gentillesse ジョンティイエッス/ やさしさ










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今日のニースは冷たい雨。

わたしは冷たい雨に足先が凍りつくようで、それでなくても疲れていた。

スーパーに寄った。
必要なものはにんにくだけ、のはずだったのに、何やかやと小さいかご一杯ほどになってしまった。

開いているレジは一台。
わたしの前には小さなかごではなく、大きな車つきのかごにあふれんばかりにつめこんだマダム。

その前にも三人ほど。
まったく珍しい風景でもないし、ここでいらいらしたって何もはじまらない。
あくまでものんびりとかまえるしかない。

運よく、もうひとつのレジが開いた。
わたしは前のマダムに目配せして、どうぞどうぞ、とその人と開いたばかりのレジに並び直す。

マダムの前にいた三人をとばせるからかなりラッキーだ。

と、マダムがわたしをちらりと見て言ったのだ。
「どうぞお先に」。

まったく思いもよらないことでびっくりした。

いや、こちらでは、たとえばバナナひと房持っている人が
車つきの大きなかご一杯の買い物をした人の後ろにいる場合、
「いいですか先に通してもらっても。このバナナ、ひとつだけなので」
と申し出ることがある。

わたしも最近はこの手を使わせてもらうことがある。
そしてたいていは「どうぞどうぞ」と言ってもらえる。

もちろん、これは断られて当然の行為だから覚悟はしている。
もしかしたら通してくれるかもしれない、くらいの気持ち。

そしてものすごくごう慢にこの行為を強いてくる人もいる。
けっこうな買い物量を抱えているにもかかわらず、こう言うのだ。
「家に小さな子どもが待っているんですよ。いいですか先に通してもらっても」。

こう言うマダムに、
「まっぴらごめんだね。オレはね、年老いた母親が家で今か今かとオレの帰りを待っているんだ」
と大きな声で応戦しているムッシューに会ったことがある。

子どもの話もあやしいけど、母親の話もけっこうあやしい。
夕方の、気のせいている時間は誰もが一刻も早く家にたどり着きたいのは同じこと。









わたしは
「え?いいんですか?でも、わたしだってけっこうあるんですよ、ほら」
と小さなかごをマダムに見せた。

「いいわよいいわよ、わたしはそんなもんじゃないから」
とそれでも先に通してくれようとする。

「ありがとうございます!」

支払いを終えて、もう一度マダムにお礼を言う。

「ありがとうございました、マダム!さようなら。」
「どういたしまして。いい日になりますように!」










人は人にもっとやさしくなれる。
基、わたしはもっと、人にやさしくなろう。




















写真は友人が持って来てくれた焼きりんご。シナモン、コーンフレーク、バター、おさとうを入れてオーブンで焼く。らしい。
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Commented by アンジー at 2015-02-06 08:10 x
☆ おはようございます ☆


なんだか この世知辛い世の中に…

いい話 ♪ 外は 寒い けど…

心 温まりましたよ (*^o^*)

フランスの方って みてくれ なかなか良い! のに なかなか… やりますね~(・_・;)

スーパーも 大量買う方と 少しの方と


レジ 変えれば ええんちゃうん!☆
Commented by julia at 2015-02-06 08:24 x
いいお話だ~ほっこりする。
良かったねkyotaさん。ありがとう。
Commented by dangomama46 at 2015-02-07 20:53
レジの順番を譲ってくれるマダム優しくて素敵ですね。人に優しくしなくちゃと 思うけどなかなか難しい。人付き合いが苦手でね・・・でも私もできることから始めてみようと思う。
Commented by kyotachan at 2015-02-11 00:28
アンジーさん、
スーパーによっては「商品十個までのレジ」や「ちいさなかごのレジ」を設置しているところもあります。どっちみち、レジの仕事は日本のそれを知っているものにはのろのろしているように見えちゃうんですけどねー。フランスってマニュアルがない分、ほんとうのやさしさ、みたいなものがあるような気がします。気負ってなくて、そんなものに出会うとほんとうにうれしくなります。

julia さん、
そういってもらってうれしいよ~。なんだかさ、戦争に突入したような空気でしょ。うつうつとしていたから、ほんとうにじんわりとうれしくて。ツィッター、やっぱり使いこなせない。情報があふれていて、読みたくないの。わたしにはあまりにも先端をいくツールだよ。なんかさ、「ブログやってます」ていうと「まあアナログですねー」て言われる気がする。

だんごさん、
そうそう、わたしもそう。人にやさしくするなんてこっぱずかしくてとてもできない。なーにいい人ぶってんのよーと言われそうで。フランスではたまーに、思いがけなく親切な人に出会ったりします。それがまた、なんだか妙に心にしみるんです。ああ、こういう人になろう、てそのたびに思うんですけどねー。
Commented by ラパン at 2015-03-21 06:15 x
レジの光景、目に浮かびます。
先に良いかしら?とひとつだけ、ふたつ位の人に言われた事も、同じようにありますが、私は結構、前の方に、どうぞお先に、と譲って頂いた事が結構あります。もちろん荷物が二つ、三つで少ない時、前の方が山盛りの時もですが、それより良く声をかけて頂くのが、必要なのは二つだけだったはずが8個位になってしまい、両手に器用に並行に積んで、とても危なっかしい状態でレジに居る時でした。箱ものや薄いものだけなら良いのですけど、クレモンティーヌの網入り、とか不安定な商品が混ざっていたり、缶があったり、パンみたいなふわふわ不安定のものがあったり、、、これらを両手に積んでレジに近づくと、かなりの割合で私は、先にどうぞ、と言われたりしました。よっぽど危なっかしく見えたのでしょう、笑。
これ、ひとつだから先にさせて貰っていいですか?と聞かれて、すぐに、ノンノンノン!譲らないわよ!と強気なマダムを見かけたことも、ありますねえ。レジ周りのドラマって笑えますよね。
Commented by kyotachan at 2015-03-22 01:50
ラパンさん、
レジに並ぶとき、けっこうなドラマがあちこちで展開されてますよね……。
日本だったら、まずありえませんよね。お客さんが長蛇の列をなす前にレジが次々に開いてお客さんに待たせることをさせない。お客さんが待っている、となるとレジの人も意識して急いでくれる。こちらはどんなに列が長くなろうが常連とはおしゃべりにこうじることを忘れないし、列がながくなればなるほど「疲れないようにしよう」という本能がはたらくのかのろのろリズムになる(ように見える)。この精神にはいつまでたっても慣れないし、こんな風にはなりたくないと思う。でも並んでいる最中に「わたしってさっき列を変えたの。変えたらもっとのろのろ。この点に関してはわたしの運はゼロよ」なーんていうマダムがいたりして笑えます。「わたしも、並ぶ前によーくみまわしてココ!て決めるんですけどねー」なんてね。
強気なマダム、いますねー。ムッシューもいる。人に親切にしたらそれだけそんしてばかを見る、というポリシーでも持ってそうな。まあ、そんな風にはっきりしたフランス人、なんだか憎めないんですけどね。
ラパンさんはきっとゆずってしまいたい、と思わせる雰囲気を持っているんですよー。いいなー。
by kyotachan | 2015-02-06 03:00 | 日 常 空 間 | Comments(6)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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