2011年 12月 21日
tablier タブリエ/ エプロン
エプロンが好きだ。
おかあさん、といわれる立場になってからは、家にいる間はたいていつけている気がする。
子どもたちが赤ちゃんのころ、エプロンさえしていればわたしにゲロを吐いても平気でいられた。
子どもたちが絵の具に凝ったころ、エプロンさえしていればわたしに汚い手で抱きついてきても平気だった。
エプロンはいつしか、「やさしいおかあさん」に近づく、マスト・アイテムになった。
子どもたちはもう、わたしに向かってゲロをはくこともなくなり、
絵の具の手でわたしに抱きついてくることもなくなったけれど、
わたしは朝、着替えを済ますと、たいていエプロンをつける。
習慣で、というより、エプロンをしていたほうが気持ちが楽なのだった。
ぬれた手をちょいとぬぐうのにも便利だし、
揚げ物の油が、着ている服に小さいしみを作るのを防ぐこともできる。
ラーメンを食べるときだって、汁が飛んでくるのを気にせずに食べることができるし、
チョコレートを食べたあと、お行儀悪く、エプロンの端をつまんで、口をぬぐうことだってできる。
ちょっとあんた、それはないっしょ。
エプロンをしているわたしは、エプロンを駆使しつつ、
そのお行儀の悪さを楽しんでいるふしさえある。
ある日の夕方、
パンを買い忘れていたわたしは、
エプロンの上にカーディガンをはおって表に飛び出した。
家の鍵は G パンのポケット、財布は手に持っている。
パンやは家からせいぜい数メートル。
徒歩で数秒の距離のところにある。
パン屋で支払いをしていると、
出かけていた夫と長女が通りかかった。
・ボクの奥さんが、なんでこんな格好でここにいるの…?ちょっと信じられないな。
夫がにわかに青い顔をして言う。
わたしはそれがまさかエプロンのせいだとは思いもしない。
・え?なに?…ッエプロン?まさか?そんなあ?
わたしは長女に訴える。
・ちょちょちょ、エプロンごときで、そんな、たいしたことじゃないよね?
・……たいしたことだよママ。けっこう重大問題だよ。そんな格好で表に出るなんて。
エプロン姿で表に出ても、お財布さえ忘れてなければ大丈夫と思っているのは、
ニッポンジンの、サザエさん世代だけなのだろうか?
ここへ来て、落ちてきたような。引き上げてくれー!…ご面倒おかけいたします!
恐縮でございます……!!!
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