2012年 10月 12日
bain chaud バンショ/ 熱いお風呂
小さいころ、線路を渡った向こう側にヤヨイちゃんという子がいた。
わたしよりひとつ年上でそんなに仲良しではなかったのだけど、
わたしの母親とヤヨイちゃんのお母さんが同じ職場で働いていたせいで
なんとなく顔をあわせる機会が多かった。
ヤヨイちゃんのおうちのお風呂が五右衛門風呂だということを知った母親は
いまどき珍しいといたく感激して、わたしをお風呂に入りにやらせたことがあった。
わたしがなぜわざわざお風呂に入りに行かなければならないのかと尋ねると
「五右衛門風呂なんて珍しいもの、この先入ることなんてないだろうから入らせてもらいなさい」
と母親は答えた。
当時のわたしにとってはそんなものどうでもいいことだったのだが
「キョータちゃんは五右衛門風呂に入れるなんて運がいいねえ」
ということをことばの端々に感じさせる母親におされるようにしてヤヨイちゃんの家に行った。
ヤヨイちゃんはおそくできた子どもで、ご両親ともにヤヨイちゃんの祖父母といってもいいくらいの年齢だった。
五右衛門風呂の底には木のふたが沈ませてあり、そこにヤヨイちゃんのお父さんが先に入って待っている。
わたしはヤヨイちゃんのお母さんに抱っこされて、ヤヨイちゃんのお父さんに手渡された。
ということはわたしはせいぜい幼稚園の年少さんくらいだったのか。
風呂桶のふちにさわるとやけどするから気をつけるようにと言われてひどく緊張した。
そのあとたぶん、ヤヨイちゃんも入ってきたのではなかったか。
ヤヨイちゃんは日本人形のような顔をしていた。
そして日本舞踏を習っていてそれがすごく上手らしかった。
今読んでいる本に「五右衛門風呂」ということばを見つけて
そういえば、と昔の記憶がよみがえった。
「お母さんのおかげで入ったことがあったな五右衛門風呂に」と思い出した。
三十秒前のことはすぐに忘れてしまうくせに
昔のことだけはよく覚えている、という年齢になっちゃったのか?
蛇足。
バンショ、といえば「ホットワイン」?
いえいえ、ホットワインのほうは vin chaud ヴァンショ。
日本語の「バ」と「ヴァ」はややこしいくらい似たもの同士だけど
フランス語の「 b 」 と 「 v 」 は天と地ほどにも違う。
田舎に行くとお風呂がそれでね、おばあちゃんと一緒に入ってた。
あ、熊本ね。^^
失敗すると熱くてねー。^^;
ちんまり緊張して入ってた。(笑)
なのに嫌な思い出じゃないのは、たぶんおばあちゃんと入るのが楽しかったから。柔らかいガーゼで身体を洗ってくれて、ゆっくりおしゃべりして。いつも笑っててさ、おばあちゃん。優しかったんだよー。
お母さん、熊本の人なんですね。熊本、大好きなんですよ。阿蘇。けいからーめん。うふふ。そうそう、五右衛門風呂ってよくいったものですよね。下手するとやけどですもの。やさしいおばあちゃんと入る五右衛門風呂。いいなあ。
あ、それは最後の二行への爆笑、ということですね?いやあもう、なんつーか、物忘れに関するむなしさ?かなしさ?不安?とどまるところ知らないっつー感じでちょっとあせりまするわ。「人は忘れるからあたらしいことを記憶できる」なーんてことを流ちょうに言ってる場合じゃないような。あら!赤ちゃん、生まれた?
かこままさん、
ああ!ウチもねー、タイルのお風呂で、外で薪をたいてたよ。お風呂入るときは誰かが外で薪をくべないといけなかった。いい時代だったなあ。え?!家に温泉?うわあああああ!!!それはもう、何にもまさるぜいたく!!!ゆるせん!!!
あ!ほんとう?うれしい!ご入会、ありがとうございます!!!
ニースは暖かいんでしょうけどノルマンディの寒さは既に始まっているので温泉が恋しくて恋しくって!!
それに秋は、秋刀魚の塩焼きに栗やキノコご飯・・・美味しい恋しい日本食の事ばかり考えている毎日です。
えっ!? まあ、象じゃないからさすがにもう身ごもってはいませんよ 笑、お腹に余計な物は残っているけども。11月末に産まれました。本当に無痛過ぎて拍子抜けしちゃいましたが。
おかげで10ヶ月半になりますが、最近歩き始めちゃって悪ガキ度が増して母ちゃんはついて行けないです。
ああ!それはおめでとうございます!もうすぐ一才なんですね!かわいいんだろうなあ。
昔人です。
で こういうおかあさんはすてきですね。
言葉で知ってることと触って知ってること 味わって知ってること 痛がって知ってること は わかってるようで違いますよね。 いろんな経験させられたんですね。
五右衛門風呂でしたか!そういうコメントが多くてびっくりした記事でした。冷めないからいいですよね。今もし五右衛門風呂だったらものすごくぜいたく、と思う。お母さん。好きなんですよー。おばけで出てきてくれないかなていつも思っています。死んでから十六年もたちました。