garçon ギャルソン/ 少年6






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「ねえクレモン、わたしたちの子どもってどんな顔だと思う?」
サラが言う。

「え!」
ぼくの胸はぴくんとはねる。

「あ、今、動揺したでしょう?」
サラは毛布をひっぱって口をおおい、こらえきれないという感じに笑う。

ぼくはここのところ、週末ごとにサラの家で過ごしている。

コレージュの最終学年で一緒のクラスになったぼくたちはある頃から意気投合した。
ぼくの気持ちはサラへサラへと流れていき、サラの気持ちがぼくに向いているのもはっきりと感じた。

はじめてサラの家に招かれたときは正直言って驚いた。
ぼくの家だって母子家庭だしけして裕福とは言えないけれど、サラの家には貧しさだけではない悲壮感みたいなものが漂っていた。

サラの母親は数年前に「うつ病」の診断を受けて、それ以来薬を服用している。
落ち込んだときの母親は、それこそ、ゾンビかと見間違うほどの顔になる。

「イザベル、今日はなんか、調子悪そうだったな」
ぼくが言うとサラは毛布から顔を出す。
「マモン?そうかな。悪い、と言っても最悪でもなかったよ」
「あ、そう?」
「うん、最悪の日は部屋から出てこないから」。

サラの家も母子家庭だ。
サラは自分の父親の顔を見たこともない。

「マモンはわたしを妊娠中に離婚しちゃったから」
とサラは言うがほんとうのところはわからない。

イザベルにもほんとうの相手はわからないのかもしれない。
イザベルにはなんだかそんあことを想像してしまう雰囲気がある。

サラをはじめてぼくのマモンに紹介したとき、マモンは言った。
「クレモン、あんなむずかしい子と付き合うの」。

むずかしい?

ぼくはただ、サラと一緒にいると楽しいしこころがおだやかになるのが好きなんだ。
サラとイザベルを見ていると、ぼくが守ってあげなくちゃと自然に思う。

この人たちはいままでふたりだけで、ひっそりと生きてきた。
これからはぼくがこのふたりを守ってあげなくちゃいけないんだ。

こんな気持ちになったのは生まれてはじめてで、
誰かを守りたいと思う気持ちは自分をものすごく強くするんだと知った。

気がつけば、ヴューニースにけんか相手を探しに行かなくなってずいぶんたつ。





















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Commented by ババ姫 at 2015-10-13 16:24 x
こんにちは。お子様たちがずいぶんと大きくなって、
小説を書ける時間ができたんでしょうか。
あれから私はひどく心と体が老化してきて
サラの母親のように毛布から出られない日も多かったです。
忙しすぎたのかもしれませんね。人様からはまさにゾンビのように見えてたかもですよ~。
Commented by kyotachan at 2015-10-14 15:24
ババ姫さ~ん、
こんにちは。コメントうれしいです。
そうですね、ほんとうに、小説を書く時間ができた、できたのに思うように書けない、というところでしょうか。
ババ姫さんははたから見てると「どうしてそんなに動けるの?」くらいに動いていらしたから。今は少し休憩が必要なのかもしれませんね。そんなときには温かい毛布にくるまって。シャワーもすべるかもしれないからそんなときにはカラダだって洗わなくていいんです。>わたしのことか?また動きたくなったら動けばいいじゃないですか。そしてここにもまた寄ってくださいね~。
by kyotachan | 2015-10-08 16:32 | なげーやつ | Comments(2)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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