dix-neuf ans ディズヌヴォン/ 十九歳

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長女が十九歳になる日の朝、開口一番「誕生日おめでとう」を言う。

前の晩はダンス教室の発表会。
終わったのが十一時過ぎで、そこからダンス教室の仲間に祝ってもらって
帰宅したのは朝の二時過ぎだという。

そして当日は朝の九時半から自動車教習所の運転教習が入っていて
起きたと思ったらもう出かけるというあわただしさ。

その日の夜の予定はあえて聞かなかった。

そりゃあ、ここのところ連日不在だけれど?
まさか自分の誕生日当日くらいは家にいるでしょう?
だって、生まれてからこのかた、毎年毎年、この日だけは家族一緒に過ごして来たんだもんね?
だよね?だよね?あえて確認なんてしなくても大丈夫だよね?

後から思えば、親の強いエゴが働いてたと思う。
わたしから聞けばよかったのだ。「今夜はウチなの?」ってひと言。

その日はあまりにも暑くて「ケーキは無理」と判断。
パン屋さんで見かけたまさにイチゴのショートケーキをホールで調達。
これで片方の肩の荷は下りた。

食事のほうは冷凍庫にある鮭と鮪でお刺し身。
アボガドもある。
セロリもあるからこれは炒めて副菜にしよう。

最近、刺し身を食べたいわたしが、ひんぱんに食卓に乗せているお刺し身だけど
長女は何度か食べ損ねているし、彼女の好物でもあるからこれで大丈夫。

夕方、居間でカードを書いていたら長女がボーイフレンドと帰宅。

「今日は(ウチでママたちは)何を食べるの」
と聞いてきたときから嫌な予感がふつふつと噴出してきた。

聞けば、レストランを予約してあって、友人たち十二名とお祝いをするのだと言う。
ぱちんとはじける、どこかで張っていた糸。

レストランを予約してあるなら、それは数日前からはっきりしていたことなのでしょう?
なんでひと言、ほんとうにひと言、言っておいてくれなかったかなあ!

こちらで言ってるそばで、長男は長男で「今日は友だちのところに泊まる」。

ぱちんとはじける、どこかで張っていた、もう一本の糸。










ひとり意地を張っていじける母親を前に
長女は「言うの、忘れてた。ごめんなさい」とあやまってくる。

忘れた?忘れるようなことなのこれって?
沸いたやかんのお湯はますます沸騰度を増して煙さえ立ってきた。

長男の方も「なによなによ、ウチで食べればいいんでしょ。食べてから行くから」
と言い出す。

なんだかもう、どうでもよくなった。

自分のこころの中をよーくのぞいてみれば、
よくもまあ、健全に健康にここまで育ってくださいました、
ほんとうにこころからお礼を申し上げます、どうもありがとう、という気持ちがあるのも事実。

しかし表面的にはすごい剣幕だったのだろう。
長女、長男、ともに「食べずにはおかれない」と判断したらしい。

その夜は長女のボーイフレンドを含めた七人で刺し身をつまんだ。
長男はお皿一杯分の鮪漬け丼を平らげてお役ごめんよろしく、風のように出かけた。

長女のボーイフレンドはおそらく気を使ってくれているのだろう、
おかわりまでして食べてくれた。

そして夜の九時頃にふたりで出かけて行った。

わたしの買ったケーキ、レストランに持ち込みで持っていきなさいよ、
というと、「それは明日みんなで食べよう」と言って頑固として持っていこうとしない。

翌日の夜、再び七人で囲んだ夕げのあと、みんなでケーキを食べた。
ほんとうに日本で食べるショート・ケーキらしいケーキだった。

長女が家にいる時間はもはや『家族サービス』。
十九歳の誕生日に母親が学んだこと。

ティーン最後の一年を思いきり楽しんでおくれ。

















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Commented by cocoaya at 2017-06-27 06:10 x
こんばんは、以前一度だけコメントをしたパリに住む7ヶ月のぼーやのママです。その時名前をなんて入れたのか忘れてしまって、、

私は5人姉弟の長女なのですが、こうしてフランスに嫁いで、子供も産み、先もここで暮らして行くのだと思います。
私はフランスに来る前にドイツで働いていたことがあったのですが、その時はとにかく仕事、仕事、仕事で本当に疲れ果てても仕事でした。慣れれば体力も伴って普通のことのようにしていましたが、最初来たばかりの頃はホームシックからの長く暗い冬にやられて半年ばかりはずっと下を向いて生きていました。その時に、私のホームシックは本当にホーム、家族を恋しく思っているんだなあ、と実感しました。
母とは友達のように時間を忘れて色々話しをするのですが、その距離感がまた、喧嘩になると厄介で、私が母のお姉さんみたいな気持ちになることもよくありました。
今、自分が人の母親になって、(と言ってもまだ7ヶ月ですが)、ああ、私のお母さんはこれを5人分やったのかと、それを考えるだけで気が遠くなっていますが、それと同時に心から、育ててくれてありがとうと思うのです。親からしてみれば、今やっとそう思ったのね、という年齢なのかもしれませんが、人を育てる、というのは本当に尊くて、美しいなあと感じます。
私はもうすでに、どんどん大きくなっていく坊やに寂しさを感じることもあって、成長が嬉しいのと、このまままっすぐ私を求めて来るままでいてほしいという自分勝手な気持ちと入り混じっています。

誕生日のお祝いも、私が家族と大切にしていたイベントでした。

19歳のお母さん、おめでとうございます。


Commented by cazorla at 2017-06-27 07:42
きょうたちゃん、長女ちゃんのお誕生日おめでとう。うちは夫の方が寂しがってる、色々と。それでも、ニースという大都会だから、大学に入っても一緒に住んでいるんだよね。うちは今3人家族になって、ご飯作るのも少しの量で良くなって、楽といえば楽だけど。末っ子が一番寂しがってる。言わないけど、寂しいんだろうなって。

気をつかてくれるボーイフレンドっていいね。家族が減って、そして今度は増えていく。だんだんと。
Commented by gudigudi at 2017-06-27 08:17
19才おめでとう!
家族サービスか!笑笑、、、いい子たちだわ〜
Commented by greenlove at 2017-06-27 10:48 x
ハハハ・・・親子の情景が目に浮かびます。親子逆転の時期に差し掛かりつつあるんですね。
うちはもう完全に子供は親を「守ってやってるぜ感」満々です。嬉しくもあり一寸鬱陶しくもあり、
一番の今の問題は夫の車の運転です、「もうぼつぼつ止めたら」「事故になる前に免許所返納を」
と会うたびに煩いこと、しかし私の見るところ「あんたたちの運転の方がずっと危険だよ!」
田舎に住んでるから車が無ければ生活できないのはどう考えてるのでしょうね。止めたその先は余り考えてない。
自分も昔はそうでしたね。貴重な会社の休みに親が勝手に家族旅行の計画をたてて頭にきて旅行中ずっとふくれっつらしてました。
Commented by kyotachan at 2017-06-28 14:59
cocoaya さん、
ありがとうございます!ほんとうに、けっきょくは自分のお祝いをしてもらいたいのかもしれません。
五人きょうだいですか!たのしそう~。こちらは一人っ子が多くて「わたしはひとりでもてんてこ舞いなのにお宅はその四倍でしょう?どうやってるの?」て言われることがあります。でも一人っ子のほうがかえってたいへんだと思うんです。子どもの相手を親がずーっとしなくちゃいけないから。ひるがえって子どもが複数だと子どもたちだけで勝手に育ってくれるところがあります。
親への感謝の気持ちはほんと、自分が親にならないとわからないものですよね。わたしもそうです。だから子どもたちにも「オレに感謝しろよ」とは言わない。
七ヶ月!歩き出す前、しゃべりだす前の赤ちゃんはかわいいですよね~。食べたいくらいでしょ。笑。また寄ってくださいね~。

cazorla さん、
ありがとう~。なんだかわたしよりすっかり大人だよ。からだもものすごくどっしりしているから、頼りにしまっせ~!という感じ。
長男にはリセが終わったらニースを離れることもアリだよ、とは話しているんだよ。出て行ったら確かにさみしいだろうなあ。あ、夫は反対するかもね。
ボーイフレンドねえ、気に入らなかったんだけど、しょっちゅうウチにいるからほとんど息子化しているよ。長男とちがって気をつかってくれるからこちらも利用しちゃったりして。きらわれないようにしないと~。
Commented by kyotachan at 2017-06-28 15:00
gudigudi さん、
ありがとう~。ついにわたしたちが出会った年齢を超えちゃったよ。なんか、これってどうよ。からだがかゆくなる感じじゃん?
長男君、ハタチ、てことだよね?将来は豪華客船のキャプテンやろ?て、勝手に決めとるが。割引で乗せてくれるかな~。いまから予約しとかないと。

greenlove さん、
ほんとうにそうなんですよ~。子どもに腹を立てるたびに「おまえの十九はどうだった?」て思うんです。わたしはもっとひどかったなあって。親に対する尊敬の気持ちはほとんどゼロだったなあって。昔の自分を思い出しては「おまえの子どもにしては上出来!」となるんですよねえ。
わたしの知っているマダム、九十歳ですが、まだまだ自分で運転してバカンスに出かけるそうです。まず頭がおそろしいくらいにはっきりしている。おしゃれ。すらりとしていてとてもすてき。母親も言ってました。足が悪くなる年齢になってからこそ、車が役に立つって。あと雨が降ったとき。雨が降ってるときは運転しない、危険だから、という人を「わけわからん!」て言ってました。雨のときこそ車が便利なのにって。運転はできるうちはしていいですね。いい頭の運動にもなるし。ね!
Commented by 40ansparis at 2017-06-28 16:07
お嬢様、19歳お誕生日おめでとうございます。私は人の親になる事が出来ませんでしたが、一人暮らしを18歳で始めてからずっと、、、そして妹が3人娘の母親をしているのを間近に見て、たまに保母さん手伝いをしただけでも親の有り難さを感じました。私もお嬢様と同じ年齢の頃、友人と遅くまで出掛け、なかなか帰らなかったのに対して、いつも寛大な母親が言いました。
御飯を用意する側の事を考えて!何時に帰るとか帰らないとか。別に、誰と居て朝帰って来ても良いから、まずは何処に居るのかは知らせて!、、、って、笑。周りの友人達が朝まで出掛けても良いから、、って、、、と驚いてました。
やっぱり親という保護のあるカゴの中にいた時で大人になったつもりでも甘えてばかり、自分のことばかり考えていたのだなあ、、と今は分かるのですが、、、ね。あの頃はまだ携帯も無いですし、連絡つかないでいつも帰ってくるのやら、、と思えば余計に心配だっただろうな、、と思いますね。。
Commented by akiko_tp at 2017-06-28 16:10
19才!もうそんな年なんですね~
自分がそれくらいの頃どうだったか、と思い返すと、我が家は記念日に対して以上にクールな家庭だったのもあって、自分含め家族全員私の誕生日を忘れて、夕方そうめんすすってて、あれ?今日って??って気づいたこともありました。あとはやっぱりBFや友達と出かける予定を親には直前まで伝えてなかったり。

うんうん、お友達と出かける方が優先されるのって、健全な証拠ですよ。

まだうちはちっこいのがトイレ行くのにも手を離してくれないとかそんなレベルで、はやく大きくなってくれーと思いますが、19才とかになると、kyotachanさんみたいな心境になるんですかねぇ。
Commented by sono-sono-house at 2017-06-29 10:46
19歳おめでとーー♪♪♪
我が家の娘1号も5日前に19歳になりました♪
お誕生日前日は友達の家に泊まり、お誕生日当日に何もないのも・・・と思い、
ケーキを焼いて待っていたら、「友達と夕飯食べてくる~!」
なんか、同じで笑えました
親になって19年のお祝いだねー♪と、娘が帰ってくる前にケーキ食べちゃった(笑)
Commented by kyotachan at 2017-06-30 00:57
ラパン さん、
ありがとうございます~!自分の十九歳のころって意外と記憶にあたらしい気がします。わたしってほんとうになーんにも考えてなかったなあとか。親の心配を想像してみたこともなかったなあとか。長女が十二さいくらいのときだったかな。五時に帰ると出かけて、三十分くらい、遅刻したことがあったんです。その時に「ママはね、五時十五分前くらいから、ああ、あと十五分で帰って来る、あと十分で、てずーっと時計をにらみつけて海の帰るのをまっているんだよ。その間、心配でしょうがないんだよ。だって、誘拐されたかもしれないし、事故にあったかもしれないって想像しちゃうでしょう?こんな時間はもう、まっぴらだかね!」と言ったことが一度だけあるんですが、それ以来、親はそのくらい心配するものだ、と思ってくれたみたい。携帯を持ってからはけっこうまめに連絡をいれてくれます。そうそう、ごはんはねー、食べないならそれでけっこう、でも言っておけ!です。笑

アキコさん、
そうなんですよ~。いつの間にか十九歳です。親がなくとも子は育つ、そのままに。
わたしの育った家も誕生日を祝う習慣はまるでなくて、翌日になってから「あら。きょうたちゃん、昨日、誕生日だったっけ」と言われてました。フランスってたいていの人は誕生日をものすごく大切にしますよね。何年も会っていない遠い親戚の人の誕生日を覚えていたりとか。わたしもだから家族の誕生日だけは忘れないように、というか、今までは子どもたちがものすごくその日を楽しみにしていて、わたしもそれにつられていたんだけど、それもなんだか様変わりしてきたような……。
早く大きくなれー!て子育てにほぼ百パーセントだったころって、振り返るとあっちゅーま。できることはできるだけやってあげたほうがいいと思う。がんばれー。

そのさん、
ありがとうございます~。そうそう、そのさんとわたし、年も同じだし、けっこう共通点がおおいのですよね。
でもそちらは自然た~っぷりの生活であこがれます~。自家製のブルーベリー食べたい!子どもたちはなんだかもう、放っておいても勝手に大人になっちゃうんだなあって思います。長女なんて、わたしよりお母さんぽいところがありますし。しょっちゅう、「ママったら……」て言われています。
by kyotachan | 2017-06-27 00:22 | 六 人 家 族 | Comments(10)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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