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バイリンガル論争


約三年半前、わたしたちがニースに来た時、長男当時三歳は、まだことばが始まっていない状態だった。 わたしの話す日本語、ダーリンの話すフランス語をきちんと聞き分けているらしいな、ということはわかっていたけれど、彼が発するのは返事くらいで、まだ、おしゃべりする、という段階ではなかった。 長女が二歳でかなりの会話をこなしていたのと好対照。 まあ、男の子だし、話しだしたら話しだしたで、おしゃべり地獄が始まることは経験ずみだったから、わたしはなーんにも気にせず、ゆっくりでいいよお、という姿勢だった。
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ニースに着いてからすぐに幼稚園に通い始めた長男。 だんだんと、ことばが出てくるようになった。 当然のことながら、フランス語が。 



ある日の夕食時、わたしが日本語で長男に話しかけるも、ぽっか~ん、と口をあけたまま、反応がない。 二 三度同じ事を繰り返したわたしは、しまいには、ほとんど叫んでいた。 見るにみかねて長女がそれをフランス語に訳して伝えた。 そこで、爆発。 
「なにフランス語に訳してんのよっ。 わたしはカゼと、日本語で話してんのっ!」
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結局長男はわたしが何を言っているのか理解せず、わたしの怒りはおさまらなかった。 わたしが日本語教育をしていないのだもの。 長男の日本語の語彙が育たないのは至極当然なのに、わたしには、それが理解できなかった。 ニッポンジンの母親をもつ子どもはニッポン語を話して当然、というおごりと甘えがあった。
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そのうちに、次女も幼稚園に通うようになり、きょうだい間では当然フランス語。 ニンゲンだもの。 楽な手段でコミュニケーション図るようになるのは、ごく自然なこと。 わたしは、フランス語の社会の中でもまれつかれきっている長男に、さあ、ウチに帰ってきたから日本語を話そうね、という気力がなかった。 まるでなかった。 日本語が通じないなら、フランス語で話そう。 わたしもまた、楽な方へ、楽な方へと流れてきた。 
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最後の砦、長女だけがまだ、わたしとは日本語で話す。 でも複雑なことは、「ね、ちょっと、フランス語で、ね。」 と言って、フランス語で話すようになった。 今や、日本語では意思の疎通がままならなくなってきている。 日本語でなーんにも話してくれないむすめよりも、フランス語で、何でも話してくれるむすめの方が、百倍ありがたい。 ことばはやはり、手段であって、目的にはなりえない。 将来、日本語をきちんと学びたいと思えば、学ぶ日が、やってくるだろう。
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え? たいまんな母親だなあ? おっしゃるとおりです。 ニースに来た当時、日本語を話さない子どもを持つニッポンジンママに、全く同じ感想を持っておりました。 おそらく、同じ現場を歩いている方々には、共感してもらえる問題ではないかな、と。 
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だって、学校でいやなことがあったと泣きじゃくる長女に、日本語では説明できないけど、フランス語ではできる、と言われたら、やっぱり、フランス語で説明してもらいたいじゃないですか。 え? それを日本語ではこういうんだよ、と教えろ? うーむ。 できない。 わたしには。
Commented by gattsaf at 2007-07-05 09:01
初めまして。ガットゥサフのfatou@吉です。
コメントありがとうございました。

我が子の言葉力の責任、私も感じます。
日本で育てていながら、我が息子はその日本語会話さえ
遅れ気味でしたので。

長い目で見ていこうと思っていますよ。
Commented by amazing-charko at 2007-07-05 10:28
にゃるほどにゃるほど〜次女の同級生にもいるよ。ママ日本人でパパフランス人。1年くらい前にフランスから帰ってきた時は、おぼつかない日本語で、ママと話す日本語以外はお友達とも通じない感じだったけど、半年したら本当に上手になった。しかしそれを見たパパがフランス語を忘れないで欲しいとの強い希望で日本の学校を離れ、リセに通っちゃった。わし自信も日本で生まれて日本の教育、家庭でも日本文化と韓国文化とごちゃごちゃでどっちも正しく使えなかったもんねー。どっちも自分の文化だけど。でも大きくなったときにあー、母国語しゃべれればよかったなーて思ったよ。難しいよね、状況に応じて子供が順応する場所の言葉が使いやすいもんねー。
Commented by bebecat at 2007-07-05 17:43
そりゃあ、Kyotachan難しいよ。
私も全く同じ経験したからね。
娘が日本語話さなくなってきて、腹が立って腹が立って、、、。
で、日本語で話す努力したか?してるか?
ぜんぜん、じぇんじぇん、デュエンデュエン!!!!
だって、一日がこんなに早く過ぎていく毎日、一つの言葉を
説明して日が暮れちゃうよ。

でもさ、、、、この前日本の友達の家に行ったら、
日本上陸3日目から、結構ぺらぺら喋りだしてた。

「よし、娘をいつか日本1年間体験生活させよう」

っと決めた。1年あれば、ペラペラになれる!!!
Commented by kyotachan at 2007-07-05 18:17
gattsaf さま
早速 お越しくださり ありがとうございます 
いつも 興味深い 記事 拝見させていただいています
わたしは しっかりした 『母国語』 を ひとつ 持たせる これに 徹する ことにしました 中途半端に 日本語教育をして 結局 フランス語 も 日本語 も 使い物にならない という 状況を 一番 恐れています 
フランス人の父親を持ち フランスに居住している 子どもたちが 『フランス語』 を母国語とするのは当然 長女は英語の授業が始まったので 第二外国語は 英語 それもよしとしよう 
え ? で 日本語は ? 本人の自由意志に任せる てことで ・・・ あれ ? やっぱり かなり たいまんまま ですねえ 
Commented by kyotachan at 2007-07-05 18:21
amazing-charko ちゃん
その 次女のおともだちちゃん カンタン に リセ に 通える て ことに おどろき~
天文学的数字なのよ あそこの学費 (あれ? 話題ずれてる?)
まあ なんつーか かんつーか バイリンガル てのは 血と汗と涙の結晶
てことは 実感を持って 言えること ですねー
ニース生息中ニッポンザルの感想としては
Commented by kyotachan at 2007-07-05 18:25
bebecat さま
えへへ bebecat さんはきっと なぐさめのコメントをくれるだろうなあ て 確信してたよ
え ? 三日で ぺらぺら ? うーむ そりゃあ すごいなあ
そうなんだよねー 純ニッポンジンの子どもでも 日本語ができない子ども てのが 結構いて でも 大学生 くらいで 語学留学すると かなり 高確率 で 取り戻すようなのだよねー ただの わたしの 印象 だけど 
さーて 『一年間 体験生活』 これですかねー たいまんまま の 結論 としては 
by kyotachan | 2007-07-04 21:32 | 吐 き 出 す | Comments(6)

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
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