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ニース在住のヴェトナム人がいった。

・ヴェトナムでは結婚すると夫を「兄」、妻を「妹」と呼びあうのだよ。

これは前世から縁のあるふたりが今世でも出会った、という思想に基づくらしい。

ちょっと違和感があるのは、姉さん女房でも常に夫が兄で妻が妹と呼ばれらしいということ。
ホンモノのきょうだいと夫婦間のきょうだいと、子どもたちは混乱しないのか、という質問には、
それが不思議と混乱はないのだよと彼はいった。

そして彼は続けた。

・ヴェトナムでは感じる、ことが大切で、ことばにして伝えることはあまり重要ではない。

つまりフランス語では常に je t'aime シュテーム/ 愛している というが、
ヴェトナム語ではそれを言い合うことをしないと。
お互いに感じていればいいのだ、と。

夫も同席していたので、わたしは夫にじっとりとした視線を送ったが、
夫の方はわたしを見るでもなく知らんふりをしている。

わたしはいつも夫に責められているのだ。
キミは気持ちを外に表すことがないね、と。

わたしは百万のみかたをえた気持ちになり、
そら見たことかと思っていた。

夫ではない、フランス人がいった。

・わたしたちだって、感じるわよね。

そして夫が付け加えた。

・そうそう。感じるさ。そして、確認するのさ。

そこで満場爆笑となった。










わたしはもともとひとりがいちばんという女だった。
デートをどんなに楽しんでもひとりアパートに帰ってタバコを吸う時間がいちばんいいとも思っていた。

そんな女がひとりの男と出会って結婚した。
それもフランス人という、育った環境も文化も全く違う人と出会い、
それ以来十五年以上一緒に生活している。

わたしにはこれは偉大なる奇跡とも幸運とも思える出来事だ、
と最近になってしみじみ思う。

わたしはずいぶんと夫にフランス式の生き方を教えられ、
それを強要されたような気がしているけれども、
夫のほうもわたしにずいぶんと日本式の生き方を押し付けられているのだろうなと思う。

わたしはこれだけ努力してわたしはこれだけ我慢しているのに、
とぐちをこぼしたくなるときは、
相手はそれ以上に努力し、またわたしに対して我慢してくれていると思ったほうがいい。









感じたら、ことばで確認してやろう。
そう思った自分にひとりで笑った。








































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by kyotachan | 2012-02-20 01:42 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(11)






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ça va mon petit coeur ? サヴァモンプチクーゥ

長女が三女に話しかけているのが耳に入ってちょっとびっくりする。

mon petit coeur (わたしのちっちゃなこころちゃん)、だって!

日本語に訳してしまうとなんだか仰々しくなるのだけど、
「わたしのちっちゃなこころちゃん」とはフランス語でいうところの、親しい相手に対する呼称のひとつ。

わたしのこころちゃん、
わたしのキャベツちゃん(これはキャベツ chou シュゥ という音がいかにもそれ向け)、
わたしの宝石ちゃん、
わたしの宝物ちゃん、
わたしの……
わたしの……

おそらくは百万ともあるだろう。

その大げさな表現に反して、それらの意味するところは「ねえ」、くらいかなあと思っているのだけど。

夫はこの手のことばを使わないし、もちろんわたしも使ったことがない。

それなのにわたしたちの子どもがその手の表現を堂々と使っているとは!

子どもたちは親だけを見て育つわけではないのだ。
当然といえば当然のことかもしれない。

長女のことが妙にたのもしく、まぶしく見えるのってこれ、
わたしが完全に親ばかな母親だからなのだろうか。

それ以来、わたしも何かにつけて子どもたちに使っている。

bonjour mon petit coeur ! ボンジューモンプチクーゥ/ おはよう、わたしのこころちゃん!

いまさらながら、子どもたちに教わることはおそろしいほどたくさんある。




































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by kyotachan | 2012-02-19 01:42 | 六 人 家 族 | Comments(3)









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昨日は街中を歩いていて、
花束を持っている男性を何人も見かけた。

たいていは赤いバラ一本、のようだった。

今日、花屋で働く友人に会ったのでそういうと、
昨日はお店の前に行列ができるほど盛況だったらしい。

バレンタインデーに限らず、ニースで花束を持っているのは
女性よりだんぜん男性のほうが多い。

わたしの夫も男性のはずなのだけど、
とうとうわたしのところには花束は届かなかった。

でもわたしには夫を責める資格はないのだ。
一度か二度、花をもらって全くよろこばなかったのはわたしなのだから。

花よりだんごを貫いて生きてきた。
本音をいえば、いまもそうには違いないのだけど、
花をもらう、て、いいなあ、
花束を持って歩いている男性を見てそう思った。









昨日はニース中のよさげなレストランが予約で満杯だったらしいと聞くと、
バレンタインデーは大人たちが愛を確認しあうための日なのだろうなと思う。










子どもたちはといえば、
バレンタインのバの字も口にしなかった。

ただ、次女が同級生の男の子にキーホールだーをもらってきた。

あ!
やっぱりこの日は男性から女性に気持ちを伝える日なのだよここでは!




































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by kyotachan | 2012-02-16 04:00 | 喜 怒 哀 楽 | Comments(3)








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日曜日午後三時すぎ、次女がいう。

・ママ、外出したい。
・いいねいいねえ。しようしよう。さあて。どこへ行こうか。

最近はもう、だれも「お外お外」というものはいなくなり、
わたしは誰かが外出したいというのを待つばかりとなった。

寒くたってちょっとだけ外の空気をすいたい。
そう思うのはわたしがいなかっぺのせいなのだろうか?

辿りついたのは公園ではなくてビーチ。
次女だけだと思ったら長男もついてきた。

ふたりの目的はずばり。
ビーチでポテトチップスを食べること。

ふ…。

ま、それでもいっか!

冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだら気分も爽快だ。

後ろに見えるのはこちらでよく見かける釣りスタイル。
待ち受けるのはたいていひとり。

どのさおもいっせいに引き始めたらどうするのだろうか?



















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・ママ、まだ?もう帰ろうよう。

……はっ!
またしても子どもたちに帰りをうながされてしまった。

知らぬ間に小石拾いに夢中になる母。

わたしってなんでこう石が好きなのだろう?
拾っているだけで楽しくってしょうがない。
















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もうすぐカーニバル。

毎年思うのだけど、この絵。
もうちょっとどうにかならんのかな……。

ふたりが見ているのはマイケル・ジャクソン。
ではもちろんなくて、マイケル・ジャクソン風の大道ダンサー。






































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by kyotachan | 2012-02-13 03:54 | 日 常 空 間 | Comments(10)








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寒いんである。
まさかまさかの寒波なのである。

金曜日の夕方、三女の手を見てぎょっとした。

これはもう完璧なしもやけやないけー!

わたしが小さいときは、こんな手の子どもたちでいっぱいだった。
かくいうわたしも、冬はしもやけで、いつも手が痛がゆかった。

だけどここニースでしもやけになるなんて!
お母さん、かなりショックだったわ。

わたしは寒いのは苦手なのだけど
この寒波のせいで今年はまだ花粉症症状が出ていない。

いつもは一月末あたりからくしゃんくしゃんとはじまって
今頃は薬なしには生活できないほどなのに。

いいこともあるのだ。

願わくばこの寒波がもう少し続き、
春を飛び越えていきなり夏になってくれればいいのだけど。

そんなことはないだろうな。……たぶん。


































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by kyotachan | 2012-02-11 22:32 | 六 人 家 族 | Comments(7)







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・sora chaaaan ! そらちゃ~ん!
・oui maman, j'arrive ! はーい!いまいくー!

呼ぶと返事が返ってくる。
それだけで母はうれしい。















わたしが台所にいると長男が入ってくる。

・maman calin..... ママ、ぎゅ~。

背中からわたしに抱きつく長男。
わたしは長男の手をわたしの胸に持ってくる。

・mais kazé ! ne touche pas mes tétés ! ちょっとカゼ!わたしのおっぱいさわらないでよ!
・c'est toi, maman ! ママが自分でやってるんじゃない!















長女がぴったりとしたTシャツを着ている。
その胸のでかさに一瞬、ぎょっとする。

わたしの子どもだからぺちゃぱいに決まっている。
それは、とんでもない勘違いだったらしい。

両親ともに黒い髪なのに
子どもは金髪、ということもあるのだ。

人は何世代くらいまでさかのぼって遺伝を受けるのだろう?
こんなにデカパイだったのはわたしのおばあちゃんなのだろうか。
それとも夫のひいおばあちゃんだったのだろうか。

思わず言ってしまう。

・t'as des tétés grands, ma fille ! わたしの娘なのにおっぱいでかいじゃん!
・tais-toi maman ! ママ、うるさい!

となりにいた夫がうれしそうにいう。

・celles de maman sont raisans.... ママのはただのぶどうだもんね…。














下ふたりを公園へ連れて行く途中、
次女がわたしの手をぎゅうと握る。

三女はわたしたちの前を、
スキップしながら飛ぶように歩いている。

寒いのだけど、太陽の光がまぶしい。

子どもたちと公園に行くことを
うれしいと思っているらしい自分にちょっと驚く。















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子どもたちがかわいくてかわいくて仕方がない。

こんなに子どもたちがかわいいと思うなんて、
わたしはちょっとヘンなのじゃないかと思うくらい。

長女の身長がわたしを越えて162 cm になった。
いや、この数字ももう二週間も前のことだから、今はもっと伸びたかもしれない。













子どもたちの成長が日を増して加速していると思われてならない。
そう思うにつれて、子どもたちにしてやれることなどほんとうにささいなことしかないのだなあと思うようになった。

子どもたちはもう、自分の人生を生きている。
わたしはその人生のほんのちょっとの間、一緒にいてあげることしかできない。

この先、子どもたちがどんな人生を歩もうとも
わたしはそれをただ見ていることしかできない。

わたしはもうほんとうに、ただただ、
彼らの人生が、それほど運の悪い人生ではありませんように。
自分の生きたい人生を生きたいように生きていってくれますように。
そう祈ることしかできない。

わたしはここにある確かな四つの人生に
少しだけ関われたことを心から感謝しよう。

なーんちゃって。

憎らしくって腹が立つことも多いんだけどね。
でもかわいいんだなあ……。






























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by kyotachan | 2012-02-05 01:17 | 六 人 家 族 | Comments(15)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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