2015年 11月 27日
garçon ギャルソン/ 少年8
「マモン、どうしたの。ひとりでにやにやしちゃって」
居間のテーブルでクッキーをつまみにひとりで赤ワインを飲んでいるマモンに話しかける。
「あらクレモン。おかえり。ドアの音、気づかなかったわ」
「あら、わたし、にやついてた?」
「うん、なんだかものすごく楽しそうに笑ってたよ」
「ああ、へえ、うふふ。そうなの」
マモンはちょっと遠くを見るような目をする。
「話したこと、あったっけ?エロイーズのこと」
「エロイーズ?だれだっけ?」
「マモンが学生だったときの友人。もう、三十年近くも前になるわ」
「へえ!その友だちに、会ったの?」
ぼくはすっとんきょうな声を出す。
「ううん、会ってはない。その子、卒業と同時に結婚するためにドイツに行っちゃって、それっきり。
実家はニースじゃないから、それ以来会う機会もなくなちゃった」
「ドイツ?ドイツ人と結婚したの?」
「そう。エロイーズって旅行をよくする子で、相手のヨハンとはシンガポールで知り会ったのよ」
「まじ。すごいね。インターナショナルだね」
ぼくもマモンの食べているクッキーに手をだす。そしてコップにオレンジジュースを注ぐ。
「ヨハンのお母さん、軍事工場の社長だって言ってたのを思い出したの」
マモンが言う。
「軍事工場?……って、銃、とか、作るの?」
「うん」
「へえ!そんな工場があるんだ。いや、当たり前だよね。ニースの警察官だって腰にぶら下げているもの。どこかで作られてるのには間違いないけど、でも、そんあ工場の社長?の息子?と結婚したんだね。マモンの友だちの、そのエロイーズって人」
ぼくはクッキーで口を一杯にしながら、早口で言った。
「そんなこと、ずっと忘れていたんだけど」
「うん?」
「なんとなく、エロイーズのことを思い出してさ」
「うん」
「FBで探してみたら、つながったの」
「ああ、そうだったんだ。それで、にやにやしてたの?」
ぼくが聞くと、マモンは言った。
「そうなの、それだけでもうれしいんだけどね、エロイーズのお義母さん、軍事工場をやめて、クロックムッシューの器械を作る工場に鞍替えしたらしいの」
「え?なにそれ?クロックムッシュー?ウチにある、あの電気製品の?」
「昔は火に直接かける器械だったのよ。鉄製で、こうやって、パンをはさんで、それを火にかけて、焼くの」
「ああ、うん、なんとなく、わかる」
「エロイーズのお義母さん、その器械が、アンチークのお店で法外な値段で売られているのに目をつけたんだって」
マモンはそこまで言うと、もう、おかしくてしょうがないという風に声に出して笑い出した。
ぼくもそれに伝染して、一緒に笑った。
「銃が、クロックムッシューの器械になるって、ものすごくすてきでしょう?」
「うん、ほんとうにそうだね」
ぼくが言うとマモンはふっと真面目な顔になって言う。
「収入はものすごく減ったらしいんだけど、でも、最近のレトロ趣向に乗って、その器械は順調に売り上げをのばしているらしいの」
ふうん、とぼくは相槌を打つ。
「エロイーズのお義母さんのような人は世界中にまだまだいるはずよ。そうでしょう?クレモン」
マモンはにっこりと笑ってワイングラスを空にした。
ニヤニヤ顔が想像できるな。笑。
鼻が広がって口が閉まりきらないの。うれしくて。
フィクションとは「事実でないことを事実らしく作り上げること」ですよね。
残念ながらこれは根も葉もありません。もしわたしが、と考えると政府の庇護を受けて安定した収入が確保されている軍事工場の社長という立場を簡単に捨てることはできないだろうなと思う。戦争反対という立場にも立てないし世界中で起きている戦争のニュースを冷めた目で見ている。戦争があるからわたしは平均より裕福な生活ができているんだわと言い訳する。それでも、武器を作るのはもううんざりだ、世界の平和を地球に住む人間としてこころから祈りたい。と思う自分を想像したかった。フィクションです。
日本にも サリンを作る鍋の会社 世界で唯一だって があるそうで
そんな技術があるなら ドイツに負けないすごく素敵な鍋ができるよね。
クロックムッシュって そういうちゃんとした専用器具で作るんだ。
「なげーやつ」は基本的に作り話です。
あれ。クロックムッシュー、つーか、ホットサンド用の、ない?ウチは電気のやつでものすごーくくたびれてきてて、今度のは直火のやつがいいなあと思って探したんだけど、「今はもう製造していなくて、おかげてアンチークですごい値段で売られている」てお店の人に言われたの。じゃあ、作ったら売れるかなあ、と思った。
>>>サリンを作る鍋の会社>>>
なんか、コメントに質問ばかりして申し訳ないけど、サリンって、薬品だよね?人を殺すくらいの。それを作る鍋、の会社なの?こわいなあ。
julia さん、
>>>「寝も葉もある」
前回は間違ったんだなあって素通りしたんだけど、二回目ともなると見逃せません。寝?
あまりにも能天気な話だなあとは思いつつ、そのくらいの気持ちにならないと「未来への希望」を含む話は書けない。あほじゃん?と思われてもいい、やっぱり、そうならいいなって思う、うれしくなるような話を書きたいよ。
ありますあります。最近は特にそうで「あれ?わたしは一体に何を?」ということがものすごく多い。老いの現象とは思わないようにしています。年を重ねていくと色々とカラダもココロも変化するし、今までどおりにはいかないことも出てくるけど、こんなもんやろ、と思うことにしている。五十になればまたそれなりの「あれ?」が出てくるだろうし、六十、七十ともなればもっと色んなことが出てくるよね。julia さんもわたしと同じだ~と思ったらうれしいよ。はずかしいとか言わないで~。笑い飛ばしてやろう!