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ce qui ne se change pas スキヌスショーンジュパ/ 変わらないもの





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わたしたちがニースに来たとき、
次女は一才になったばかりで、
三女はまだお腹の中にいた。

しばらくして三女が生まれてからは
どこへ行くにもふたりの赤ちゃんと一緒だった。

「赤ちゃん、抱っこしていいですか」

とよく聞かれた。
聞かれるたびに、そんなていねいに聞かなくても
抱っこしたけりゃすりゃあいいじゃん、と思った。

でもここでは赤ちゃんを抱っこするときには
必ず母親の了解を得てから、というのが常識らしく
どの人もていねいすぎるくらいに断ってから赤ちゃんを抱いた。

赤ちゃんに触られるのを嫌う人がいる、
と聞かされたのはずっと後になったからで、
わたしは、あ、へー!くらいには驚いた。

わたしにとっては赤ちゃんを抱っこしてくれもらうことは
その間だけは赤ちゃんから解放されるし、とてもありがたいと思っていたから。

場所が変われば常識もかわる、
と思ったことは他にもある。

たとえば、近くにいた人が何かを落としたとき、
つい拾ってあげて、嫌な顔をされたことがある。

え?

わたし何か気にさわることでもしました?
嫌な顔をされてついそう思ったのだが、
その場にいた夫に、「持ってかれちゃうと思うんだよ」といわれた。

だから今はものを拾ってあげるときも充分に注意する。
なにもわたしは「持っていくつもり」で拾うわけじゃない、
とまずおおように構える。

そうするとたいていは落とした人が拾うものだ。
「小さな親切大きなお世話」を実践する気はない。
















昨日だったか、
ブログを開設したいと主張する長女に再度、
「わたしは反対です。その問題をこれ以上話題にしたくない」というと、
「わたしのしたいことにはすべて反対するんだから」
と半ば叫ぶように居間を出行った。

いや、そうでもないよ。
わたしが反対しているのは、
今のところブログだけだよ、
とこころの中で言ってみた。

わたしが長女のブログの開設に反対しているのは
こういう理由だけど、それを彼女に伝えてはいない。

エロチックなサイトなんか全く興味がないわ。
そんな理由で反対しないで、と反撃されるのは目に見えているから。

わたしは子どもたちが DS をすることも反対なのに
いまやそれに反対していたことも忘れられているし、
長女は i pad で好きな音楽を聞き、ゲームを楽しみ、メールの送着信さえ楽しんでいる。
なんだかわたしの知らない世界のことばかりで、
一体この先、この子たちはどんな「デジタルの世界」を生きるのだろう、などと思う。

わたしは親に、
あまりテレビを見るとバカになるよ、といわれて育った。

テレビを見る時間は決まっていたし、
子ども向けの番組がしょっちゅう流れていたわけでもない。

今はどうだろう。
テレビは二十四時間子ども向けの番組を流し、
あまりテレビを見るとバカになるよ、とも言ったことがない。

テレビなどかわいいもので、
DS や PSP などよりましか、とさえ思っている。
そんな自分にうんざりする。

国が違えば常識も変わるように
時代が変わればものの見方も変わるのだなあと思ってみる。

わたしが育った時代と今子どもたちが生きている時代は
あまりにも違いすぎてしまったからと自分をなぐさめてみる。

きっとわたしの親だってそう思っていたのだ。
ああ、自分たちの育った時代にはテレビなんてものはなかったのにねえと。

わたしはもう、どうあがいてみても、この場所からも時代からも
「いーちぬーけたー」といって抜け出すことはできない。















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昨晩、三女の、二本目の歯がぐらぐらしていて、
その歯を抜いてほしい、とわたしに言ってきた。

長男の奥歯が抜けたのを見て、
自分のぐらぐらしている歯も早く抜けてほしいとあせったらしい。

ああ!

わたしもそうだったなあと思った。
歯がぐらぐらしだすとうれしかった。
それが抜けそうで抜けないとくやしかった。

次々に順調に歯の抜けていく友人を見て、
自分だけが遅れをとったように感じたものだった。

歯に糸をつけて引っぱってもらう、という級友もいた。
驚いたことに、現代のニースでも、全く同じ話があるのだ。

クラスのなになにクンはね、歯に糸をつけて引っぱってもらったんだって!

三女が目をまんまるにして話すのを聞きながら、
変わらないものはいつまでたっても変わらないのだなと思った。
わたしはこんな風にいつまでも変わらないことが好きらしい。
三女の話を聞きながら思わず胸が熱くなった。

わたしは三女にこわれるままに、
わたしの人差し指を三女の、まさにぐらぐらしている歯に強く押し付けた。

ほんとにいいの?強く押すよ。
待ってたらどうせ抜けるんだから急がなくてだいじょうぶよ、
といいながら何度か押しているうちに、歯がぽろりと抜けた。

カゼー!カゼー!カゼー!

長男の名まえを呼びながらかけだす三女。
















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長男の歯は今三本抜けていて、
それは自分で作ったデコッパッチのお皿に入れてあった。































「こんな風にしたらよく見えるよ!」て抜けたばかりのところを長男がみせて見れました。笑えます。
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だからあの何が言いたいんですかっ?ていやああのうそのうすみませんなんか年寄り的発言多発してますよね最近。

恐れ入ります。
by kyotachan | 2011-03-02 01:46 | 六 人 家 族

南仏・ニース在住。フランス人元夫の間に一男三女。

by kyotachan
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