2010年 10月 14日
fumiko 史子。<1>
「ごちそうさま」
「ごちそうさまでした」
子どもたちがお皿を下げて、
台所に向かうのをちらりと見やった。
わたしが他の家族たちよりゆっくりめに食事をするのは、
こうやって、誰もいなくなったテーブルで、
ワインを飲みながら本を読む時間が何よりも好きだからだ。
ふと見ると、
夫は自分の食べた食器をそのままに、
席を立ってしまったらしい。
かっ
と顔の熱くなるのを感じた。
ああ、なんてやさしさの足りない人なのだろう。
夫に対する怒りが爆発しそうになる。
こんなことははじめてのことじゃないし、
たいしたことじゃないと思える日もあるのに、
今日はどうしてこんなにも腹が立つのだろう。
とにかく夫に何か言う前に、この怒りを静めた方がいい。
わたしはエプロンのポケットから文庫本を出して、
それを読み始めた。
二、三ページも進まないうちに、
突然、純一を妊娠たときのことが、
頭の中に、さまざまと思い出されてきた。
なんでこんなことを今ごろ?
別にそんな話が出てくるわけでもないのに。
読みかけの本を置いて、
空中をながめながらちょっとの間、ぼんやりした。
ふふふっ
自分でも理由がわからないまま、
わたしはひとりで笑ってしまっていた。
お皿も片付けないでソファに寝そべり、
テレビのスイッチを入れようとしていた夫に
それを見られてしまった。
「なにを笑ってるの」
さっきの怒りが、まだカラダにくすぶっていたわたしは、
「なんでもない」のひとことですませたかった。
しかし夫はそのセリフを極端に嫌う。
正直に話したほうがよっぽど話は早い、
ととっさに判断したわたしは、
なぜ笑ってしまったのかを夫に話した。
「ねえ、覚えてる?
純一を妊娠してすぐのころ、
医者に
〝赤ちゃんに障害があるかどうかわかる検査があるんだけどどうするか〟
て聞かれたときのこと」
「え?なに?検査?
赤ちゃんの障害がわかる?
そうだったっけ?全然覚えてないなあ」
「ほんとに?
全然、覚えてないの?
あったのよ。
医者に、ご主人とご相談ください、
みたいなことを言われてさ。
わたし、なんだかものすごく狼狽しちゃって」
「狼狽?なんで?」
「だって、せっかく授かった赤ちゃんだっのに、
検査して〝赤ちゃんには障害がありますよ〟なんていわれたら、
わたしどうするんだろうなって思ったからさ」
「へー。うん、それで?」
「それをあなたに言うとさ、
いきなり、怒りだしたんだよね」
「ボクが」
「そう。赤ちゃんはオレとおまえの子どもだろう?
それは障害があろうとなかろうと、同じことだろう?
じゃあなんでそんな検査をする必要があるんだって。
なんかこっちがビックリするくらい、怒りだしちゃってさ」
「あ、そう。
覚えてないけど、
でも今だって同じことを言うよ。
だってオレ、そう思ってるから」
ああ、
わたしはやっぱりこの人を好きだな、
わたしはそう思った。
「あとがきがいちばんよかった。こっから書き直したら。史子語りで」>東京の友人
「書いて書いて書きまくれ」>アメリカのおねえさん
善は急げ、で早速仕切りなおし。二話以降、展開未定。
とにもかくにも、はじめてみるっぺ。
ああ、ニースのあのばかかが、あのいもうとが、あのおねえさんが、
何を書き出すのかしらねえ。できの悪いあなたの家族が、あがいていると思って。
批判・中傷、つっこみ・激励。もうなんでもかんでも、言ってきて。オネガイヨン。
しばらく、小説ブログってことで。恐れ入ります。
ゆっくり、じっくり、またまた感情移入しながら
読ませて頂きます。楽しみにしています。
私のように、コメントしなくてもずっと読んでいるファンの方、多いと思います。
だって、面白いもの、文章が。
誰しも書きたい。という気持ちはあると思います。
私も、まずは自分史。そして、子供の事、
そして、母とのこと。
そして、一番 心の中を今でもくすぶらせている父のこと。
書いてみたいなぁ。
でも、文才が・・・・・。
kyotachanの文はね、胸にストンと落ちてきます。
ストンと。だから、どんどん読みたくなるんだな。
いつも読んでくださってありがとうございます。お母さん、て誰にとっても大切な存在なんですよね。わたしも今のが終わったら、母のことを書いてみようかなと思っています。どんなのができるのか自分でも楽しみ。また読んでくださいねー!