物を済ませたあとくらいから
立っていられなくなりベッドへ。

三日前くらいから咳が出て調子がいいとはいえなかった。

土曜日、次女は友人のお誕生日会によばれていて
そのお迎えに向かう夫は出かけに、ベッドに横たわるわたしを見てため息をひとつ。

夫の本音は重々わかっている。
週末ぐらいはゆっくりと休ませてよ。
なによなによ、妻がダウンで週末は家事までやれっての?

夫の本音は見えるけれど、こちらも体がダウンしてしまえばどうしようもない。
すみませんねえ、ほんとにねえ、と無言で対抗するのみ。

土曜日の夜は宅配ピザ。
ここのところ、ずっとごぶさただったからよかった。

わたしは夜の九時ごろ、ポトフの残りをあたためて食べた。
寝てても文句は言われないけど、かわりに「ママ、何か作ろうか?」とも言われない。
寝させてもらえるだけでもラッキーだと思わなくては。










日曜日は一日、目も開かない状態だった。
ひたすらうなってベッドにはりつく。

熱は三十七度五分と三十八度の間をいったりきたり。
感冒だ。
死の病ではなし。
時がたてば自然と体から抜けていくもの。
今は必死に寝ているしかない。

まさか二日続けてピザというわけにもいかず、長女を呼んで指示をだす。

・塩鮭用のが、冷凍庫にあるから。二百度で、二十分くらい焼いて、一度切ってみて、中がまだ生だったらあと五分くらいかな。

・わかった。ごはんも冷凍のをとかす?

・うん、それが簡単でいいと思う。あとさ、ゆでたまご、冷蔵庫にあるから。いつもみたいにマヨネーズであえたら。

わたしはこの日も九時くらいにポトフのスープ。ほうれん草があったからそれをスープで温めてたまごを落とした。










月曜日。
起きれない。

頭ががんがんする。
だめだ。だめだごめんだめだだめだ。

夫はひとりで起きだしてシャワーを浴び、子どもたちを起こしにかかった。
あ、伝わった?
わたしは何も言わずベッドにしがみつく。

夫は仕事へ行く前に学校へ寄ってくれることしたらしい。

・イッテキマース。今晩ね。

何も言わずともわかってくれるこのへんのあたり、けっこうポイント高いな。
病気の妻にやさしい態度を取れなくても仕方ないか。

・ありがとう。ごめんね。










月曜日、お昼を過ぎて、りんごが食べたくて起きた。
小さくてかたくてすっぱくておいしかった。

お豆腐があったのを思い出して、みそ汁を作った。
これにもほうれん草とたまごを落として食べた。

回復してきているのがわかる。

三日間、洗っていないからだを洗いたくなった。
シャワーで三日間のあかをそぎ落とす。









夕方、子どもたちを迎えに出る。
車に乗ったら熱気でむんむんとしていて暑いくらい。
からだが一気にあたたまるのを感じる。

明日はきっと大丈夫。



























写真は土曜日の午後、カルフールで買ったイチゴケーキ。長女撮影。一口も食べなかったオレ。
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by kyotachan | 2015-02-10 02:42 | Comments(14)










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今日のニースは冷たい雨。

わたしは冷たい雨に足先が凍りつくようで、それでなくても疲れていた。

スーパーに寄った。
必要なものはにんにくだけ、のはずだったのに、何やかやと小さいかご一杯ほどになってしまった。

開いているレジは一台。
わたしの前には小さなかごではなく、大きな車つきのかごにあふれんばかりにつめこんだマダム。

その前にも三人ほど。
まったく珍しい風景でもないし、ここでいらいらしたって何もはじまらない。
あくまでものんびりとかまえるしかない。

運よく、もうひとつのレジが開いた。
わたしは前のマダムに目配せして、どうぞどうぞ、とその人と開いたばかりのレジに並び直す。

マダムの前にいた三人をとばせるからかなりラッキーだ。

と、マダムがわたしをちらりと見て言ったのだ。
「どうぞお先に」。

まったく思いもよらないことでびっくりした。

いや、こちらでは、たとえばバナナひと房持っている人が
車つきの大きなかご一杯の買い物をした人の後ろにいる場合、
「いいですか先に通してもらっても。このバナナ、ひとつだけなので」
と申し出ることがある。

わたしも最近はこの手を使わせてもらうことがある。
そしてたいていは「どうぞどうぞ」と言ってもらえる。

もちろん、これは断られて当然の行為だから覚悟はしている。
もしかしたら通してくれるかもしれない、くらいの気持ち。

そしてものすごくごう慢にこの行為を強いてくる人もいる。
けっこうな買い物量を抱えているにもかかわらず、こう言うのだ。
「家に小さな子どもが待っているんですよ。いいですか先に通してもらっても」。

こう言うマダムに、
「まっぴらごめんだね。オレはね、年老いた母親が家で今か今かとオレの帰りを待っているんだ」
と大きな声で応戦しているムッシューに会ったことがある。

子どもの話もあやしいけど、母親の話もけっこうあやしい。
夕方の、気のせいている時間は誰もが一刻も早く家にたどり着きたいのは同じこと。









わたしは
「え?いいんですか?でも、わたしだってけっこうあるんですよ、ほら」
と小さなかごをマダムに見せた。

「いいわよいいわよ、わたしはそんなもんじゃないから」
とそれでも先に通してくれようとする。

「ありがとうございます!」

支払いを終えて、もう一度マダムにお礼を言う。

「ありがとうございました、マダム!さようなら。」
「どういたしまして。いい日になりますように!」










人は人にもっとやさしくなれる。
基、わたしはもっと、人にやさしくなろう。




















写真は友人が持って来てくれた焼きりんご。シナモン、コーンフレーク、バター、おさとうを入れてオーブンで焼く。らしい。
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by kyotachan | 2015-02-06 03:00 | 日 常 空 間 | Comments(6)









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台所にいるとちびたちの部屋からエリーゼのためにが聞こえてきた。
ソラがギターで弾いているのだ。

知っている曲だからか、しばし耳をかたむけるようにして聞き入る。
習ったばかりらしく、とちゅうからスピードが落ちるのだけど
それさえも感情をこめているからのように聞こえて自分を笑う。

天才かもなあと本気で思う親心。

長女が自分の部屋から出てきて
「ソラ、さっき、タララララララララ~ン、てやつ、弾いてたでしょ。あれいいね」
と言っている。

ほら。やっぱりいいんだ。また自分を笑う。












・ママ、土曜日、クレモン、うちに泊まってもいい?
長男が言う。

クレモンは長男のいちばんの仲良しで
もう何度かウチに泊まりに来たことがある。

男きょうだいがいないから、クレモンとふたりでいる長男を見るのは新鮮だ。
おとうとが生まれていたらこんな風にじゃれあったりするのかな。
見ていてほほえましくなる。

・いいよー。パパの了承もとっといてね
・土曜日の昼間、クレモンとバーゲンに行きたいのに、クレモン、ガールフレンドと会うんだ。
・そうなの?クレモンにはカゼのことよりガールフレンドのほうが大事なんだ?
・……。まあね。あ、だけどね、事故にあったから、お見舞いしたいっていうのもあると思う。
・事故っ?自動車事故?
・そう、彼女が母親のスクーターの後ろに乗ってて、すべったらしい。
・スクーター?スクーターやバイクは死亡事故につながりやすいからこわいんだよ。骨折?
・たしか、あしの骨折。
・そりゃあたいへんだ。

クレモンは昼間、ガールフレンドを見舞ったあと、ウチに来る予定だったのだけど
結局それはキャンセルになった。理由はわからない。聞かなかったから。

ガールフレンドのことは petite copine プチットコピンヌ。
ボーイフレンドは petit copain プチコパン。

わたしは学校では petit(e) ami(e) プチタミ と習ったけど、今では古いことばになってしまったみたいだ。

長男の口からはまだ一度もガールフレンドの話は出ない。
あせった様子や友人をうらやんでいる様子はまるでなし。














次女の誕生日は十二月十五日なのだけど、
年があけて、誕生日からちょうどひと月たったころ
次女の友人が自分の自宅でサプライズパーティを企画・実行してくれた。

マエルという名の友人は
次女と同じような容姿でふたりが並ぶと友人というより姉妹のようにも見える。

一月半ばの土曜日、夫は何も知らない次女を友人宅へ送っていった。
マエルはクラスの半分くらいの友人たちを集めてくれていたらしい。

半日をかけてたっぷりと誕生日を祝ってもらった上に
プレゼントにはいくつかのお店のお買い物カードやアクセサリーを持ちかえった。

いま次女にとっての最大の関心ごとは「何を着るか」。
その日のプレゼントは彼女にはぴったしだったわけだ。

この冬のバーゲンは長女に付き合ってもらって思いっきり好きなものを買った。
この冬なんてあとひと月かせいぜいふた月で終わってしまうのに
なーんていう母親の不満はこの時はぐっと飲み込んでおいた。










長女今は、とにもかくにも友人宅へ泊まりに行くのが楽しい。
彼女の友人がウチに泊まりに来ることも多い。

一月の終わりには auront オホン まで行った。
友人の両親が働く先のオーナーさんのアパートがスキー場近くにあるという。

夫は毎回、まず必ず難色を示す。

またお泊り?
今度はそんなに遠くまで行くの?
たまにはウチでのんびりしたら?

わたしはそれが可能ならなるべくあっさり許可している。
家から出たがらなくていつも親にべったり、というのよりもずっといい。

感心なのは、わたしたち両親がいないときはちゃんとそれを心得ていて
わたしたちが不在の時は、した三人の面倒をきちんと見てくれるところ。

そのことにはわたしは心から長女に感謝しているし、
だから彼女がしたいことはできるだけ賛成しようと決めている。

今年は十七で来年は十八。
法律的なことをいえば来年には長女は成人だ。

働こうと思えば働くことだってできるしひとり暮らしだって可能になる。

わたしはいまからこうして準備運動をしているのだ。
いつかは長女が家から出て行くのを想像しつつ。












不可解、としかいいようのない事件が連続して起こった。
わたしはそれをなんとか理解しようとして、色んなサイトに首をつっこんでは情報を読みあさる。

何を読んでもそれは正論のように思えるけれど
何を読んでもいま起きていることのほんとうのところがどうしても理解できない。

わたしたちは生まれる場所や生物学的にいう人種が違っていても
そして習慣や信じるものや食べるものに多少の違いはあっても
ひとりひとりが同じように父親と母親のあいだに生まれてきた人間なのには間違いがない。

殺されるかもしれないと覚悟してある国に行くもの。
何かの理由でそれを殺すもの。

そのふたりの間のどこに「殺される・殺す」理由があるのか。
いくら知識をつめこんで理解しようとしてもまったく理解できない。

難しすぎることがあまりにも簡単に行われているように見えて
わたしにはそれがこわい。

いや逆か。

簡単なことがあまりにも難しいことに変換されているように思えて、それがこわいのか。

殺されるかもしれないと覚悟してまでその国へ行ったその人は
わたしたちに何かを伝えたかったに違いないのだ。どうしても。死んでまでも。

それは一体、なんだったの。

わたしの頭はいつの間にかがちがちに固まっていて、だから
三女の奏でる「エリーゼのために」が脳にしみわたったのかもしれない。



























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by kyotachan | 2015-02-02 18:58 | 六 人 家 族 | Comments(10)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族