koh lanta コ・ランタ/ ランタ島

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もう去年のことになると思う。
家族六人で車に乗って、出かけるところだった。

隣で運転していた夫がふと思いついたように言ったのだ。
「ウミ(長女)、クロードのこと、どう思う?」

後ろの席にいた長女は、ああ、クロード?といい、
「確かに持っている能力が高いのは認めるけど、
人を自分の思い通りに動かそうとするところが嫌い」
という風なことを答えた。

夫はその答えに満足そうで、そうそう、ボクも同じことを思ってたよ、などと言っている。

そして長男も下のふたりも、ああ、クロードねえ。やな感じよねえ、
などと異口同音に言い合っているんである。わたしだけ、完全に蚊帳の外。

なによなによそのクロードって誰よ、
とあわてて聞いた。

その二人の話ぶりから、クロードとはかなり近い関係にいる人物だと思った。
わたしはとっさに長女のクラスメートだと見当をつけたのだが、
それにしてもクラスメートをこれだけ辛らつに言い放つのも不自然な感じではあった。

koh lanta コ・ランタ だよ、
と家族五人が口をそろえて言う。

クロードとはなんとテレビの番組の中の人物だった。

なんだかおかしくてひとりで笑ってしまったのだが、
わたしを除く家族は、みんなしてこの番組の世界に、すっぽりとはまっているらしかった。

それは毎年九月の下旬からはじまる、フランスのテレビ局 TF 1 の番組だ。

koh lanta コ・ランタ という、インドネシアにある無人島に二十名の候補者が集まる。
有名人ではなく、一般の、普通の生活をしている人たちばかりだ。
そしてその二十名は四十日間をその島で過ごす。

もしろんただ過ごすだけじゃない。
この四十人にはさまざまなアドベンチャーが準備されているのだ。

最初はまず十人ずつのグループ(赤グループ・黄グループ)ふたつに分かれる。
グループ単位でゲームで競い、負けたグループは仲間をひとり、排除しなくてはならない。

こうして一週間にひとりづつ、候補者を消していき、
最後に残ったひとりが勝利者。
そしてその勝利者には賞金が出る、というものらしい。

二十人の候補者がどのような経緯で選ばれるのだろうか。

おそらくそれはそれはたいへんなコンクールを
何度もくぐり抜けてたどり着いた二十人なのだろう。

若きは二十一歳の心理学を専攻しているという女学生から、
老いは六五歳の児童公園の遊具を作っているおじいちゃんまで
そりゃあもう、年齢も職業も千差万別、いろんな顔が並んでいる。

無人島なだけに、宿泊施設はもちろんないし、シャワーもトイレもない。それどころかテントさえない。
最初の日、島に到着するには個人の荷物(たいていは小さめのリュックサック一個)を海の中に投げ入れなくてはならなかった。

わっちゃー!着替えもタオルも水びたしかよー!
などとほざいているへたれには、とてもとても挑めそうにないアドベンチャーなのだ。

先週の金曜日が三回目。

つまり、二十人中、すでに三人が排除されてしまった。

一週目・二週目に早々と排除されたのはどちらも赤グループの女性で、
二人とも、体力的にも精神的にもなんの問題もないと思われる人物だった。

実はベルギー人の男子学生 Maxime マキシム がひとりで画策したことで、
将来の手ごわい敵になるだろう人物を根回しをして排除するのに成功したのだ。

こういう「人を操る」能力もその人の手腕のうちだろうが、わたしはこの Maxime マキシム のやり方は
どうしても好きにはなれない。

ただ、我が家の長男にいわせると、「そういうのも悪くない」ということになる。

そういう行動に走る心理をひとつひとつことばで見せるのもこの番組の魅力かもしれない。
司会者が、巧みなことばで、メンバーの内面をえぐりだすように語りかけてくる。

どうしてそういう行動に出たのか、
なぜこの人を排除したいのか、
あるいは前日、あんなに激怒したのはどういう理由なのか。

もし自分が聞かれたらそんなんどっちでもええやんかー!
といいたくなるような面倒くさい話題ばかり。

しかし候補者たちはそんな質問にも冷静に的確に答えてみせる。
ああ、これがフランス人てやつやなあ、と感心してしまうほど。

Maxime マキシム 自身は今のところ、自分の思い通りにことが運んでご満悦。
はたしてこの若造がどのくらい生き残れるかはまだまだ誰にもわからない。






















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三回目の放送では、六十五歳のおじいちゃん・Gégé ジェジェ(Gérard ジェラール の愛称)が、
仲間のほとんどの票によって排除されてしまった。

排除する方法はメンバーによる匿名の投票。
ただわたしたち視聴者には誰が誰に投票したかを、またなぜその人を選んだかのを本人の口から聞くことができる。

大工仕事はお手のもので、メンバーたちが快適に眠れるように、木の葉を使って掘っ立て小屋を建てたり、
かにやザリガニをとってきて、みんなのお腹を満たしたのはそのおじいちゃんだったのに。

少々感情的になりすぎる傾向にあり、
そして体力を使うゲームではチームの足を引っぱっているのは明らかだったのも確か。

老女の域に達そうとしているわたしはひそかに応援していたのだけど。
だいたい、六十五になって、このアドベンチャーに挑むと決めた、その気持ちがすごい!
わたしなんて四十日間シャワーなし、といわれただけでへたりこみそうになる。

そしてこの日は、自分から脱落を申し出た人がひとりいた。
パリでおまわりさんをしているという、二十代の男性だ。

最初から何事にも手を汚さず、周りでおもしろくない目で眺めている人物で、
け!ったくおまわりってやっぱりそうなのよね、といけすかなかったので、わたしとしてはすっきりした。

脱落の理由は「自分の能力の限界を思い知ったから」。
まあ、早めに思い知ってよかったのかもね。

逆にお気に入りの人物もできてくる。
Martin マルタン ていい子ねえ。この子好きだわあ、
なんて画面に向かってつぶやいてしまっている。

あら!気がつけば今年はなぜか、わたしもすっかりはまっている。

さーて。
最後に残るのは誰か。






































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Commented by TAKU at 2011-09-28 00:19 x
昔、10年くらい前でしょうか、アメリカでサバイバーという番組が流行ってました。それをTBSで放送していて、日本版サバイバーもTBSでやっていたような気がします。たぶん、同じような内容だと思うのですが、人を蹴落としてというのが嫌で途中から見なくなりました。
なんか、ちょっと懐かしいです。
Commented by りん at 2011-09-28 03:35 x

だいぶ涼しくなりましたね~。
節電の夏も終わり、ようやく秋らしくなってきましたが、
体を壊さないようにして下さいね。

Commented by kyotachan at 2011-09-28 17:05
TAKU さん、
蹴落としていく。確かにそうもいえるのだけど、最初は二つのグループに分かれていて、グループのメンバー同士の連帯感がいいのですよ。でもゲームに負けるとひとりを排除しなくちゃいけないから、やっぱり蹴落とし?!わたしはこれを見てて、日本ではありえない番組だなあと思います。まず、シャワーがない、て日本人にはつらすぎません?あら。わたしだけ?わたしってけっこうやわなんですわ…。

りんさん、
ほんとうに、今洗濯物、外に干したら寒いくらい!風邪ひかないようにきをつけないと。あったかいものがおいしい季節になりましたね~。
by kyotachan | 2011-09-27 20:23 | 六 人 家 族 | Comments(3)

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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