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日本の学制は敗戦後アメリカのそれと同じになって、義務教育は小・中・高、で六・三・三。
フランスのそれは年数がちょっと違っていて、五・四・三。

合計したら義務教育の年数は同じ十二年。
想像するに教育制度は色々とあれども
研究者によって割り出された「人の受けるべき教育の年数」には世界共通の何かがあるのかも。










わたしは学校、と名のつくものは日本のそれしか経験がないし、
子どもたちがフランスの学校へ通い始めてからはそれに関するわずらわしいことはすべて夫に丸投げで
その点に関してはものすごく楽をさせてもらっている。

えー。だってー。わたし、ここで教育受けたことないしー。

何か問題があるたびにこのセリフを免罪符にすべてを夫に押し付けてきた。
夫は夫で「この、あまりにも無知のニッポンザルにまかせておくわけにはいかない」と思っているらしく
どんな問題にも大していやな顔をすることもなくあれやこれやと世話を焼いてくれている。

わたしにしたら日本の学校とフランスの学校じゃあ、あまりにも違いすぎて
比較する気さえ起こらず、何かあたらしい発見のあるたびに、へーへーまーそーなのーへーんまあ。
てな具合にこちらの教育制度にあきれたり感心したりしてきたように思う。









フランスの学校っていいなあ、と思うところはいくつかあるけれど
その中でも最もいいなあと思うことのひとつに、お試し研修制度、というのがある。

コレージュの最終学年に一週間だけ、「お仕事体験をする」という制度。

研修先は生徒たちが自分で探し出す。
当然手っ取り早く、親たちに打診をする子どもたちがほとんどだ。











長女の場合、当時十四歳、の彼女にとって最大の関心ごとは「エステシシャン」だった。
わたしはたまたま、エステの学校の副社長の奥さま(日本人)と面識があったので
その奥さまに頼み込んで研修をさせてもらった。

エステの学校、といってもそこはエステサロンも併設されていて、
市価の三分の一ほどの値段で本格的なエステが受けられるというすてきなサロンだ。

長女はその学校はじまって以来、最初の研修者だった。
けっこう、学校側には負担だったと思う。

だって、ねえ?
十四歳の子に、何をさせるよ?

顔の施術を一回、全身の施術を一回、受けさせてもらったらしい。
あとは、エステシシャンの仕事ぶりを横で見ていた、らしい。五日間。









二年後の今年、今度は長男の番になった。

クリスマスには自分のコンピュータを買ってもらったくらい、コンピューター関係は大好き。

わたしの使っているコンピューターから突然音が消えて、動画を見ようにも何も聞こえない、なんていう時、
「カゼーん!おねがーい!」というと
たいして嫌な顔もせず配線を見るべく、コンピューターの裏側に頭を突っ込んでくれたりする。

そしてちゃちゃちゃ、という具合に不具合を直してくれちゃったりする。
期待していなかった分だけ、感動はひとしおだ。
まあ、父親の背中をちゃんと見ているのねえ、とは思っていた。

ということで長男は、父親の友人の、世界的にも名の知れたコンピューター関係の会社に決めた。

この手の大企業は Antibes アンチーブ という街のそばにある Sophia Antipolis ソフィアアンチポリス という界隈にある。
ニースに来た頃、つくば学園都市みたいなところです、と誰かに説明してもらったのだけど、
つくば学園都市がどんなところか知らないのでどうにも想像しようがなかったが、
まあなんとなく、あまり広くない敷地内に、大企業ありの学校ありの病院ありの民家ありのスーパーマーケットありの、
いわゆりコミュニティが形成されているという場所なのかなと理解している。








ニースからはバスで一時間ほどで行ける。

初日の月曜日は冷たい雨が降っていて、おまけにバスの出発所をかんちがいしてたらしく
どたばた劇が繰り広げれた。

バスセンターは学校へ行く途中にあって、月曜日の朝、長男をそこで降ろした。
乗り場が数箇所あって、目当てのバスを探すまで待っていようとすると長男がわたしに向かって
しっしっ、ではないけれど、ばいばいをよこしてきた。

ああ、ああ、そうですかい、そうですかい、じゃあ頑張ってくださいよ、という気分で
長男をそこに残して次女、三女を乗せた車を前進させた。

下ふたりを無事、学校に送ったとき、電話が鳴る。
夫からだった。

「乗り場が、違ったんだ。バスセンター出発じゃなかった。マセナ広場だって。マセナ広場!」

実はこの日の二日前、土曜日、夫にお願いしていたことがある。
「バスの乗り場はけっこう変更が多いから、必ず風と一緒に確認しておいてね」

返事があったかどうかは記憶にないが、まあ、子どもたちをダンボールに入れて部屋のすみに置いておきたい主義の夫のこと、
バス乗り場の確認はしているだろうとの思いがあった。

しかし電話での夫の声でそれがなされていなことが一瞬にしてわかった。

最近、思うのだけど、わたしはこれでもけっこうな「肝っ玉母ちゃん」だというと。
その時も、まったく、いや自分でもほれぼれするほど、まったく、動じなかった。

「ああ、はいはい。わかりました。マセナね。じゃあ、風を拾って、向かいまーす」。

風は風で、風のごとくかなんのごとくか、わたしの拾いやすい場所に飄々として立っていて
まったくあわてることなくのろのろと(とわたしには見える)車に乗り込んでくる。

「バス停の確認、土曜日にパパとやってなかったの?」
「ノン」
「あんだけ、頼んだのに!」

吐いてもしょうがないとわかっていても、我慢しきれずにぐちを吐きつつ車を走らせる母。
そんなこと今さら言われてもどうしようもないし、な態度の長男。











マセナ広場、と夫は言ったがそれはリセ・マセナ、の間違いだった。
長男のいうことを信じてリセ・マセナへ向かうと、バス230番がバス停に止まっているが見えた。

「あ、あった!230番。風、いい?じゃあ、がんばって。いい日を過ごしてね」
わたしはあせっていた。
なんたって研修の初日に遅刻させたくはない。

「オッケー」
クールにバスに乗り込む長男を見送って車を発進させる。

と!

また電話が鳴る。
すぐには取れなくて、車を路肩に止めて電話を見るとまたしても夫。

「チケット!普通のチケットじゃだめだって」
「……。?!?!だけど、運賃、いくら?」
「一ユーロ五十」
「十ユーロ、渡したよ、さっき」









朝、車の中で、何かあったらいけないから、と十ユーロ、長男に渡した。
長男は、そのことをすっかり忘れていて、普通のバスのチケットが使えないと言われて、バスを降りたらしい。

ふ、ふう……っ。








こんな風にどたばた劇からはじまった一週間も
いつもの一週間と同じようにあっという間に過ぎ去り、
研修を終えた長男の感想はといえば。

「コンピューター関係の仕事には就きたくない」。

これにはびっくりだったけど、でもコンピューターを仕事にしてほしくないと思っていたわたしにとったら
ものすごーく有意義なお試し研修だったなあと。

あ、そうそう、この企業内の共通語は英語だったらしい。
ニース(近郊)にもインターナショナルな場所はあるのだ。



























写真は今年の元旦、出かけた先のパン屋さんの店先で。このふっくらピザがおいしくて長男は二枚たいらげた。
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by kyotachan | 2015-01-28 04:59 | 文 化 教 育 | Comments(14)








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ここしばらく新作の発表のなかった我が家のソラ画伯。
今日は大作二点の同時発表とあいなりました。

向かって右手の作品は去年の初頭のもので
長らく我が家の玄関に飾ってあったのですが
なんと愚マネージャー(わたしです)のミスで
発表の機会を逃しておりました。

「ソラの頭の中」というタイトルでございます。

まあ、なんか、たいしたものは入ってないのね、
という感想は横に置いといて
色使いのすばらしさにはほれぼれといたします。









向かって左側の作品は昨年末に製作されたもので
タイトルは「自分」。

デフォルメすることがテーマだったようです。

デフォルメされてもちゃんとソラ自身に見えるあたり
さすが我が家の巨匠の技術が光ります。















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この二点、先物買いで、いかがでしょうか?ん?

気の長い投資をしてみるのも
人生に花を添える結果になるやもしれませんで。ほんまほんま。















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・これわたしなの。すごくヘンでしょう?

というソラちゃんのかわいさもおつけしておきます。


























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by kyotachan | 2015-01-26 01:47 | ソ ラ 画 伯 | Comments(6)








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昨日の夜、雨戸を閉めるときに目に入った月。
思わずカメラを手に取った。

真ん丸いお月さまはもちろん好きだけどほそーい月も好き。

「まゆ月っていうとよ、ほら、まゆんごと細かじゃろもん」
母の声が聞こえる。









この日の朝、後ろに何台か車が続いていたのに
その細い道路で路駐をした。

未だに路駐は苦手だから後ろに車のある時はそれだけであきらめる。
昨日は「あ、いけるな」と迷わなかった。

あわてずにゆっくりとウィンカーを出して後進した。
一度だけ切り替えして、車と車の間に愛車ルノーエスパスを滑り込ませる。

「イエス!」
思わずこころの中でガッツポーズ。










月曜日になるたびに思う。

金曜日まであと五日。
がんばれ、がんばれ。

週末が待ち遠しくてしょうがない。

あれ?時間が早く過ぎればいいと思ってる?

年末に「え、また年が明けるの?」て嘆かないようにしなくちゃ。
わたしは毎日、早く週末になりますように、と祈っているのだから。

それはつまり、早く年末になりますように、と祈っているのと同じことなのだから。

今年は五十三週。
そのうちの四週間が過ぎ去った。

年末まであと十一ヶ月と一週間。
言い換えれば今年も残すところわずか四十九週。

年末にあせるな。あせるなら今あせろ。自分。











積載量満杯の毎日。

頭にある予定事項、まったく進んでないけど、
おのれの時間の使い方の悪さにいらいらもするけど、
それでも今日、わたしはああ、しあわせ、と思う。
























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by kyotachan | 2015-01-24 04:57 | 日 常 空 間 | Comments(2)








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りんごがしわしわっとなって
だ~れも手を出さなくなったら。













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超カンタン・アップルパイ。

切ったりんごをバターとお砂糖でいためて、
それを市販のパイ生地に広げてオーブンで焼く。

ひたすらべろーん、とできるだけ大きく。















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こげたところがいちばんおいしい。





























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by kyotachan | 2015-01-14 03:40 | お い し い | Comments(11)

















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今年はパン屋さんで調達。















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切ってるとちゅうにフェーブ(そら豆)が。













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もうひとつのフェーブ(陶器の人形)もあった。















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なんだこれ?















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なーめーてーみーたーらー















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雪だるまだった。
















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シャンパンがよかったけどシードル。










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オーブンで軽くあたためたらおいしかった。一瞬で完食。
















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我が家の場合は三女が最初から「フェーブはわたしのー」と宣言。
もう誰からも文句も出ず平和。フェーブを何個も入れて作っていたのがなつかしい。




























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by kyotachan | 2015-01-11 06:32 | お い し い | Comments(0)

foi フォワ/ 信心




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・マミコ!レベッカが予約してきたわ。母親と一緒だって言ってた。
・オッケー。わかりました。

キャティに言われてマミコはいつも通りに返事をする。










マミコのアルバイト先はニースの北のほうにある小さなフレンチレストランだ。

パトロン(社長)のフィリップがひとりで仕入れ・仕込み・料理を仕切っていて店内の客席数は三十。
キャティはフィリップの奥さんで予約の受付とサービスを担当している。

地元の人たちに重宝されていて毎日通ってくる「引退組み(ざっと見て平均年齢八十歳)」がだいたい六人。
つまり一人暮らしのお年寄りたちが「食堂」よろしく毎日ここで昼食をとるべくやって来るのである。

そのほかの常連たちは近所の病院関係(医者・看護婦・事務員)、
大学関係者(教官・教授、等々)、
商店街のオーナーたちと近所に住む人たち。

ほとんど毎日、三十の席が常連客で埋まってしまう。
これはものすごいことだとマミコは思う。










レベッカ、というのは月に一度くらいにやってくる客だ。
夫のジャックと一緒の時もあれば、友人と一緒の時もある。

ユダヤ人、というかユダヤ教信者、と言ったほうがいいかもしれない、であるがために肉類はいっさい食べない。
それはもう、いっさい、がっさい、肉類には手をつけない。

レベッカもジャックも大柄でがっちりしている体格だから
事情を知らないうちはマミコにとってそれはなんていうか、なぞだった。
肉を食べずにまあ、よくもここまで育ったものだわね、と思っていたのだ。

事実はそうではなかった。

ユダヤ教信者たちは casher (kascher) カッシェー の印のある肉屋で調達した肉しか口にしない。
マミコは何度も説明を受けてもぼんやりとしか理解できないのだが、
つまり彼らはユダヤ教の儀式にしたがってと殺して血を抜いた肉だけが清浄であると信じているらしい。









まったく同じことがイスラム教信者の人たちにもある。
いや、マミコにとってはまったく同じことなだけであって、それはまったく違った方法なのだろうが
こちらは halal アラール 印のある肉屋で肉を調達するらしい。

よく知られたことだと思うがイスラム教信者の人たちは豚肉を食べない。
マミコの働くレストランにイスラム教信者の人が来るとけっこう面倒なことが多い。

きっぱりと肉類をあきらめて魚料理だけを食べる、という人はいい。
しかしたとえばキッシュ類の中に豚肉が使われていないかどうかを確認する人がいる。

入っていませんよ、と答えてもしくこく何度も確認してきてうんざりしてしまう。

そんな時にはこころの中では叫んでいる。
「そんなに疑うなら自分家で食えー!」










その日のお昼、レベッカはパリ在住だという母親をともなってやって来た。
そしてレベッカはいつもの魚料理、母親の方は肉料理だった。

え?

マミコはちょっととまどった。
だってさ、レベッカがユダヤ人なら母親も当然そうなのでしょ?

すかさずキャティに小声で聞いてみる。

キャティとパトロンのフィリップは在日十五年という輝かしい経歴がある。
フィリップが東京日比谷にあるホテルのフレンチレストラン開業に携わるために日本へ招へいされたらしい。

ふたりが日本に滞在した時代は七十年から八十年にまたがっていてまさに日本はバブル景気のど真ん中。
滞在中は思う存分旅行にも出かけていい思い出をたくさん持ちかえったらしい。

ふたり息子はどちらも日本生まれで家族そろって親日家だ。

マミコにとって好都合なのは、ふたりとも日本人にはなじみのない習慣を心得てくれていることだ。
おかげでマミコがどんな質問をながけかても、嫌な顔ひとつせずにわかりやすく説明してくれる。

・レベッカのママ、お肉食べてる。どうして?レベッカがユダヤ人なら当然母親だってそうなんでしょう?

・……、ユダヤ人の中でもきびしい人とゆるやかな人がいるのよ。たぶんレベッカの家はゆるやかな家族だったんじゃない?そしてジャックがきびしい家庭の人で、だからレベッカは結婚後はきびしい夫にあわせているんだと思う。

・へえ……。










信心、ということを思う。
ユダヤ教信者にしろイスラム教信者にしろ、彼らには信心というものがあるのだなあと。

ユダヤ教信者の、一生、casher カッシェール の肉しか口にしないという信心。
イスラム教信者の、一生、豚肉を口にしない、そして halal アラールの肉しか食べないという信心。

彼らがそうまでして信じている「何か」を否定するつもりは毛頭ない。
と同時にそれを理解したいともまた思わない。

そういう生き方もあるんだなあと思う。
へえ。なんか、たいへんそうだなあと。

何かを犠牲にしてまで信じたいものって一体なんなのだろう?
これって信心、というよりもしかして盲信?












毎朝の仕込みはパトロンのフィリップとマミコが向かい合ってする。

フィリップがラジオのチャンネルをかえながら言う。
・テロリストのやつらが人質をつかまえてたてこもっているんだよ。

マミコは手が止まらないように注意しながら答える。
・ああ、そうなんですか?十八歳の子が自首したみたいな記事は読みましたけど。

・ああ、あいつは関係ない。三十代の兄弟だよ。知ってる?ジュリアンとアルノーだって。
・え!そうなんえですか?
・それも生まれた年までぴったし同じ。
・……、あ、へえ……。

フィリップには日本生まれの息子がふたりいる。
長男のジュリアンはイギリスで、次男アルノーはマーシャル諸島で働いている。

・イスラム教信者の人たちがいちばん気の毒ですよね。

・まったくその通りだね。イスラム教信者のおえらさん方はみんな、シャーリーを指示するって宣言しまくってる。あのきょうだいは宗教や種族とはまったく関係のない、ただの暴徒だってね。

・ボンジュール、マミコー!
・ボンジュール、キャティー!

キャティが出勤してきた。

・ラジオで人質を取ってたてこもっている、て言ってたけど?

・こっちでも聞いたよ。

・警察はちゃんと生きたまま逮捕してくれるんでしょうね?

・けっ。ばか言っちゃいけないよ。チャンスがあれば警察はすぐに殺してしまうさ。

・だけどほら、事情聴取、ていうかさ。

・ばかな!狂人に事情なんか聞けるかね。あいつらはカミカゼだよ。とっくに死ぬつもりなんだ。警察だってこれ以上犠牲者を出さないことしか頭にないよ。

・ああ、カミカゼ……。そうですね。あの人たち、カミカゼだ。

・だろう?……ヒロヒトって、でもひどいよね。自分のために死んでくれって日本人に言ったわけでしょ?

・ああ、はあ(たぶん軍部に言わされた、てことなんだろうけど)。

・インテリの日本人がカミカゼをやったなんて、ぼくには信じられないよ。

・ああ、ええ、まあ、天皇を神さま、て信じてた、んですよねえわたしたちは。そいでもって、敗戦後、天皇が「実はぼくは神さまじゃなかった」て宣言した。

その時代、日本国は神道、という宗教をでっちあげて、日本国国民を戦争にまい進させていた。
この時、日本人には信心があったといえるのだろうか。

ただの盲信ではなかったのか。
哲学のない信心はひとを簡単に狂人にする。

鬼畜米英。

マミコの母親は、敗戦後にはじめてアメリカ人を見て、それが人間で、びっくりしたと言う。
鬼、だと信じていたのだと。そう教えられていたのだと。

・わたしたちはインテリなんかじゃないですよ。思想を忘れた民族です。天皇を神だと信じるってことの中に哲学が抜けている。

・ははは。その通りだ。

・でも日本では戦争中、ホンモノのインテリたちは牢屋に入っていたんです。

・そりゃそうだ。ドイツだって同じだよ。ナチスに反対した人たちはみんな牢屋に入ってた。どこも構図は同じだよ。 










二十世紀から二十一世紀に時代が変わったとき、
マミコの胸は熱い思いでいっぱいだった。

これで戦争の世紀はおしまい。
二十一世紀は平和の世紀にする。

なんと自分の思いがごう慢で浅はかで幼稚だったのかと思う。
新世紀初年から戦争はまだ終わっていなかったことを見せつけられた。

戦争が平和への道だという二十世紀最大の幻想がいまも生き続けている。
戦争をする人たちはおそらく、自分の正義を証明するためにそうしているはず。

二十一世紀に入って早十五年。
たった今、この時間に、この国フランスにカミカゼがいた、ということにがく然とする。

他人を殺しても、自分を殺しても、そこから平和へ続く道はない。

マミコはよく思う。
わたしたちは隣人たちをひとり残らず愛することはできない。
好きになる必要などないのだ。ただ認めるだけでいい。

信心のある人がいて、盲信のある人がいて、どちらもない人がいる。
どれもこれも人であることには何の変わりもない。

単純で簡単なことなのに、とマミコは思う。
単純で簡単なことだからこそ難しいのかな、とも思う。


























あくまでもマミコ。フィクションですフィクション。
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by kyotachan | 2015-01-11 06:29 | なげーやつ | Comments(6)











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フランス人の夫と暮らし始めて来年で二十年。
ふたりで日本にいたころからお正月に関してはすでにちぐはぐだった。

フランスにはお正月はない、とはわかってはいても
クリスマスが終わってからもクリスマスモードをずるずると引きずるこの感じはどうにかならんものか。
ニースへ来て数年間は、年末のこのだらしなさ感に、なんとなくいらいらさえしていた。

普通の商店街のお店ではたいてい、クリスマス用の飾りつけを一月一杯まで放っておく。
個人の家にぶら下がってるサンタクロースなんて、夏ごろまで放っておかれている人もいる。

日本のように、
二十五日まではクリスマス一色のデパートのショーウィンドーが
二十六になったとたんにお正月仕様に入れ替わるように、

しゃきっと切り替えができんのか?おい!おめーらは!という心境。

しかしそんないらいらも十年も住めばなんとなく薄められていく。
今年はわたしの中でもお正月ははっきりいってまったく存在していなかった。

元旦は朝から六人で遠出。
ローカルなパン屋さん(フランスのパン屋さんはすごい。元旦でも開いている)でピザを食べた。

ものすごーくおいしいピザだった。
生地は厚めなのだけど、もちもちしていて。

そして帰りが遅くなって、わたしは夕飯の準備をまぬがれたいなあと車の中ではそればかりを考えていた。
そして、マクドナルドに寄ることをおそるおそる提案すると、五人からあっさり承認されてしまった。

ち。もー。なーにやってんのよー。
正月からピザとマクドかよ。

こころのなかで自分を毒づく、日本人ここにひとり。
ほかの五人はそんなこと、思いもしなかったと思う。
なんたって元旦は普通の祝日と同じ扱いなんだもの。

郷に入っては郷にしたがえ。
言われるまでもなく、いつの間にかしたがっているわたし。

住む場所の文化に抗うのってものすごーくエネルギーがいるのだ。
わたしには、もう、それに使うエネルギーは、ない。ほとんど、ない。



















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クリスマス・ツリーも、最初の頃は、二十六日には撤去してもらっていた。
今は、クリスマス休暇の間は居間にでん、と居座っている。

今日の午後、次女に手伝ってもらって飾りをはずした。
今年のクリスマスにまたお会いしましょう。

ツリー本体はほかのごみと一緒に出しておけば
毎晩通るお掃除カーが撤去して行く。




















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これをくれた人は、幸運を運んでくる木だよ、と言った。
2015年が、幸運にあふれた一年になりますように。

文化は違っても年のはじめにその年がいい年になりますように
と何かに祈りたくなるのは世界共通の気持ちなのかもしれない。

Bonne Année ボナネー/ いい一年になりますように




























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by kyotachan | 2015-01-05 00:20 | 六 人 家 族 | Comments(7)

第八回ひのえうまの会



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……、とうとうむかえてしまいました。
新年を。うま年ではない、ひつじ年を。

数分前までは年女だったわたしが、今はもう、ふつうの女。
ちぇ。年女のうちに奇跡を起こす予定だったのに。 >!

一月一日は知らずと知れた、基、知っている人だけは知っている、
ひのえうまの会の日。

この会もいつの間にかもう八回目。
八の字のごとくこの先も末々に、広がりますように。











去年はうま年で、わたしはひそかーに力んでいた。

今年はわたしは年女である。
だからして、ぜったいにいい年にせねばならぬ。みたいな?

ひそかに力むって、けっこー疲れるものなのね。
なんだか力んだ分だけ最初っから疲れてしまって、ブログの更新も怠りがちだった。

わたしの場合、他ブロガーさんのブログ更新が怠ると
「ああ、きっと実生活が充実してるんだろうなあ。ブログなんかにはかまってはいられないほど」
と思ってうらやましくなったりするものだけどわたしの場合は逆だった。

「ブログ?ああ、なんか、あったよね、そんなやつ。だけどさー、今日はなんだか疲れたから明日に備えてでれでれしよーっと。だって今年は年女だもの。絶対にいい年にしなくちゃいけないの。だから今日だけ今日だけ~でれでれでれでれ~」
な毎日になってしまっていた。
こんな時って一年が一日一日の積み重ねということは棚の上のほう~へ放り投げてしまってまるで見えない。

力むと、それもひそかに力むと、ろくなことがない。
ということを去年、一年かけて習得したわたし。

さあ。
ことしはけして力むことなく、熱くなるわ。

この熱い思いが一年、続けばいいが。
羊のあのもくもくした毛、が、煙にも見えなくはない。

羊→煙→熱い。

……、なんか今年もつまらないことをひとつだけ習得する一年になりそうで今からこわい。










今年は大収穫の年。
なんと、五人もの新・会員さんが!

八年目にして五人増える、て、ものすごーいことだと思うがどうか。
実はおひとり様、去年入会してもらうつもりが、力みすぎているわたしが失念していたの。

ごめんねごめんねごめんねー。
力むとほんと、ろくなことがないわ。

今年は大丈夫よ。
力んでないもの。熱くなってるだけ。

さあ、そこのあなた!
熱い厚い暑い篤いアツイひのえうまの会にぜひご入会を!

あ!わたし、入会するーって、ばかきょうたに伝えたのに、リストに入ってないー!ばかばかばかばかばかー!
という方、今すぐにご一報を。
きょうたはばかなんです。すぐに忘れてしまうんです。何度も言ってくれないと覚えられないんです。
おねがいよー!



《2015年・新会員さん》


37. 40 ans à Paris § 40からのパリ のラパンさん。
パリ在住日本人の中でもっとも美しい人の中のひとり。>会ったことないけど絶対に美しいはず。すてきなお店でフランス人相手においしいチョコレートを売りまくっているスペシャリスト。フランス語で小説を読む。フランス語で映画を見る。かと思うと日本の古典に思うところあったりする。美しいだけではなく、なかなかのインテリなのである。


38. dorami さん
神戸在住のフランスをこよなく愛するマダム。渡仏経験が豊富で今もネットで TF 1 のニュースを見るほどフランス語の上達には余念がない。今年定年するご主人に世界一周のクルーザー旅行に誘われてそれをきっぱりとお断り。「そのお金でコートダジュールに語学入学させて~」と訴えたらしい。すごい。わたしなら絶対にクルーザー!!!


39. イタリアの生活(地味め)の和田忍さん。
プロのイラストレーターさん。イタリアマダムをこよなく愛する。ふたりの天使のままでもある。死をこわがる息子に「おまえは死なないから」と言い切る、いい加減な子育てをのびのびとやっておられる。わたしもいい加減だけどしのわだには負けるな。だっておいら、人間だもん。おいらの子どもたちも人間だもん。死ぬでしょやっぱり。とびきり若い会員さんだから会開催の折には思いっきり走り回ってもらいます。ははっ。


40. 奈良在住 naratoko さん
わたしは本が好きで、読書が好きで、それを恥ずかしげもなく口外しているわけだけれども。いやもうすみませんごめんなさい許してください。naratoko さんのブログを前にすると自称「読書家」のわたしがいかにまがいものかを思い知るのです。これほどまでに、一冊の本の前で真摯な態度を取る人をわたしはほかには知りません。「真の読書家」さんです。


41. 粉と卵とボク のピロコ先生
この会はじまって以来、ニースまではるばる、入会の申し込みに来てくださった奇特な方がこのピロコ先生であります。ご存知、粉の神。あ、女神、か?粉さえあればねえ、あーた。何でもできるのよ。いちごのショートケーキ?ガトーショコラ?ドーナツ?ベーグル?たこ焼き?バゲットにパン・カンバーニュにチョココルネ?アメリカンドックにそれからそれから……。ああもう、今すぐ、オレんちに来てくれー!



ご入会、たいへんにありがとうございます!
こんなすてきな方々に仲間になっていただいてきょうた、感無量。










めざすは会員百人! >よおっ!

百人まであとわずか五十九人。

あと十二年で五十九人。

てことは一年に約五人ずつ!

よっしゃー!やったるでー!

みんなー!集まっておいでー!





入会希望者随時募集中!





2026年、ニースに全員集合!
















<過去の会はこちら>
◎第一回
◎第二回
◎第三回
◎第四回
◎第五回
◎第六回
◎第七回












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by kyotachan | 2015-01-01 00:09 | ひのえうまの会 | Comments(9)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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