赤ちゃんが出てくるとき、どのくらい痛いの?







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今日の夕食時、長男が言った。

「ねえママ、赤ちゃんが生まれてくるときって
そんなに〝痛む〟ものなの?」

あまりにも唐突だったので、
質問の意味が把握できなかった母、あ、わたし。

恥ずかしながら、わが家の共通語はフランス語。

「あ、えーと。うん、そりゃあまあ、痛いよ」

「だから、どのくらい痛いの」

どのくらい、痛いの?

今日は牛丼にゆで卵ときゅうりのサラダ。
セロリと人参のキンピラ。

可能なら日本酒でいただきたいおかずだけれど、
それはおととい飲み干したのでかなわず。
普段の赤ワインをお供に。

そうねえ、どれくらい、痛いのかしらねえ。

赤ワインで気持ちよくなった頭で、
その「痛さ」をことばにすることができるのか、考えてみる。

赤ちゃんを生む時の痛さを、子どもに、ことばで説明、できるのか?
ちらっと頭をよぎった疑問より先に、ことばがもう、出てしまっていた。

「あのさ、三つ、あるのよ、穴が」

早い話が、その痛さの説明をするなんて無理無理、と本能的に悟った母、
はいはいそれはわたしですって、
は、赤ちゃんが生まれる状況をそのまま説明した方が話は早いかも、と思ったらしい。

「穴が?三つ?」

子どもたちの八つの目が、わたしに集中する。
くー!こんなこと、あまりないから。興奮しちゃうわ。

「そう、三つ。
女の人にはね、穴が三つあるの。
いちばん前がおしっこの穴。
いちばん後ろがうんちの穴。
そして真ん中にあるのが、赤ちゃんの出てくる穴」

おお?

八つの目が、なんとなく、どよめいた、
気がした。

「三つの穴は、並んでいて、だから、だいたい同じくらいの穴、なんだけど、
その、真ん中の穴から、赤ちゃん、ってほら、
赤ちゃん、ったって、頭はこのくらいはあるよよねえ?」

わたしは人差し指と親指で、丸を作ってみせる。

「このくらいの頭が、出てくるんだから、その穴から」

八つの目が、それを想像しているのが見える。

「どのくらい痛いのか、わかるってなもんでしょ?ん?」

赤ワインでたぶん今ごろはほっぺたが赤くなっているだろう母、
あ、すみません、わたしです、
が、わけもなく、得意気に八つの目を見回している。

「あ、そりゃ、痛いよね、うん、痛いよ」

反応のいい長男が、すかさず合いの手を入れる。

「痛かったなあ、、、、」

わざと、遠い目をしてみせる、女優、母。>あ、はい、わたし、ときに、女優。

と、なんか、八つの目を前に、なんだかふいに詐欺師になったような気分になった母。>わたしわたし。

「あ、でもね、この、真ん中の穴はね、
ゴム製でできててね、
赤ちゃんが出てくる時は、びっよ~~~ん!て伸びるんだけどね」

八つの目が、また、ほー!という。

「それって、痛くないの?」

三女がひっくり返った声を出す。

「痛いよ~。だって、テレビとかで、見たことない?出産シーン」

ああ、、、と八つの目がうなずいている。

「あるでしょ?赤ちゃん生もうとするその女の人、苦しんでたでしょ?叫んでたでしょ?
痛いからよ。叫ぶほど、痛いのよ。叫ばずには、いられないくらい」

いつもいいところをつく長男がまたしてもついてくる。

「そんで、その穴、伸びて?伸びたら?どうなるの?」

いいなあ長男。

「赤ちゃんが出てきたら、また縮むよ。ひと月くらいかけて」

次女が、首を伸ばしたり引っ込めたりしている。

「でもさ、でもさ、なんで血がいっぱい出るの?」

「そりゃあわたしたちの体、血液でできてるもの。
体中を駆け巡ってるのよ、血液は。
穴がちょっと開くと、血が出るのはふつうでしょ」

この手の話題に、常に平常心、なのが見てとれる長女。

十二歳、といえば、わたしだったら、
ビッシバッシ的にこの手の話題には敏感だったはずなのに。

これは長女が二歳にして、
わたしが長男を出産する場面を目にしているからだろうなと思う。

何もことばにして言われなくとも、
母親のおまたにはおしっこやうんちの出てくる穴とは別の、
もうひとつの穴があることや、

そこから赤ちゃんが顔を出すことを、しっかりとその目で見ているのだから、
何を聞いても、ああ、あのことね、わたしはこの目で見て知っているから、
という、こ憎らしいほどの余裕が感じられる。

次女だって自宅で生まれてきたのに、
朝の八時だったから、残念なことに長男は、そして長女もまだ、目を覚ましていなかった。
ほんとうはわたしは、「男の子」にこそ、立ち会っていてほしかったのだけど。

もしあの場面に長男がいたら、今の質問はまた違ったものだったのだろうか?

人が生まれてくる不思議さは、
自分がほんとうに誰かを愛したときに解決するのだろうか。

それともそれは、やっぱりずっと、
どこか不思議なままなのだろうか。


























この手の話は、できるだけ、具体的に、事実をそのまま伝えるのがいい、というのがわたし流。
マジックもエッチもヒミツもなにもない、とわかってもらうのがいちばんいいのかな、と。


写真はクリスマスの朝に長男にもらったプレゼント。
「あ、ママこれ、忘れてた。工作の時間につくったんだけど」
瓶の中に船が備え付けてあって、そこに雪が降るようになっているんでした。撮影協力は三女。
すごくいいんですよ、これが。ただのきたない瓶になってしまっているのはわたしの写真技術のせいです。ユルセ、長男。
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by kyotachan | 2011-01-05 05:45 | 六 人 家 族

南仏・ニース在住。フランス人夫・一男三女の六人家族
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