41いちねんになりますように


< また寄り道?>
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わたしが八 九才。 ということは長兄が十四 五才の頃。 その兄が母親に言った。
「うちってさあ、ある意味貧しかっちゃんね。 文化的なことにさ、まったく金使わんやろ。」
母親の感心したような、そして困ったような顔。 
小学校三年生くらいだったわたしには、『文化的』 ということばが印象的で、今もこうして覚えている。  
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わたしが、十一、二才。 母親がふと思いついたように、
「あ、あれ? あんたさ、昨日、誕生日やった?」
家族のだれひとりとしてわたしの誕生日を覚えていてはくれなかった。 わたしも意地になって、自分から言い出すものか、と思っていた。 毎年誕生日を祝うことはなくても、「 kyotachan、今日から十一才ね」、くらいのことばはかけてもらっていたのだろう。 しかしその年はそれもなかった。 わたしはわたしで、誕生日なんか、というひねた感情もあった。
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中学生の時だった。 友人がぽつんとつぶやいた。
「あーあ。 最近はつまらんねー。 クリスマスになっても、枕元にプレゼントが置いてあることもなくなったし。」
わたしはこのセリフに異常に興奮した。
「えっ?! てことはさ、小さい時には、あったわけ? 枕元にプレゼント?」
「あったあったー。 だって、クリスマス、やろ? サンタさん、来るやろ?」
「・・・・・・。 わたし、一回もなか。 クリスマスに起きて、枕元にプレゼントの置いてあったこと。 サンタさん? 家では聞いたこともなか。」
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確かにわたしが育った家には絵画の一枚もなく、音楽を家族で鑑賞するということもなかった。 家族の誰かが誕生日を迎えるからといってそれをお祝いをしたことなど一度もないし、クリスマスを祝ったこともない。 家族旅行の思い出ひとつさえない。 たった一つのお祝い事と言えば、お正月だけだった。 長兄はおそらく、級友たちとの会話の中で、自分の家はそういった行事に関してそうとう貧しい家庭だということに気がついたのだろう。 そしてそれを、『文化的』 と呼んだのだろう。
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わたしはそれを特別、不幸なことだと思ったこともなければ、それはそれでよし、とするところが子ども心にもあった。 父親は土日どころか、夜中にも救急車に起こされるのが日常だったし、母親は母親で看護婦、主婦、妻、三人の子どものお母さん。 座れば居眠り、が当たり前の毎日だった。 『文化的』 などという流暢なものではなく、ほんとうの 『貧しい時代』 を生き抜いてきた両親にしてみれば、今日もこうして健康で働くことができ、子どもたちがみな元気で学校に通っていること以外に、重要性をおくことがらは、何もなかったのかもしれない。 わたしがいくら、「ほかのお家ではこんなことをしているらしい」 と不満気につぶやいてみせても、両親の態度は決して感化されることはなかった。 今となってはそれこそが、両親の生きざまであって、そのように育ててもらったことに感謝する気持ちしかない。
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ある日、母親が授業参観に珍しく来てくれたと思えば、壁にかけてある給食用エプロンの入った巾着袋をクッションにして立ったまま寝ていた。 座れば居眠り、どころか、その機会さえあれば、どこでも眠ってしまう母親だった。 授業参観の後にある保護者懇談会をのぞいた友人が、
「ひとりだけ先生の話に、熱心にあいづちばうちよらすお母さんのおらしてさあ、うわーよう熱心に聞きよんさんねー誰じゃろか、て見たら、kyotachan のおかあさんやったよ。 でもよーく見たら、熱心に聞きよんさっとじゃなくて、船ばこぎよらしたとよー。 きゃーははははは!」
友人に笑われても、それを誇らしさえ思う、なにかがあった。 家はこうなのよ、これがわたしの家なのよ、だからどうした? みたいな。
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自分がおかあさんになって、子どもの誕生日を祝ったり、夫の誕生日を祝ったりする立場になった。 お祝いしながら、わたしにはおそらく、祝ってあげる余裕があるのだな、と思う。 子どもたちに、なにも買ってあげることができなかった誕生日もある。 それでも、「たんじょうびおめでとう。 またひとつ、大きくなったね。 うれしいね。」 と言うことはできた。 わたしの父親と母親には余裕がなかったのだ。 時代の余裕ということもあるだろうし、精神的な余裕ということもあるだろう。 父親と母親の頭の中には、誕生日を祝うことよりももっと優先させるべきことが山積していたのだ。 わたしには想像もつかないようなことが。 
わたしこそが、おとうさん、おかあさん、今日は誕生日だね、生んでくれてどうもありがとう、と言ってあげればよかたのだ、などということに今さらながら気づく。
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私はいま、毎年当然のように誕生日を祝ってもらっている。 家族旅行も、数え切れないほど行った。 なんてしあわせなんだろう。 伝書鳩に手紙をくくりつけて、上の方にいる両親に、伝えてきてもらいたい。
「おとうさん、おかあさん、kyotachan はとてもしあわせです。 わたしのこの命をどうもありがとう。」
迷われて、迷われて、生まれてくるかどうかわからなかったこの命。 その不思議さをいつも思う。
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誕生日当日は日曜日で、家族でニース近郊の村へ行った。 Tourrettes sur Loup (トゥレット スル ル)。 とてもかわいらしい。
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『 Grand mère (グラン メール = おばあちゃん)』 というレストランがあって、ドアの横に、『 Grand mère se repose le mercredi toute la journée et le samdie midi (グラン メール ス ルポーズ ル メルクルディ トゥット ラ ジュルネ エ ル サムディ ミディ = おばあちゃんは、水曜日は一日中、土曜日のお昼はお休みしています)』。
ほんとうにその日は、ビーチでのんびりしているんだろうなあと思わせられる、この村ののどかさが心地いい。
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この村に行った理由は、お祈りの仲間、というより大先輩、アニーが水彩画の個展を開いていたから。 十年前、小学校の先生を定年退職後に始めたという水彩画。 やわらかで、やさしさに満ちている。 
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『 la Corse (ラ コルス = コルシカ島 )』 という絵を買ってもらった。 我が家一枚目の絵。
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もう一枚。 お孫さんが小さかった頃の写真を見て描いたという。 ひとめぼれ。 三女かと思った。
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41いちねんになりますように。
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Commented by raizo at 2007-08-01 21:44 x
わ、わたしも! この絵を見て 三女 だと思った!(裸んぼ?だし!笑)
♪♪ジョワイユ アニヴェルセール♪♪
お互い、よか年にしよーや
Commented by gudigudi at 2007-08-01 22:14
いや〜 今朝 か昨日の朝か どっちやったか忘れたっちゃけど ウチのドア開けて外に出た瞬間に 「あれ、そういえば誕生日やったな」と思ったのよ。いやいや これ ホント。どっちにしても 遅かったけど で その後 また忘れとったとけどさ。
41としね。なるほど 良いゴロ です。おめでとう。
Commented by bebecat at 2007-08-02 00:23
ねえ、誕生日だったん?
いつ?29日?
それでこの前私に誕生日のこと聞いたの?
そっかあ、7月生まれなのね。
私より2ヶ月位姉御だね。

よいとしになるといいね。もっともっと、毎年毎年。
お父さん、お母さん、笑ってるよ上からきっと。だってさ、
全然心配いらないじゃん、Kyotachan、素敵な家族に囲まれてるもん。だんなさんの笑顔見たらわかるよね。
Commented by peixe at 2007-08-02 09:56
お誕生日おめでとうね。41としになりますように^^
私よりひとつ下ね。段々無理の利かない所に突入し出してるのかな
体は大切にそして貪欲に毎日を楽しもう!(笑)
Commented by Nee at 2007-08-02 11:09 x
Bon Anniversaire ! そして初めまして。
ちょっと前からお邪魔しています。
最近のブログの海のきれいさに感動して、いつも幸せな気持ちになっていました。
ありがとうございます!
今回のブログには、涙が出るほど感動したので、コメントを。と思い。
私は数ヶ月前から実家を離れて一人暮らしをしていますが、そうしてようやく両親、家族に感謝の気持ちが湧いています。
そうでもないとわからなかったのかな、と思う残念な気持ちもありますが、今回改めて、
ああ、生んでもらったこと自体が幸せなんだ、と思いました。
Merci beaucoup♪
これからも読ませていただきますね!
長崎弁?佐世保弁? も、とっても良いですね!
私は長崎在住なので^^勝手ながら親近感を覚えてます。
ではまた!
Commented by petitcoco611 at 2007-08-03 12:04
いいねぇ~。
お誕生日に自分から生んでくれてありがとう!って。
そうだよね、お母さんもがんばった1日なんだもんね。
ステキだね~。
お誕生日いつだったんです?おめでとーこざいます。
41どころかすばらいい一年になりますように!!
それからこの町カワイイ♪
Commented by kyotachan at 2007-08-03 17:37
raizo さま
どうも ありがとう 一足おくれて 仲間入りですわ
そうなんよー 三女 脱ぎ魔 ? なんよねー 
水飲んでさ Tシャツに ちょろ て こぼれるやん ?
あ ぬれたー とかって すぐ ぬぎよる
それも 外でも おかまいなし なんよー 
いつかなんか 外出先で パンツ はいとらんことに気がついた 
しょーなかけん 知らーんふり しとったけどね
で お互い 41としにね
Commented by kyotachan at 2007-08-03 17:42
gudigudi さま
「あのー ぐでさんが なんか 荷物 持ってってもらいたいらしい て ちゃーこがゆってたんですけどねー でんわ なかったんですよねー ぐでさんから」
「 ・・・・。 くで ? ぐで ? ぐで ?」
あんたねー 誕生日は わすれてもよかけど 持って来てもらう荷物 忘れるとは なんやねん!
なんやったん? 中華三昧? マルタイラーメン? ふりかけ? そーめん? 宮本輝? (←て ここでそれとなく注文しよっさ)
それにしてもさー あんた ぐでさん て 呼ばれよるわけー? だいのことかわからんやったよ わたしもこれから ぐでさんて呼ばんばねー ぷ
Commented by kyotachan at 2007-08-03 17:46
bebecat さま
そうなのよー ちょうど わたしの誕生日くらいにさ bebecat さんとこで シンクロのすてきな写真が載ってたからさ あれー もしかして 誕生日も一緒なのかしら て ひそかに 期待していたわけなのよー
十月か ふむふむ まあ いもうと の方が あねより しっかりしてる てのは よくあるパターンだから ね ぷぷぷ
ねー お互いに すてきな 五十代 めざそうねー
Commented by kyotachan at 2007-08-03 17:51
peixe さま
どうもありがとうございます
『だんだん 無理の利かないところ に突入』 
ほんま おっしゃる通りですわー
夏場なんてさ 毎晩 ビール二リットル 飲んでたのが うそみたい (←おまえ どんなやつねん!)
まあねー こうやって すこしずつ おとなになりつつ カラダちゃんを いたわりつつ peixe さんの おっしゃるとおり 貪欲に毎日 楽しんで まいりますわー 
Commented by kyotachan at 2007-08-03 18:01
Nee さま
ようこそいらっしゃいました はじめまして コメントありがとうございます
こんな ひとりよがりで つたない 文章に 感動してくださって そしてそれをこうして伝えてくださって わたしこそ 感動しています とてもうれしいです
家族の愛 て あまりにも当たり前すぎて 気がつかないことが多いですよね Nee さんには 帰っていける実家があるんですもの これからいくらだって 「ありがとう」 を言うことができるじゃないですかー いいなあ うらやましいですー
フランス語ができて 長崎にお住まい? うーむ ご縁を感じますわー またいらしてくださいねー
Commented by kyotachan at 2007-08-03 18:06
petitcoco611 さま
どうもありがとう 誕生日はねー 七月二十九日だよ ひのえうま で しし座 どう? こわいでしょ
この村かわいいでしょ lulu の実家はどこだっけ パリの方だったっけ フランスってさ ちょっと 田舎に行くと かわいらしい 村 たくさん あると思わない ? そして それぞれが ちがっていて ひとつひとつ かわいいの ニッポン て どこに行っても似ているような 気がする
ほんとだねー 41 より もっと いい すばらしい 一年になるといいなー
Commented by murachan at 2007-08-06 11:11 x
7月29日がお誕生日やったとね。知らんかった。とにかくおめでと!ふふふっ、私はまだ半年以上も先よ。ばってん昔は早生まれって、ちーっと得した気分やったけど、今となってはどーでもよかね。kyotachan家族がとても幸せそうで、よか写真。私としてはkyotachanにも登場してほしかー。裸ん坊の女の子の絵いいねえー。ピアノ弾きよっと?
Commented by kyotachan at 2007-08-06 18:12
murachan さま
どうもありがとう
あはは そうやねー わたしも 一時期 んー 十九 二十 の頃? 早生まれ うらやましかったけど
今となっては どぎゃんでんよかね ぷぷぷ
そうそう これ ピアノ 弾きよんさーとよー よかじゃろ 見にきんしゃい
by kyotachan | 2007-07-30 21:28 | 五 人 家 族 | Comments(14)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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